民間宗教者の神秘的な力に対する説明
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/01 07:47 UTC 版)
「憑きもの筋」の記事における「民間宗教者の神秘的な力に対する説明」の解説
「憑きもの筋」の信仰に関わる要素として、もう一つが「民間宗教者の神秘的な力に対する説明」ということである。 小松は、柳田國男その他の憑きもの研究において、ザシキワラシが心得童子、如意童子と呼ばれる、僧侶の式神と性格、行動が似る点に注目し、民間の神秘的な印の説明に、仏教の護法童子が使われたのではないかとする。 「憑きもの」が起こった場合、「何が」「どうして」憑いているのかを判じるのは、最終的には民間宗教者たる山伏や祈禱師であり、村人は宗教者の指示に従って、御祓いなどを行ってもらうしか術がない。彼らは宗教者に全幅の信頼を置いており、山岳修行や肉体的特質などにより特異な能力を身につけていると信じている。尚文政元年、鳥取藩日野に在住し、その名を近畿にまで知られた名医であった陶山簸南は、医者として多くの狐に憑かれたという人を診断した結果、狐は宗教者の捏造したものだと確信し、さらにその著『人狐辨惑談』(にんこべんわくだん)の中では、「かかる病人にむかひ、人狐の待遇をなし、詰問する人は、その人こそ実に狂人なり、笑ふべきことなり」と書いている。 憑きものの信仰は、「もの(マナ)が憑く」と説明をする民間の信仰を、意図的に汲み編み直した宗教者が、自身の神秘的能力を説明する「体系」でもあった。彼らの祈禱によって病が快癒したり、体から追い出された憑きものが依代(よりしろ)に乗り移ったりするのを間近に見て、宗教者の能力は可視的なものとして認識されていき、誰も疑うものがいなくなったと想像できる。@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}おそらく「憑きもの筋」にされた家の者も、そして宗教者自身も「憑きもの」の存在や宗教者の神秘的能力の存在を確信していたであろう[要出典]。その為、憑きものの伝承には、「無知な者が空海の造った狼除けのお守りを不注意に開けた為、犬神が蔓延った」や、「伝教大師が帰朝の折り持ってきた」という、宗教者によって出たとするものが多く、また牛蒡種のように「護法実(ゴホウダネ)」と言う仏教の依りましをさす語を使った憑きものもある。 実例として隠岐島の観三坊主の例がある。 流人坊主で祈祷師の観三が、機嫌を損ねた新興の商人を「狐持ち」の家筋にしてしまった。他にも同時代に、疫病などが発生すると、島前地域では観三坊主と同様の手口で「狐持ち」の家筋が次々と発生させられたという伝承が残っている。 以上のように日本の憑きもの筋に関する信仰は根深く、現代でもこれらの信仰は各地に残っているのものの、都市集住が進む現代にあっては、これらの信仰の影は薄くなってきている。民俗学的研究の一層の進展が望まれている。
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