カテゴリー錯誤
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/09 02:37 UTC 版)
カテゴリー錯誤(カテゴリーさくご、category mistake, category error)とは、対象に固有の属性をその属性をどうあっても持つことのできないものに帰すという、意味論的あるいは存在論的な誤りである。
あらゆる(陳述の)誤りは、固有の属性をなんらかの意味で誤って帰属させる(ある事柄をそれが属していないクラスに分類する)ことを含んでいるから、ある意味で、すべての誤りはカテゴリー錯誤であると言える。しかし、哲学でよく用いられる意味でのカテゴリー錯誤は、最も厳密な形態の帰属の誤り、すなわち論理的に不可能なものを是認することであると思われる。例えば、「その本のビジネスは永遠に眠る」という陳述は統語論的に正しいが、無意味な戯言であり、せいぜい何かの比喩と見ることができるに過ぎない。なぜならこの陳述は、「永遠に眠る」という属性を「ビジネス」に誤って帰属させているからであり、「ビジネス」という属性を「本」というトークンに誤って帰属させているからである。
カテゴリー錯誤が生じていることの証明は典型的には次の方法で行われる。すなわち、当該の現象が正しく理解されれば、その現象について行われているある主張がどうあっても正しいはずがない、ということを示すのである。例えば、「ほとんどのアメリカ人は無神論者である」という主張は誤っているが、カテゴリー錯誤ではない。なぜなら、ほとんどのアメリカ人が無神論者でないかどうかは偶然の結果であるにすぎないからである。
カテゴリー錯誤という用語は、ギルバート・ライルが著書『心の概念』(1949年)で導入したもので、デカルト主義的な形而上学によって生まれた心の本質についての混乱であるものを取り除くために用いられた。ライルの主張によれば、心とは霊的な実体から作られた対象であるとみなすのは誤りである。なぜなら、傾向性や能力の集合を指すためには、実体という術語では意味がないからである。ライルのカテゴリー錯誤という概念を用いる哲学者は多いが、どれがカテゴリー錯誤でどれがカテゴリー錯誤でないかという点についてはまちまちで、固定した見解はない。
脚注
参考文献
関連項目
- カテゴリ
- 錯誤
- 誤転用
- Colorless green ideas sleep furiously
- 合成の誤謬
- 分割の誤謬
- 誤用
- 分類 - 区分
- プロトタイプ理論 - 理想化認知モデル
- 弁別 - 丁度可知差異 - 差異
- 判別 - 判別分析
- ベン図 - オイラー図 - 存在グラフ
外部リンク
- カテゴリー - スタンフォード哲学百科事典「カテゴリー錯誤」の項目。
カテゴリーミステイク
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 04:07 UTC 版)
「なぜ何もないのではなく、何かがあるのか」の記事における「カテゴリーミステイク」の解説
詳細は「カテゴリーミステイク」を参照 この問いをカテゴリーミステイクとして棄却する考えがある。すなわち、個々のものが存在していることに原因があるからといって、それをあわせた世界全体が存在していることにも原因があることにはならない、という考えである。たとえば20世紀のイギリスの哲学者バートランド・ラッセル(1872年 - 1970年)は次のような主張を行った。「どんな人間にも母にあたる人がいる」ということが正しいとしても、「すべての人間の母にあたる人がいる」は正しくない(地球上にいるすべての人間を一人で出産した女性はいない)。これと同様に、「個々の事物には存在していることの理由がある」が正しくとも、「事物全体が存在していることの理由がある」が正しいとは言えないのだ、と。このことは論理式で表すと次のようになる。ある集合 S {\displaystyle S} に属する事物を x {\displaystyle x} 、説明を e {\displaystyle e} 、 e {\displaystyle e} が x {\displaystyle x} について説明を与えることを e E x {\displaystyle eEx} と表すとき、次の上段の式が正しい場合でも、下段の式が正しいとは限らない。 ( ∀ x ∈ S ) ( ∃ e ) e E x {\displaystyle (\forall x\in S)(\exists e)eEx} 式の意味:どんな事物xに対しても、それぞれ何らかの説明eが存在し、そのeがxの存在を説明する ( ∃ e ) ( ∀ x ∈ S ) e E x {\displaystyle (\exists e)(\forall x\in S)eEx} 式の意味:何らかの説明eが存在し、どんな事物xに対しても、そのeがxの存在を説明する
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