帰化戦略
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/11 09:19 UTC 版)
「サッカーカタール代表」の記事における「帰化戦略」の解説
カタール人の2011年時点での一人当たりのGDPは98,329ドルと世界トップクラス(金持ち)であるため、カタール人だけでは競争力が伸びにくかった(貧しさはお金を得る為、プロになるという競争力を向上させるモチベーションになる)。また、カタールは元々人口が少なく、労働力を外国人に頼り2010年時点で約150万8千人の人口のうち、カタール人は2割にも満たない為、帰化にも抵抗が少なかった。そのため、カタールは近年、海外から実力者を引き抜いてカタールに帰化させスポーツの競争力を高めてきた。2006年カタールアジア大会では、ケニアからの帰化選手がマラソンや中長距離種目で優勝し、男子バスケットボールでは、元セネガル人を多数擁するチームをバスケットボールカタール代表として送り出し、銀メダルを獲得した。 サッカーでは、2006年ワールドカップ予選の際、ブラジル国籍で代表歴のないアイウトン、デデ、レアンドロにカタール国籍を与えて自国の代表にしようとしたことがあるが、国際サッカー連盟(FIFA)は「代表歴のない国籍変更者及び国籍追加者であっても、変更あるいは追加する国に2年間以上の居住歴がない者は、変更あるいは追加した国籍の代表にはなれない」というルールを新たに設けて適用し、これを阻止した。尚、現在ではFIFA規則が2009年に改正されて以降、変更あるいは追加する国に18歳以降に5年間以上継続居住していることが必要となっている。 2006年10月、エメルソンがカタール国籍を取得し、カタールとブラジルの二重国籍者となったが、エメルソンはU-20ブラジル代表として1999年ワールドユース(現U-20W杯)南米予選出場(8試合)経験があり、当時のFIFA規則でもカタール代表の資格はなかった。 この当時のFIFA規則はA代表(年齢制限なしのその国最強の代表)以外のカテゴリーでの公式の大会の代表経験がある場合、その他の国の代表にはなれないというものであったが、その場合もFIFAが許可をすれば、新しい国籍での国の代表に入ることが出来る例外があった。ただし、国家の分離独立などで新国籍が与えられた場合の他は、 従前の国の代表で出場した際にすでに多重国籍者であること 21歳の誕生日までに変更の申請をすること の場合のみに限定されており、U-20ブラジル代表で出場した際にブラジル国籍しかないエメルソンの場合、当該規約の下でエメルソンが許可される可能性はなかった。その後、エメルソンは2008年3月4日、親善試合バーレーンとの試合にカタール代表として初出場し、2008年3月26日、2010年南アフリカW杯アジア3次予選グループ1のイラク戦で10番、マルシオ・アルブケルケとして出場し、2-0でカタール代表が勝利した。試合後、イラクサッカー協会はエメルソンにはブラジルのユース代表歴があって、カタール代表に選ばれる資格がないことについてFIFAに正式に上申したが、当初はFIFAからパスポート偽造を理由として、その後の試合に対する無期限の出場停止処分のみが発表された。最終的に2008年6月17日にFIFAが、エメルソンは8試合のU-20ブラジル代表公式戦出場歴のため、今後カタール代表でプレーする資格はないが、試合結果は変わらないと発表した。 2010年南アフリカW杯の規則では「出場資格のない選手を出場させた場合、相手チームに勝ち点3を与える」というルールがあった。しかし当該国はそのための抗議を試合後24時間以内に行わなければならず、同時に調査費用をFIFAに支払わなければならない。ところがイラクサッカー協会が費用を送金したのは期限の11日後だった。したがって「抗議」自体が成立せず、試合結果は変わらないとFIFAが決定を下したのだった。諦めきれないイラクはスポーツ仲裁裁判所(CAS)へ訴えたが、2008年9月29日、CASはFIFAの主張を認め、「試合はそのまま成立」という結論を出した。一連のエメルソン騒動の後、カタールサッカー協会関係者は、「今後はFIFA規則の範囲内で(帰化)補強をします。我が国は人口が少ないので、出稼ぎ移民の子をカタール人と見なすことになるでしょう」と日本の記者に話している。 一方、AFCアジアカップ2019の優勝メンバーの大半がカタール出身である。カタール国外で生まれた選手は5人のみであり、サッカー選手としてカタールへ移住して国籍を取得した選手は4人に過ぎない。これは、カタールの人口の9割が外国人でありながら、出生地主義ではなく、血統主義を取っているためにカタールで生まれ育ってた、あるいは幼少期からカタールで育ったとしても、カタール国籍の取得は厳しく制限されている。そのため、カタール代表としてプレーするためには帰化という形になるものの、かつてのように外国から有力なサッカー選手を豊富な資金力によって帰化させるやり方は行われていない。
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