対人地雷全面禁止条約とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > 対人地雷全面禁止条約の意味・解説 

対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約

(対人地雷全面禁止条約 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/01 18:55 UTC 版)

対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約
青色で塗りつぶされているのが、オタワ条約を批准している国家
通称・略称 対人地雷禁止条約
オタワ条約
起草 1997年9月18日オスロ
署名 1997年12月3日
署名場所 オタワ
発効 1999年3月1日
締約国 164カ国(2020年12月現在)
寄託者 国際連合事務総長
文献情報 平成10年10月28日官報号外第222号条約第15号
言語 アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語
主な内容 対人地雷の使用、開発、生産、貯蔵、保有、移譲などを禁止する
条文リンク 条約本文 (PDF) - 外務省
テンプレートを表示

対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約(たいじんじらいのしよう ちょぞう せいさんおよびいじょうのきんしならびにはいきにかんするじょうやく、英語: Convention on the Prohibition of the Use, Stockpiling, Production and Transfer of Anti-Personnel Mines and on their Destruction)は、対人地雷を規制する国際条約のことである。対人地雷禁止条約[1](たいじんじらいきんしじょうやく、英語: Convention on the Prohibition of Anti-Personnel Mines)、オタワ条約(オタワじょうやく、英語: Ottawa Treaty)などとも呼ばれる。

2022年8月現在、164カ国が署名し批准している[2]

内容

この条約は、対人地雷の使用、開発、生産、貯蔵、保有、移譲などを禁止している。

締約国は、この条約で禁止されている活動について他国を援助、勧誘、奨励することを禁止される。

締結国は、全ての対人地雷を廃棄し、撤廃を確保しなければならず、そのための立法上、行政上、その他のあらゆる適当な措置(罰則を設けることを含む)をとる義務がある。

経過

1991年、アメリカのNGO・米国ベトナム退役軍人財団とドイツのNGOメディコインターナショナルが対人地雷全面禁止に向けてキャンペーンを立ち上げることで合意したことが端緒となり、1992年に欧米の6団体がニューヨークで「地雷禁止国際キャンペーン」(ICBL)を発足、以後世界的な運動となる。1995年には、世界初の「対人地雷の製造、使用、輸出、移譲禁止法」がベルギーで成立し、EUが対人地雷禁止に向けて共同行動を決定、1996年にカナダのオタワで対人地雷全面禁止に向けた国際会議が開かれ、1997年9月18日に対人地雷禁止条約の起草会議がオスロで開かれ、条文が作成された。

ICBLとコーディネーターのジョディ・ウィリアムズはその活動が評価され、1997年のノーベル平和賞を受賞した。(ICBLには60ヵ国以上から1000を超えるNGOが参加していた。)

なお日本1997年12月3日に署名、1998年9月30日に批准、1998年10月28日に公布(条約第15号)、1999年3月1日に発効。

運用検討会議

2004年11月29日から12月3日まで、ケニアナイロビで条約初の運用検討会議が開かれた。会議では、地雷廃絶に向けた今後の取り組みが議論され、ナイロビ宣言および今後5年間の行動計画が採択された[3]。この会議は、「ナイロビ・サミット」とも呼ばれ、締約国143カ国の代表が出席した。日本は、今回の会議で、貯蔵地雷の破壊を監督する常設委員会の幹事に立候補しており、承認されれば2006年から委員会の共同議長国となる。

その後、2009年11月30日から12月4日までコロンビアカルタヘナ[4]2014年6月23日から6月27日までモザンビークマプト[5]で運用検討会議が開かれた。

影響と課題

世界の対人地雷の推定数は、条約が発効した1999年の約1億6000万個から、2017年には約5,000万個まで減少した。しかし課題として、大国の不参加、条約に縛られない非国家勢力による地雷の使用、即席爆発装置(IED)による被害の急増、国際社会の支援低下などが挙げられている[6]

参加国は2020年12月現在、加盟 164ヵ国、署名済・未批准 1ヵ国(マーシャル諸島)、未署名 32ヵ国だが、未署名には世界有数の保有国・輸出国で安全保障理事会常任理事国のアメリカ合衆国ロシア中華人民共和国や、軍事的緊張の高いインドパキスタン朝鮮民主主義人民共和国大韓民国イスラエルエジプトイランシリアサウジアラビアなどの中東諸国が含まれている[7]。アメリカ合衆国は2009年に一度拒否したが[7]、2014年6月27日に加盟時期を明言せず、オタワ条約に加盟する方針を表明し、以後20年ほどで対人地雷を使えなくする方針としている[1]。またフィンランド[8][9]ウクライナ[10]ポーランド[11]に脱退の動きがある。

