心の概念とは? わかりやすく解説

心の概念

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/18 09:32 UTC 版)

心の概念』(こころのがいねん、英: The Concept of Mind)とは、1949年イギリス哲学者ギルバート・ライルによって発表された心の哲学の書籍である。

20世紀初頭、論理実証主義者は、哲学を研究するためには、日常言語を排除して厳密な用語法を確立することを主張していた。ライルは日常言語の使用に関する誤りが哲学の多くの問題を引き起こしていると考え、心に関連する表現を含む文章がどのような論理構造を持っているかを研究することによって、伝統的な心身問題を解決することを試みた。

本書は第1章デカルトの神話、第2章方法を知ることと内容を知ること、第3章意志、第4章情緒、第5章傾向性と事象、第6章自己認識、第7章感覚と観察、第8章想像力、第9章知性、第10章心理学、以上から構成されている。

ライルはルネ・デカルトが「公式教義」を提起して以来、近代哲学が繰り返してきた議論では、心について誤った範疇が使用されてきたと判断し(カテゴリーミステイク)、観念論唯物論の論争が擬似的な問題に過ぎないと考えた。ライルの見解によれば、人間には精神があることと身体があることはどちらも適切であるものの、精神と身体は異なる類型であるために対等に並べて比較することは適切ではない。また情緒の概念についてはあくまで傾向性を示すものであり、特定の場面において発生する出来事を表すとは限らない。さらに意思作用についても日常言語には存在しない人為的な概念を導入したものである。このような心の概念について検討した上でライルはデカルト以後の公式教義を批判し、心の哲学に関する新しい枠組みを提示している。

書誌

関連項目


心の概念

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/22 14:48 UTC 版)

ギルバート・ライル」の記事における「心の概念」の解説

1949年著書『心の概念』においてライル西洋哲学主調をなしてきた心身二元論誤りであると断じた。心が独立した存在であるとか、心は身体の中にありながら身体支配しているといった考え方は、生物学発達以前直写主義そのまま持ち越されたものにすぎず、余剰として退けられるべきである。ライルによれば心身問題論じ目的なによりもまず、人間存在のような高度な有機体が、その行動から得られる明証性をもとにしてどのようにして抽象化仮説形成といった工夫戦略手腕発揮するのかを記述することである。 ライルデカルトラ・メトリーといった17・18世紀思想家批判し、自然が複雑な機械であり、人間本性小さな機械だとすれば人間特性である知能自発性説明つかないから、この小さな機械中に幽霊がいるとしなくてはならなくなる、と述べたライル考えでは、「なぜ……なのか」という問いに対して機械論的見地からのみ答え探そうとすると、カテゴリー・ミステイクカテゴリー錯誤カテゴリー誤謬などと訳す)に陥る人間行動記述説明にあたって心理的語彙ボキャブラリー)が重要な役割を果たすのだから、人間機械類比して語れるようなものではないし、心と外部現れる技能の「隠れた原理なのではない。 ライル考えでは、心の働き身体の動き切り離せない。心身繋がっており、心理的語彙といって身体行動記述するのとたいして変わらない。ある人物の動機というものは実際のところその人物がある状況下でどのように行為する「傾向性」があるかということ意味している。虚栄という明白な感情苦痛があるわけではなく行動一般的な趨勢ないし傾向のもとに包摂される一連の行為感情があり、これが「虚栄」という用語で呼ばれるライルによれば、これが小説家歴史家ジャーナリストなら、人々行動見て気軽に様々な動機道徳的価値個性判断してもよい。しかし哲学者心とか魂と呼ばれる領域にこれらの性質付与しようとすれば問題が起こるのであるまた、ライル認知主義理論に基づく説明に対して古典的な反論加えた。すなわち、認知主義心理学では認知行動前提としてなんらかの認知システムなければならないとするが、認知システム策定自体一個行動なのだから、このような因果的説明では無限遡行に陥り、説明ならないというのである

※この「心の概念」の解説は、「ギルバート・ライル」の解説の一部です。
「心の概念」を含む「ギルバート・ライル」の記事については、「ギルバート・ライル」の概要を参照ください。

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