新車価格の高額化、中古車価格の高騰
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 22:08 UTC 版)
「若者の車離れ」の記事における「新車価格の高額化、中古車価格の高騰」の解説
自動車本体の価格は新車が法規制により装備強化せざるを得ないという事情もあり、また中古車も海外への輸出が盛んになったこともあり高額化が進んでしまっている。 新車価格の高額化 - 日本車の新車価格はスポーツ&スペシャリティに限らずカジュアル志向の大衆車においても後述の社会的要請もあり高騰しており、軽自動車(とりわけ軽トールワゴン)ですら諸経費を入れると200万円、小型(Cセグメント)車だと税込本体価格ですら300万円かかることもある。2000年前後だとカローラ、ランサーと言ったCセグメント車には1.5リッター車で本体税抜価格110~130万円前後、ファミリアの1.3リッター車に至っては100万円を切るグレードまで存在したが、2020年4月時点ではカローラセダン(12代目)の最廉価グレードで税抜180万円弱、シビックセダン(10代目)に至っては250万円を超えている。なお参考までにシビックの価格はフォルクスワーゲン・ゴルフ(8代目)の最廉価グレード(税抜240万円弱)よりも高額な状況である。かつては関税の影響もあり輸入車のほうが高額なケースが多かったが、近年はそうとは言えず、「日本車はコストパフォーマンスが高い」という定説は必ずしも正しいものとは言い切れなくなった。価格の変遷という意味でトヨタ・カローラハッチバックを見てみると、10年毎に40万円前後ずつ値上がりしている状況である。1989年型FX(E90型系):約100~144万円 2001年型ランクス/アレックス(E120型系):約139~195万円 (参考)2013年型オーリス(E180型系):約163~217万円 2019年型スポーツ(E210系):約217~285万円 ただし、新車価格の上昇については、年を追うごとに衝突安全基準が厳格化されたことに伴う車体側の構造強化といった1台当たりの生産コストが上昇せざるを得ない点、エアバッグやABSなどのかつては選択式の装備の装着が事実上標準化したことや自動ブレーキや車間距離レーダーといった安全装置の標準装備(ASV化)が義務付けられるようになったことに伴い、その分だけ販売コストが上昇している点があるため、メーカー側の都合だけで値上がりしているわけではなく、時代の変遷によって価格が上昇している一面もある。また、自動車取得時の自動車取得税が2019年10月1日より廃止されたように、時折、維持費などが減額された時期もあるため、常に価格が上昇しているわけではない。 若者層に特有の顕示的消費を満たすはずのスポーツカー・スペシャリティカーの類(クーペ、スポーツセダン、ホットハッチ)に関しては新車価格の高額化に加えて中古車価格の高騰まで起こっており、若者層でなくとも期待所得に比べて購入を諦めざるを得ないといえる事態が起こっている。スポーツ&スペシャリティに関しては若者に売れない→生産台数を絞り、海外のユーザーや車への憧れやこだわりが強いとされている団塊の世代からバブル世代・団塊ジュニア世代までをメインの顧客層とする→さらなる高価格化あるいは国内販売中止・・・といった悪循環に陥っている。おまけにこの手の車種はコアな層(主にファンや走り屋の類)からの需要は根強く、中古車も高値安定どころか後述のように価格高騰すら起こっている。よって新車どころか中古車ですら若者が安く買えるというチャンスは減っている。 さらに、この手の車種・グレードは他のグレード(ともすれば1~2クラス上の車種)と比較するとかなり割高である場合もある。かつてのEK9シビックタイプRの価格は「比較的安価なスポーツカー」や「価格以上の価値を持ったスポーツカー」という売り文句の通り、FK8シビックタイプRの販売時期では潮流となってしまった「スポーツカーだけ突出した販売価格」という状況はある程度回避されており、少なくとも前述のトヨタ・カローラスポーツを購入できる予算があれば、EK9を購入することが可能であった。例えばFK8シビックタイプRは2017年時点で税抜420万円弱であり、2020年4月時点での「ゴルフGTIより高額」「あと50~70万円ほどでクラウンの廉価グレードが購入可能」な状況であり、販売価格が一つの壁となってしまっている。 その上で追い打ちをかけるように、日本の中古車の海外流出による価格高騰も起こっている。特に昨今の「JDMブーム(スポーツコンパクトの項目も参照)」といわゆるアメリカの「25年ルール」による並行輸入障壁の解消などの影響で、そのルールが適用される日本の中古車の海外流出が加速している。一例として、日産・スカイラインGT-R(特に第2世代に属する型式)の一件が有名だが、これはスカイラインGT-R特有の問題ではない。スカイラインGT-Rと同世代の1980~90年代の日本のスポーツカーの海外流出は起きており、それらに属するの中古車価格の上昇や新車販売時の価格を上回る中古車も存在する事態となり、これが結果的に若年層でなくとも手が届かない事態になっている。
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