所持の規制の問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 05:49 UTC 版)
違法な電磁データは、その複製が容易であることから、その流布の危険性の高いこと[要出典]を根拠として、新たに児童ポルノを対象に加えることが主張されている。衆議院議員の鳩山邦夫は、「単純所持を認めているとやはりそこから穴が広がっていって、結局その所持した物がインターネットに載るというようなことがあり得るのではないかと思います。麻薬と同じような考え方をしてもいいのではないか」との考え方を示している。 なお、これと同様の考え方を根拠として、わいせつ物にあたる児童ポルノデータを所持していたケースで、それ自体は販売意図がなかったとしても[要出典]、刑法175条にいう「販売目的所持」にあたるとして、2006年に有罪判決が確定している。ただし、法学者で久留米大学教授の森尾亮は、この判決が、175条に規定のない、実行の着手にいたる前段階の状態である予備行為の処罰にあたり、罪刑法定主義に反するとの否定説を支持している。また、銃器・麻薬等の単純所持の規制には理解を示しつつも、「わいせつ物との接触は(人間もまた動物である以上)私たちの社会生活においてほとんど不可避なもの」であり、また175条の保護法益が性道徳の保護にあるからには、現行の「児童ポルノ処罰法の規制対象には含まれないような「合成写真」や「アニメ・ポルノ」等」までもが対象となりかねないとして、上記判決に批判的な見方を示している。 また、早稲田大学大学院法務研究科教授で法学者の松原芳博は、近年の日本では、危険社会論を背景とした抽象的危険犯の形式の下での処罰の早期化の傾向が顕著であり、「しばしば犯罪に用い得る一定の物ないし情報の提供・取得や所持・保管を構成要件化する立法形式が採用されている」との認識を示している。具体的には、コンピュータウイルスの作成・所持を要件とする不正指令電磁的記録作出罪などがあげられる。 その上で、内心の思想や意思を対象とする心情主義と対立する行為主義を擁護する観点から、特に児童ポルノの単純所持の違法化には、「『所持』や『保管』は、本来、社会的外界に顕現する以前の私的領域にとどまるものであって、その犯罪化には行為主義との関係で特別の正当化を必要とするように思われる」との懸念を示している。 また、単純所持の規制には、それに伴う捜査権の拡大の危険性も指摘されているが、元警察庁職員で弁護士の後藤啓二は、反復取得や有償譲受など明白な行為に限定するとした民主党案について、「既に所持するポルノは『合法』となるうえ、『取得の禁止』では、誰からどこで入手したかの立証が難しい」「冤罪のおそれなどということを理由に児童ポルノの単純所持を禁止するべきでないというのは、子どもを児童ポルノの被害に遭うことから守ることの重要性の認識に欠けているとしか思えません。民主党の懸念を正当化してしまえば、すべての犯罪で冤罪の危険はあるわけですから、殺人でも強姦でもあらゆる行為を罰してはいけないことになってしまうのではないでしょうか」と批判している。ただし、衆議院議員で弁護士の早川忠孝は、「証拠を集めない限り、警察は強制捜査が出来ない」ようにするため、あくまで「取得行為や製造行為の立証も必要になるような規定」ぶりを提案している。 「抽象的危険犯」および「治安」も参照
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