改訂演出
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1895年の蘇演以降、多くの振付家が『白鳥の湖』の改訂版を創作している。その多くはプティパ=イワノフ版を元にしているが、細かい筋書きや構成は演出によって異なる。以下、代表的な改訂演出とその特徴を挙げる(括弧内は初演年および初演バレエ団)。 A・ゴルスキー(英語版)版(1901年・1912年・1920年・1922年、ボリショイ・バレエ)ボリショイ劇場のバレエマスターであったゴルスキーは、4回にわたり本作の改訂版を発表したが、中でも特徴的なのは1920年版である。この版では、『白鳥の湖』の上演史上初めてハッピーエンドを採用し、終幕で悪魔を倒したオデットと王子が、命を落とさず現世で結ばれるという展開をとった。その背景には、内戦が続いていた当時のソ連社会において、勧善懲悪の物語が求められていたことがある。他にも、宮廷の場面に道化を登場させたり、従来一人二役であったオデットとオディールを別々のダンサーに踊らせたりといった新たな演出が試みられた。ただし、この版には守旧派からの批判が多かったため、1922年版ではオデットとオディールは再び一人二役となり、終幕も悲劇的なものに戻された。しかし、1937年にアサフ・メッセレル(英語版)がゴルスキー版を改訂した際は、再びハッピーエンドが採用された。 N・セルゲエフ(英語版)版(1934年、ヴィック・ウェルズ・バレエ)マリインスキー劇場の舞台監督であったセルゲエフは、ロシア革命後に亡命した際、プティパ=イワノフ版の『白鳥の湖』を含む舞踊譜を持ち出しており、それを元にヴィック・ウェルズ・バレエ(現在の英国ロイヤル・バレエ団)に本作を振り付けた。この作品は、西ヨーロッパ初の『白鳥の湖』全幕上演となった。その後、ロイヤル・バレエ団では、セルゲエフ版を元に、ニネット・ド・ヴァロア、フレデリック・アシュトン、アンソニー・ダウエルらによる改訂が重ねられた。 K・セルゲエフ(英語版)版(1950年、キーロフ・バレエ)プティパ=イワノフ版を初演したマリインスキー劇場では、幾度か本作の改訂が行われたが、その中で最も長く演じられてきたのがセルゲエフ版である。プティパ=イワノフ版の雰囲気を守りつつも、リアリズム的な演出を取り入れたことが特徴であり、結末は、王子と悪魔の一騎討ちにより、悪魔が羽根をもがれて死ぬというものになっている。 V・ブルメイステル(英語版)版(1953年、スタニスラフスキーおよびネミロヴィチ=ダンチェンコ劇場モスクワ・アカデミー音楽劇場バレエ(現・モスクワ音楽劇場バレエ))この版の特徴は、楽曲の構成をできる限り1877年の初演版に近づけたことである。たとえば「黒鳥のグラン・パ・ド・ドゥ」では、プティパ=イワノフ版とは異なり、初演時にソベシチャンスカヤのために作られた追加楽曲が使用された(ただし、オディールのヴァリアシオンとコーダは、原曲の「パ・ド・シス」より最後の2曲が用いられている)。全体の構成はプロローグ・エピローグ付き全4幕であり、プロローグで悪魔がオデットに呪いをかける場面が演じられることで、物語の発端が理解しやすくなっている。また、エピローグでは悪魔が滅び、オデットが人間に戻る様子が演じられる。 ソ連では、ゴルスキー=メッセレル版以降、善が悪を滅ぼすハッピーエンドの演出が多く生まれたが、西ヨーロッパでは、オデットと王子の死で終わる悲劇的な演出が主流となった。ドイツのシュトゥットガルト・バレエ団で初演されたジョン・クランコ版(1963年)や、その影響を受けたルドルフ・ヌレエフ版(1964年)などが代表的である。 また、初演版から踏襲されてきた物語設定を大きく変更し、現代的に再解釈した演出もある。王子ジークフリートをバイエルン王ルードヴィヒ2世に重ね合わせたジョン・ノイマイヤー版(1976年)、男性ダンサーが白鳥を演じたマシュー・ボーン版(1995年)、英国王室のダイアナ元妃をオデットのモデルとしたグレアム・マーフィ(英語版)版(2002年)などが挙げられる。
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改訂演出
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「眠れる森の美女 (チャイコフスキー)」の記事における「改訂演出」の解説
チャイコフスキーが作曲した3つのバレエ作品(『白鳥の湖』、『眠れる森の美女』、『くるみ割り人形』)は、いずれも初演以降、多数の改訂演出が発表されてきた。そのうち『眠れる森の美女』は、改訂演出であってもプティパによる原振付を尊重している場合が多く、他の2作に比べると後世における改変の度合いは少ない。以下、いくつかの改訂演出を挙げる。
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