尖頭状石器とは何？わかりやすく解説 Weblio辞書

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尖頭状石器

主名称：	尖頭状石器
指定番号：	517
枝番：	01
指定年月日：	1997.06.30(平成9.06.30)
国宝重文区分：	重要文化財
部門・種別：	考古資料
ト書：	福井県永平寺町鳴鹿山鹿出土
員数：	1箇
時代区分：	旧石器
年代：
検索年代：
解説文：	本件は、福井県吉田郡永平寺町鳴鹿山鹿【なるかさんか】地区から、江戸時代末期に発見された尖頭状石器一箇、有舌尖頭器二二本、石核【せきかく】二箇の一括である。　本資料は、明治三十年刊行『東京人類學雑誌』第一四〇号に「大なる石鋒と精巧なる石鏃」として、大野延太郎【おおののぶたろう】（雲外）によって紹介されたものである。その時点では資料の性格や時代についてははっきりせず、その後研究対象となることもなく年月が流れていった。しかし、昭和四十年代に至り、本資料の再報告および所属時期の追究が行われ、全国的な有舌尖頭器の集成ともあいまって、本資料が旧石器時代から縄文時代をつなぐ貴重な一括品であるという認識が広まり、その学術的価値も定まった。　大野延太郎の記述によれば、「今ヨリ三十年以前同村字山鹿トテ同所ヲ離ルコト數丁餘九頭龍川ノ中流ニ沿ヒタル河岸ニシテ少シ小高キ洪積層ノ位置ニ在ル用水土工事業ノ際ニ發掘セルモノナレバ其場所ヲ實見シタリ今其ノ掘出セシ時ノ有様ヲ聞クニ燧石ノ原料タリシ石片二箇ノ上ニ大ナル石斧ヲ横タヘソノ下ヨリ三十餘ノ石鏃モ出テタリト云フ」とされている。　すなわちこの記述によれば、石核二箇の上に大形の尖頭状石器が横たえるように乗せられ、その下の空間に三〇本以上の有舌尖頭器が置かれていたという当時の出土状態が明らかになる。これらの各石器は、現在の研究では同一時期のものとされ、かつその出土状態をみても一括性がきわめて高い。この一括性を重視した遺物の性格については、交易関係の集積遺構（デボ）・墓・祭祀遺構などの説が挙げられているが、目下のところいずれとも決しがたい。　有舌尖頭器のうち完形品は六本で、残り一六本はいずれかの部分を欠いている。その欠損部を観察すると欠損断面にも風化がみられ、発見当時以降の破損ではないことを示しているものもある。つまり、これら有舌尖頭器は、当地に据え置かれた時点ですでに欠けていた個体が含まれていた可能性が大きく、これは本石器群の埋納の意図を考えるうえで重要な所見と思われる。なお、本例のように有舌尖頭器がきわめて狭い範囲に、まとまった状態で発見された例は、現在に至るまで皆無であり、その点でも貴重な資料といえよう。　当初三〇余本あったといわれる有舌尖頭器は、江戸時代の発見以降、明治時代に東京大学に献納された三本（うち一本はその後埼玉県立博物館が所蔵、現在に至る）以外にも、なお数本の散逸があるものと思われる。さらに、近傍からは長大な局部磨製石斧【きよくぶませいせきふ】一箇（個人所蔵、本件とは出土地点が若干異なる）も出土している。しかし、一括性の高い出土状態が明確に記録され、さらにその出土品の過半が百年以上にもわたって大切に保存されてきた歴史的な経緯は、当時その正確な時代認識が不可能であったとはいえ、江戸時代の発見にさかのぼる旧石器時代の資料として、高い学術的価値をもつものである。　なお、慣例にしたがって石核は附指定としたが、その学術的価値は本指定品と何ら変わらないものであり、ともに保存を図りたい。