巡礼の年報第1年スイスとは? わかりやすく解説

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リスト:巡礼の年報 第1年「スイス」

英語表記/番号出版情報
リスト巡礼の年報1年スイスAnnees de pelerinage Premiere annee Suisse S.160/R.10 A159作曲年: 1848-55年  出版年1855年  初版出版地/出版社: Schott 

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 ウィリアム・テル聖堂」 "La chapelle de Guillaume Tell"6分30秒 No Image
2 「ワレンシュタットの湖で」 "Au lac de Wallenstadt"3分00 No Image
3 牧歌」(パストラール) "Pastorale"2分00 No Image
4 泉のほとりで」 "Au bord d'une source"4分00 No Image
5 夕立」 "Orage"4分30秒 No Image
6 オーベルマンの谷」 "Vallee d'Obermann"1430秒 No Image
7 牧歌」(エグローグ) "Eglogue"4分00 No Image
8 郷愁」 "Le mal du pays"6分00 No Image
9 ジュネーヴの鐘」 "Les cloches de Geneve"6分30秒 No Image

作品解説

2009年8月 執筆者: 伊藤 萌子

巡礼の年報》(《巡礼の年》とも訳される)は《第1年》、《第2年》、《第2年補巻》、《第3年》の4集から成るピアノ独奏曲集である。リスト二十代から六十代にかけて作曲した作品集められており、リスト驚異的なピアニズム絵画的表現対す天賦の才能見られる
《巡礼の年報 第1年スイス》は、1835年から36年にかけて、マリー・ダグー伯爵夫人ふたりで旅したスイスでの印象をもとに作曲されている。
《第1年スイス》は当初、《旅人のアルバム》(三部・全十九曲から成りさまざまな曲名出版されるなど複雑な成立過程を持つ作品)として、1836年から1842年の間に何度出版されたものである(最終的に1842年10月に、ウィーンハスリンガー社から三部まとめて出版された)。リスト自身は《旅人のアルバム》について、「もっとも強い感動、もっとも鮮明な印象を音で表現した」と述べている。
今日よく知られている《巡礼の年報 第1年スイス》は、その《旅人のアルバム第一部の五曲と第二部二曲改訂し新たに二曲追加した、全九曲の作品集である。ヴァイマル宮廷楽長時代1855年ショット社から出版された。第6番オーベルマンの谷」 / "Vallee d'Obermann"のように文学作品と結びついたものもあるが、スイスの自然や民謡密接な関係にある曲が大半占めている。

第1番ウィリアム・テル聖堂」 / "La chapelle de Guillaume Tell"
スイス独立に関わったとされる英雄ウィリアム・テル描いている。重々しく荘重なフレーズから始まり勝利に向かうウィリアム・テル様子示される楽曲最後では再び冒頭フレーズ感動的に再現される

第2番「ワレンシュタットの湖で」 / "Au lac de Wallenstadt"
タイトルバイロンの『チャイルド・ハロルドの巡遊』より。魅力的な牧歌風の曲。
左手伴奏は船の艪を動かす様子あらわし優美静寂帯びた旋律付けられている。

第3番牧歌」(パストラール) / "Pastorale"
パストラールとは牧歌的情景を描くか、その雰囲気表現した作品のことで、もとはキリスト降誕場面における羊飼いの笛を模したイタリア起源器楽曲穏やかな12/8(6/8拍子,平行3度持続低音対照的フレーズなどを特徴とする。本作品においても、穏やかな旋律持続低音印象的なテーマと、繰り返される短くリズミカルなテーマ対照的なテーマとが登場する終結部では、完全終止せずに次の曲へと続いている。

第4番泉のほとりで」 / "Au bord d'une source"
タイトルドイツ詩人シラーの詩『追放者』より。魅力的な牧歌風の曲で、そのタイトルが示すように瑞々しさ溢れる。《スイス 第一年》の中で最もよく知られており、本作品のみを取り出して演奏することも多い。後の《エステ荘の噴水》につながる傑作とされる

第5番夕立」 / "Orage"
タイトルバイロンの『チャイルド・ハロルドの巡遊』より。山の嵐を絵画的描写している。1855年ヴァイマル宮廷楽長時代新たに作られたもので、曲集中でも際立って技巧的作品である。

第6番オーベルマンの谷」 / "Vallee d'Obermann"
タイトルセナンクールの『オーベルマン』より。『オーベルマン』は、主人公オーベルマンから友へ書簡という形式用いて書かれており、主人公精神遍歴描いている。曲においても主人公経験見事に表現されている。曲集中、最も演奏時間長い(約1415分程度)。冒頭主題変容から全体構成されている。主題変容技法は、彼の革新的な和声法とともにリスト独自の様式形作っている。

第7番牧歌」(エグローグ) / "Eglogue"
タイトルバイロンの『チャイルド・ハロルドの巡遊』より。
エグローグとは田園的、牧歌的作品を指す語で、本来は対話形式文学作品にしばしば適用されてきた。19世紀になると主にピアノ作品用いられるようになった初め用いたのはトマーシェク(1774-1850、ボヘミア作曲家)で、彼は1807年より7つエクローグ曲集を出版している。その大半二部形式穏やかな曲である。
 リスト本作品はスイス羊飼いの歌をもとにして作られている。第五番と同様新たに追加されたと考えられているが、今日では、既に1836年作曲されていたとする説が有力である。

第8番郷愁」 / "Le mal du pays"
タイトルフランス作家セナンクールの『オーベルマン』より。その中の一節で、主人公オーベルマンパリから友人書いた自分唯一の死に場所こそアルプスである」というアルプスへの郷愁を曲にしたものと言われている。極めて簡素民族風の雰囲気のある曲である。

第9番ジュネーヴの鐘」 / "Les cloches de Geneve"
タイトルバイロンの『チャイルド・ハロルドの巡遊』より取られており、《旅人のアルバム》の初期稿では「私は自らのなかに生きるではなく、私を包み込んでくれるものの一部になる」という、同じくバイロン言葉書かれている。この初期稿1835年12月生まれたリストマリー・ダグー伯爵夫人の子、ブランディーヌに捧げられた(ブランディーヌはリストが「ムシュ」と呼びかわいがった娘である)。その穏やかで安らかな心情かいま見えるような曲調となっている。




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