害鳥としてのオウム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/22 03:40 UTC 版)
多くの種類のオウムが、農業に深刻な被害をもたらす害鳥となる可能性を持っている。このために、時には銃や薬物の散布による駆除の対象となったり、またガスによる殺処分のために捕獲されたりすることもある。非殺傷的な被害緩和の手段として、脅かすことや居住地を操作すること、そしてまた主要な作物から気をそらすために、集積所を設けておとりの餌を供給することや、犠牲にするための作物の栽培なども行われている。オウムは、都市においては資産を破壊することから厄介者となることもある。彼らは自然の中では樹木をかじることでその嘴を維持しているが、都市の郊外においては屋外の家具や、ドア、窓枠などをかじることもある。ベイスギのような、柔らかく装飾的な木材はすぐさま破壊されてしまう。オウムたちはまた、屋外の配線、テレビのアンテナや衛星放送のパラボラアンテナ、太陽熱温水器などのような家屋の備品 も攻撃目標にする。メルボルン市街中心部の商業施設は、キバタンによって厚板ガラス窓からシリコン封止材を剥がされてしまうという被害にたびたび遭っている。モモイロインコとアカオクロオウムは、農村地帯で電力ケーブルの被覆を剥がしてしまうし、また防水布は場所を問わず攻撃目標となっている。オーストラリア以外の場所では、シロビタイジオウムがヤムデナ島においてトウモロコシを荒らす害鳥とされている。 1995年、ビクトリア州政府はテンジクバタン、キバタン、およびモモイロインコによって引き起こされる問題について報告書を公開した。この3種に加えてアカビタイムジオウムは、膨大な生息数がさらに増大しており、人為的な地形の改変によって利益を被っている。調査結果と報告書の公開を受けて、特定の条件下ではこの3種は保護対象とならないことが、総督の勅令により宣言された。これにより、これらのオウムによって樹木、ブドウ園、果樹園、レクレーション用保護区、商用作物などに対して深刻な被害が引き起こされる場合、これを駆除することが許されている。報告書に掲げられている被害の内容には、穀物や、果樹園の果実や堅果(ナッツ)、一部の種類の野菜作物に対する被害ばかりではなく、家屋や通信施設への被害も含まれている。アカビタイムジオウムは、西オーストラリア州で農業における害鳥と宣言されているが、これは飼育のために持ち込まれた外来種である。この被害は、トウモロコシやその他のモロコシ属の作物、ヒマワリ、ヒヨコマメやその他の作物に及んでいる。さらにまた、公園や庭園では植樹された樹木を立ち枯れさせ、食べられる根や球根を求めて競技用のグラウンドやトラックを掘り返し、また同じように電線や家屋の設備をかじる。南オーストラリア州では群れの数は数千羽を数えることがあり、また複数の種が保護対象外として分類されている。かれらはマレイレッドガム(英語版)や、その他の土着の観賞用植物をねぐらに使って立ち枯れさせていると見られており、穀物貯蔵所の防水布や、建物の電線や、雨押さえを損傷させ、畑に播種したばかりの種子を食べてしまい、騒音被害を作り出している。 いくつもの希少種やその近縁種も、また同じく問題を引き起こしていることが記録されている。ニシオジロクロオウム(西オーストラリア州の固有種で、絶滅危惧種)は松の植樹林の害鳥と考えられている。これは成育中の松の芽吹きの先端をかじり取ってしまい、この結果幹が曲がって材木としての価値を下げてしまう。さらにまた果樹や堅果の収穫に損害を与えることでも知られており、またセイヨウアブラナ(キャノーラ)の収穫を食い物にすることを覚えてしまった。ボーダンクロオウムもまた、西オーストラリア州南西部の固有種であるが、リンゴやナシの果樹園で、その種子をとり出すために果実を破壊してしまう害鳥となることがある。ヒメテンジクバタンの基亜種である Muir's Corella も西オーストラリア州では農業に対する害鳥と宣言されているが、また一方、自然界では絶滅の危機にさらされており、州の規定によれば「希少ないしは絶滅に近い状態」として分類されている。
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