日本における緊急避妊薬の市販薬化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/03 15:25 UTC 版)
「緊急避妊薬」の記事における「日本における緊急避妊薬の市販薬化」の解説
日本では、緊急避妊薬レボノルゲストレルは、2011年の承認時より医師の診察が必要な処方箋医薬品である。 厚生労働省の医療用から要指導・一般用医薬品への転用に関する評価検討会議では、緊急避妊薬レボノルゲストレルの市販化について審議されたが、アメリカ合衆国などの緊急避妊ピルを常時使用している環境と比較し、性教育の不十分さや薬剤師の知識不足による誤解を懸念して、日本産婦人科医会が反対を表明している。 アメリカ合衆国では、大学区校内の自動販売機で緊急避妊薬が購入できる一方、日本において人工妊娠中絶は、疾病でなく自由診療で相場は15万円前後であるため、緊急避妊薬が容易に手に入るような環境が広まると、結果として産婦人科医の人工妊娠中絶の件数減少により収入が減る可能を、産婦人科医が懸念する可能性を指摘する意見がある。 日本では、女性の9人に1人が人工妊娠中絶を経験しているとの統計があり、平成30年度件数は出生数92万に対し人工中絶件数は16万を超える。 「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(平成30年3月厚生労働省)により、初診から遠隔医療での処方が許容されることになった。 ノルレボは薬価未収載、プラノバールは収載品ではあるが、緊急避妊は医療保険が効かない自由診療となる。全国展開のドラッグストアでは、オンライン処方による緊急避妊薬の取り扱いを全店舗で開始している。 処方箋なしでの薬局販売は、2017年の厚生労働省の「処方箋医薬品」から、「要指導・一般用医薬品」への転用に関する評価検討会議で、緊急避妊薬の市販化について審議の場において、性教育そのものが、日本はまだヨーロッパやアメリカ合衆国からかなり遅れていることも理由として、一般用医薬品へのOTC化が否決されている。2021年5月に処方箋なしの薬局販売についての審議が再開された。 日本では、妊娠を回避する緊急避妊薬(アフターピル)の「ノルレボ錠」が2011年に承認され、2019年3月には日本産の後発医薬品が登場したものの、医師の診断なしには処方されず、かつ公的保険の対象外で高価であるため、世界保健機関が2018年に勧告した「意図しない妊娠のリスクを抱えた全ての女性は、緊急避妊薬にアクセスする権利がある」に対して、まだ大きな課題を抱えている。 アフターピル・低用量ピルの処方、及び妊娠に関することは保険適用外で自費負担となり、一部の医療機関での本人確認で用いられる以外には健康保険証は必要ない。また基本的には問診のみで処方してもらえ、内診(股からの診察)や検査はない。ただし、強姦被害の場合のアフターピル処方には、公費負担がある。 なおコロナ禍において2020年10月現在1100名の医師が緊急避妊薬のオンライン診療研修を受け、薬剤師も3870名処方研修を受けている。産科医以外にも、研修を受けた医師が処方できると厚労省は衆議院の国会答弁で回答している。 緊急避妊薬OTC化に関する医師に対するアンケートでは、回答者の90%が処方経験がありその理由(複数回答)の95.5%がコンドームの脱落・破損だった。同意のない性交が36.1%、性暴力32.1%も含まれていた。この状況の背景には国連発表では日本の避妊の方法は男性用コンドームが75%で女性が使う経口避妊薬は6%にとどまり、経口避妊薬が31%である海外と比較し日本では男性が行う避妊方法に偏っていることが挙げられる。スウェーデンなど諸外国で普及している妊娠を防ぐホルモンが含まれたスティックを皮下に埋め込む「避妊インプラント」、腹部などに貼るシール状の「避妊パッチ」、膣内に挿入する避妊リング、避妊注射なども日本では承認されていない。 2021年10月、厚生労働省の医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議では、諸外国の収取状況について情報提供することが求められた。また前検討会では「若い女性は知識がない」との意見が見られている。しかしInternational Consortium for Emergency ContraceptionおよびEmergency contraceptive availability by countryによると、諸外国では日本・韓国・台湾では処方箋が求められるが中国やヨーロッパ諸国では処方箋が必要なく、場合により無償で提供されている。10月の「国際ガールズ・デー」にあわせてNGOのジョイセフが行った調査では、若い女性ほど緊急避妊薬や低用量ピルについてどのような薬かの知識が高く、20代以下の女性では48%が入手方法も知っていたが高齢になるほど知識が低減していた。
※この「日本における緊急避妊薬の市販薬化」の解説は、「緊急避妊薬」の解説の一部です。
「日本における緊急避妊薬の市販薬化」を含む「緊急避妊薬」の記事については、「緊急避妊薬」の概要を参照ください。
- 日本における緊急避妊薬の市販薬化のページへのリンク