外交と自由貿易
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 15:21 UTC 版)
「ジョージ・ワシントンの辞任挨拶」の記事における「外交と自由貿易」の解説
ワシントンはその辞任挨拶の大きな部分を外交、およびアメリカ合衆国と外国との間の恒久的同盟の危険性について論じることに割いている。この問題は、フランス革命戦争と呼ばれたフランスとイギリスの紛争の最中であり、連邦党員がイギリスの側に付こうとし、民主共和党員がワシントンを説得して仏米同盟を確立した1778年の同盟条約に敬意を表し、フランスを援助するようし向けている中で、アメリカ政治の中で特別の案件になっていた。ワシントンは中立宣言を発し、それが1794年の中立法成立となる中で英仏紛争に巻き込まれるのを避けようとしていた。ワシントンは明らかにこの辞任挨拶の中で外交政策と同盟関係に対する態度を説明しようとしている。 ワシントンは、ここでも宗教教義と道徳に基づく適切な行動に言及しており、あらゆる国に対する誠意と公正さの政策を提唱し、アメリカ国民にはいかなる国とも長期間の友好関係あるいは競合関係を避けるよう勧めている。諸国に対する癒着や敵意は外交政策における政府の判断を曇らせるだけであると主張している。長期にわたってお粗末な関係を続けることは、アメリカ合衆国の敵と見なされる国によって釣り合わない小さな打撃を受ける傾向にあるので、不必要な戦争に導くだけであると言っている。さらに同盟は相手国を単に守ること以上にこの国に正当化も恩恵ももたらさない戦争にアメリカ合衆国を引き込む可能性があると主張することで議論を続けている。ワシントンは、その同盟に関する警告を続け、アメリカの同盟国と同様に待遇されていないと考える国とのまずい関係になることが多く、アメリカ国民の意思ではなく、同盟国の意志に基づいてアメリカ政府を脅して判断するようにさせるとしている。 ワシントンはアメリカ国民と政府に影響を及ぼそうとする外国の危険性について長々と言及している。友好的と考える国も、敵だと考える国も政府に影響を及ぼして自国の意志を通そうとすると考え、大衆意見を無視し、友好国の影響力に抵抗して、自国の利益に最善であるものを求める者だけが「真の愛国者」になるとあえて言っている。1793年にフランス大使のエドモン=シャルル・ジュネがアメリカ国内でフランス支援のデモを組織し、スペイン領土攻撃のために軍隊の資金を手当てし、イギリス船舶を捕獲するために私掠船を雇ったという、外国からの干渉と見なされる事件があったばかりだった。アメリカ世論をフランスとの同盟に有利なようにし向けるために支持者を動員したことは一線を越えたものであり、ジュネは国外退去を命じられた。 ワシントンはアメリカ国民に世界における孤立した立場の長所を選ぶように勧め、アメリカの利益にとってほとんど何も得ることのないと主張する、特にヨーロッパ諸国との外交で癒着や摩擦を避けるよう勧めている。アメリカの孤立した立場と団結で中立を維持し、自国の問題に焦点を当てていられる時に、ヨーロッパの大地で戦われる戦争にアメリカ人が関わっても何の意味も無いと主張している。その結果、ワシントンは、極端な危険性がある場合に一時的な同盟は必要であるにしても、この国はあらゆる外国との恒久的同盟を避けるべきであり、現在の(フランスとの)同盟に敬意を払うべきではあっても延長すべきではないと、あえて言っている(現在の同盟に敬意を払うべきであるとは言っているが、実際には中立宣言によって、フランスがイギリスに攻撃された場合の援助を約していた仏米同盟条約に敬意を払ってはいなかった)。 ワシントンはその外交政策をあらゆる国との自由貿易を推奨することで締めくくっている。貿易による諸国との結びつきは中立的に確立されるべきであり、政府の役割は安定的な貿易を保証すること、アメリカ人商人の権益を守ること、および伝統的な貿易のルールを政府が保証することができるということを確実にするために必要な条項を守ることに限られるべきだと主張している。
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