文学の純粋性への希求とは? わかりやすく解説

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文学の純粋性への希求

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 07:45 UTC 版)

蓮田善明」の記事における「文学の純粋性への希求」の解説

1943年昭和18年4月8日日本文学報国会において、石川達三が、国策協力の線に沿って作品活動なければならない発言したこと対し蓮田は、「自分賛成できない」と石川一喝し、『古事記』にある須佐之男命のように「青山枯山と哭き枯らす」ほど壮大な文学、喚び泣き文学慟哭文学を我々は創造しなければならない力説した伊藤佐喜雄回想している。この石川批判発言により、蓮田は「神がかり」の冠称付けて呼ばれるようになった松本健一は、蓮田が『青春の詩宗――大津皇子論』で、〈今日死ぬことが自分文化であると知つてゐるかの如くである〉、〈死ぬことが今日自分文化だと知つてゐる〉と、自分運命感受した大津皇子精神説いていることに触れ、それは同じく蓮田説いた大伴家持論』で説く精神的個我〉の精神相通じるのであるとし、大勢同調するような「便乗文学」や「便乗思想に対して蓮田批判的であった解説している。 また松本健一は、蓮田射殺標的にしたのは、中条豊馬隊長という人間個人ではなく中条隊長象徴される効率的な判断敗戦後変わり身早い変節寝返り対すアンチテーゼ的な意味合いであるとし、どちらが善でどちらが悪かといった見方無意味であり、そこに「美」と「政治」の二者の「根源的対立の意味見るべきだと考察している。 さらに、蓮田絶対純粋性を求めていたことを物語エピソードがあり、戦争報道班員として重巡洋艦鳥海」に 派遣されていた丹羽文雄海戦最中、弾が飛んでくる最中でも懸命にメモ取り戦闘の様子描いた海戦』を発表した時、蓮田は、〈本当戦争〉を見ろ丹羽非難し、以下のような問題提起した丹羽は戦ふべきだつた。弾丸運びをすればよかつたのである弾丸運びしたため戦闘観察文学中絶してしまふと考えることも誤りである。弾丸運びしたため或る場面を見失ふだらう、しかしもし弾丸運びをしたとしたら、そこに見たものこそ、本当戦争だつたのである。 — 蓮田善明文学古意」 これは、丹羽文雄忠実に任務遂行し記録係をしていたわけで、そのために丹羽名誉の負傷までしていた。しかし蓮田はその丹羽対し、何故その時おまえは弾運び手伝わないのかと問いかけた。 この蓮田丹羽批判について三島由紀夫は、「本当に文学というものは客観主義徹することができるだろうか文学者そういうときにキャメラであるのか、単なる〈もの〉を記録する技術者であるのか、あるいは文学とはそういうときにメモをとることをやめて弾を運ぶことであるか」という「極限状況」における「比喩」として「文学問題」を蓮田質問しているのだとし、中村光夫も、蓮田丹羽批判には全面賛成していないが、蓮田提起を、非常に大事な文学本質論」だと捉えている。 三島は、自身文学観念忠実だった丹羽の「シンセリティー微塵も疑わない」としつつも、総力戦というものは「人間あらゆるフィールドにおいて機能化してゆくもの」であり、「大砲を撃つ人は大砲報道班員文章によって記録あるいは報道し、あるいは軍宣伝のために利用され」、丹羽近代的総力戦においての任務果たしているが、「文学というものは絶対そういう機能になりえないもの」だということ信じたいとし、それを証明するためには、蓮田の言うように、その時メモを取ることを止め、いかに軍人の邪魔になろうとも弾運びをしろ、という結論になると、蓮田含意解説している。 そして、蓮田丹羽批判は、現代技術社会における文学立ち位置にも関係する問題であり、文学が、テレビ同じよう大衆求め娯楽機能になること、「技術的によくできたおもしろ小説」や「中間小説化」し、文学が「しらずしらず」に社会要求する一つ機能となる「文学機能化」、「芸術至上主義機能化する惨状」が起こり、この危険を回避するためには、「あるとき自分機能から絶対に離れたところ」で行動してみる必要性があると三島説明し蓮田比喩した〈弾丸運び〉だけが、「文学」だという状況が来るかもしれないと、真の純粋な文学」がなすべきことについて考察している。

※この「文学の純粋性への希求」の解説は、「蓮田善明」の解説の一部です。
「文学の純粋性への希求」を含む「蓮田善明」の記事については、「蓮田善明」の概要を参照ください。

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