ロシアのウクライナ侵攻

2022年ロシアのウクライナ侵攻では、ロシア軍が対人地雷を使用[12]。これに対抗して2024年には、ウクライナも対人地雷の供給をアメリカに求めた[13]2025年3月18日、ポーランドとリトアニア、ラトビア、エストニアの国防相は、ロシアの脅威増大と安全保障環境の不安定化を理由に対人地雷禁止条約から離脱する方針を表明した[14]。2025年4月1日、フィンランド政府は同条約から脱退する方針を発表した[15]

脚注

  1. ^ a b 井上陽子 (2014年6月28日). “米、対人地雷禁止条約への加盟目指す方針表明”. 読売新聞. https://web.archive.org/web/20140628152454/http://www.yomiuri.co.jp/world/20140628-OYT1T50076.html 2014年6月28日閲覧。 [リンク切れ]
  2. ^ The Mine Ban Treaty: How the world decided to bury the use of mines” (英語). Arab News (2023年4月3日). 2023年4月16日閲覧。
  3. ^ [1] (PDF)
  4. ^ [2]
  5. ^ [3]
  6. ^ 2025年、地雷のない世界を目指して - AAR Japan
  7. ^ a b The Treaty Canadian Landmine Foundation. 2016年12月3日閲覧。
  8. ^ http://www.iltasanomat.fi/kotimaa/art-1288702262084.html?utm_campaign=tf-IS&utm_medium=tf-desktop&utm_term=4&utm_source=tf-other
  9. ^ http://yle.fi/uutiset/ncp_wants_finland_to_quit_landmine_ban_treaty/7300114
  10. ^ Nearly two decades after leading role, US remains on sidelines of treaty banning landmines”. The Boston Globe (2014年6月22日). 2016年2月4日閲覧。
  11. ^ ポーランド首相、全成人男性への軍事訓練を義務化する方針発表”. BBC News Japan (2025年3月8日). 2025年3月8日閲覧。
  12. ^ 対人地雷禁止条約「オタワ条約」発効25年 問われる意義”. 日本放送協会 (2024年11月29日). 2025年3月24日閲覧。
  13. ^ 米政府、ウクライナに対人地雷を供給へ 「持続性のない」機種で民間人へのリスク軽減と”. BBC (2024年11月24日). 2025年3月24日閲覧。
  14. ^ 対人地雷禁止条約離脱へ ポーランドとバルト3国”. 東京新聞 (2025年3月18日). 2025年3月24日閲覧。
  15. ^ フィンランド政府、対人地雷禁止条約から脱退方針 「ロシアは脅威」”. 朝日新聞 (2025年4月2日). 2025年4月2日閲覧。

関連項目

外部リンク


対人地雷全面禁止条約

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 07:42 UTC 版)

地雷」の記事における「対人地雷全面禁止条約」の解説

人道的な見地から、「対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約」(対人地雷全面禁止条約、オタワ条約などともいう)が作られ1999年3月1日発効した。この条約作られる機運盛り上げるにあたっては、1992年結成され地雷禁止国際キャンペーン支持したイギリスダイアナ元皇太子妃大きな役割果たした日本1998年9月30日に、この条約受諾して締約国となり、対人地雷の製造の禁止及び所持の規制等に関する法律制定し2003年2月8日保有してていた対人地雷のうち、訓練用など一部除いたすべての廃棄完了した。この式典には小泉純一郎首相当時)も出席した。 ただ、外国などからの侵略行為対し日本長い海岸線対人地雷なしに(対戦車地雷高感度使用する方法もあるが)どのようにして守るかについては、自衛隊をはじめ新たな防衛方法模索されており、かねてより航空自衛隊などが保有しているクラスター爆弾ないしは新たに開発した対人障害システム対人地雷代替とするようであるが、これも極めて限定的な補完にしかならないため、防衛力空白懸念されている。また、クラスター爆弾廃棄する動き進んでおり、ますます代替手段必要性高まってきている。 さらには米中露といった大量配備/輸出国批准していない現状では条約象徴的限定的な意味しかもっていない。むしろ先進国撤去対策施され対人地雷廃棄され紛争国が求め安価な地雷野放しになり被害拡大する一方という皮肉な事態招いている。

※この「対人地雷全面禁止条約」の解説は、「地雷」の解説の一部です。
「対人地雷全面禁止条約」を含む「地雷」の記事については、「地雷」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「対人地雷全面禁止条約」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「対人地雷全面禁止条約」の関連用語

対人地雷全面禁止条約のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



対人地雷全面禁止条約のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの地雷 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS