心の概念
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『心の概念』(こころのがいねん、英: The Concept of Mind)とは、1949年にイギリスの哲学者・ギルバート・ライルによって発表された心の哲学の書籍である。
20世紀初頭、論理実証主義者は、哲学を研究するためには、日常言語を排除して厳密な用語法を確立することを主張していた。ライルは日常言語の使用に関する誤りが哲学の多くの問題を引き起こしていると考え、心に関連する表現を含む文章がどのような論理構造を持っているかを研究することによって、伝統的な心身問題を解決することを試みた。
本書は第1章デカルトの神話、第2章方法を知ることと内容を知ること、第3章意志、第4章情緒、第5章傾向性と事象、第6章自己認識、第7章感覚と観察、第8章想像力、第9章知性、第10章心理学、以上から構成されている。
ライルはルネ・デカルトが「公式教義」を提起して以来、近代哲学が繰り返してきた議論では、心について誤った範疇が使用されてきたと判断し(カテゴリーミステイク)、観念論と唯物論の論争が擬似的な問題に過ぎないと考えた。ライルの見解によれば、人間には精神があることと身体があることはどちらも適切であるものの、精神と身体は異なる類型であるために対等に並べて比較することは適切ではない。また情緒の概念についてはあくまで傾向性を示すものであり、特定の場面において発生する出来事を表すとは限らない。さらに意思作用についても日常言語には存在しない人為的な概念を導入したものである。このような心の概念について検討した上でライルはデカルト以後の公式教義を批判し、心の哲学に関する新しい枠組みを提示している。
書誌
- 坂本百大ほか訳『心の概念』みすず書房、1987年 ISBN 4622017709
関連項目
- 我思う、故に我あり (穂積安光のエッセイ)
- 実体二元論
- カテゴリーミステイク
- 論理的行動主義
心の概念
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1949年の著書『心の概念』においてライルは西洋哲学の主調をなしてきた心身二元論を誤りであると断じた。心が独立した存在であるとか、心は身体の中にありながら身体を支配しているといった考え方は、生物学の発達以前の直写主義がそのまま持ち越されたものにすぎず、余剰として退けられるべきである。ライルによれば、心身問題を論じる目的はなによりもまず、人間存在のような高度な有機体が、その行動から得られる明証性をもとにしてどのようにして抽象化や仮説形成といった工夫、戦略、手腕を発揮するのかを記述することである。 ライルはデカルトやラ・メトリーといった17・18世紀の思想家を批判し、自然が複雑な機械であり、人間本性が小さな機械だとすれば、人間の特性である知能や自発性が説明がつかないから、この小さな機械の中に幽霊がいるとしなくてはならなくなる、と述べた。ライルの考えでは、「なぜ……なのか」という問いに対して、機械論的見地からのみ答えを探そうとすると、カテゴリー・ミステイク(カテゴリー錯誤、カテゴリー的誤謬などと訳す)に陥る。人間行動の記述・説明にあたっては心理的語彙(ボキャブラリー)が重要な役割を果たすのだから、人間は機械と類比して語れるようなものではないし、心とは外部に現れる技能の「隠れた」原理なのではない。 ライルの考えでは、心の働きは身体の動きと切り離せない。心身は繋がっており、心理的語彙といっても身体行動を記述するのとたいして変わらない。ある人物の動機というものは実際のところその人物がある状況下でどのように行為する「傾向性」があるかということを意味している。虚栄という明白な感情や苦痛があるわけではなく、行動の一般的な趨勢ないし傾向のもとに包摂される一連の行為と感情があり、これが「虚栄」という用語で呼ばれる。 ライルによれば、これが小説家や歴史家やジャーナリストなら、人々の行動を見て気軽に様々な動機や道徳的価値や個性を判断してもよい。しかし哲学者が心とか魂と呼ばれる領域にこれらの性質を付与しようとすれば、問題が起こるのである。また、ライルは認知主義理論に基づく説明に対して古典的な反論を加えた。すなわち、認知主義心理学では認知行動の前提としてなんらかの認知システムがなければならないとするが、認知システムの策定自体一個の行動なのだから、このような因果的説明では無限遡行に陥り、説明にならないというのである。
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