地番による表記と住居表示
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/04 14:11 UTC 版)
近代以降、日本では地番を用いた住所の表示が用いられてきた。それは地租改正において課税のために付けられた地番を住所の表示にも代用するというものである。 後述の住居表示に関する法律による住居表示が実施されていない地域では、地番を用いて住所を表している。 住居表示が行われていない地域の住所は、地番と支号を用いて「3番地5」あるいは「3番地の5」などと表記される(「支号」は不動産登記法上の名称で、「枝番」とも俗称される)。地番と支号の間の「の」の有無は市区町村ごとに異なるが、全国的な傾向として「の」を挿入する市区町村は減りつつある。ただし、不動産登記における地番は「の」を入れず必ず「3番5」となるため、住所が役所で「3番地の5」と登録されて、地番が法務局で「3番5」と登録されていることが起こりうる。 国有林・河川敷・浜辺など公有地にある住所は、そもそも土地登記が行われておらず地番が付されていないため、「無番地」などといった表記となることがある。これらの住所は「番外地」とも呼ばれる。また、その地点から最も近い地番を用いて「100番地先」などといった表記をすることもある。番外地は国鉄時代の駅の住所に多くみられたほか、道路下に存在する地下鉄駅の住所や、道路工事の場所を表すなどの場合は地先を用いることが多い。住居表示実施地域などでは通常呼称している近隣の住所とは表記が乖離してわかりにくいため、地番が付されている道路であっても、隣接地の地先として表すことが一般的である。 以上の地番による住所の表示は、広い土地を分筆すれば支号(枝番号)が増え、合筆すれば欠番が生じるうえ、区画整理、町村合併、河川改修による河道変更、自治体の境界変更なども加わり、これらが繰り返されるうちに、住宅地によっては地番では目的地にたどりつくことが難しいという事例も生じるようになった。極端な場合では、元は一筆だった土地が分譲されるなどした結果、岐阜市では約250軒の住宅が同じ住所を共有するなどの例もあった。 このような地番の欠点に対し、1964年の東京オリンピックまでに外国人にもわかりやすいような合理的な住所表示の方法を導入すべきとの機運も加わり、1962年に住居表示に関する法律が施行された。住居表示に関する法律による住居表示が実施された地域では、街区方式または道路方式による表示が用いられる。 街区方式市町村内の町又は字の名称並びに当該町又は字の区域を道路、鉄道若しくは軌道の線路その他の恒久的な施設又は河川、水路等によつて区画した場合におけるその区画された地域(街区)につけられる符号(街区符号)及び当該街区内にある建物その他の工作物につけられる住居表示のための番号(住居番号)を用いて表示する方法(住居表示に関する法律第2条第1号) 街区方式は道路・鉄道・河川に囲まれた区画に街区番号を振り、さらに住居番号を付けていくという方式で、日本の住居表示実施地区のほとんどはこの方式を採用している(東京都千代田区の中央合同庁舎第1号館の住所は「東京都千代田区霞が関1丁目2番1号」のように表示される)。 道路方式市町村内の道路の名称及び当該道路に接し、又は当該道路に通ずる通路を有する建物その他の工作物につけられる住居番号を用いて表示する方法(住居表示に関する法律第2条第2号) 道路方式は欧米式と同じく通りの両側に奇数と偶数に分けて住居番号を振っていく方式だが、日本では山形県東根市の一部などで採用例があるのみである(山形県東根市の若木開拓歴史資料館の住所は「山形県東根市若木通り1丁目60号5」のように表示される)。 通り名による道案内は、地域に不慣れな人でも場所の説明や確認が容易で道案内に優れているという特徴がある。そこで国土交通省では「通り名による道案内」(通りに名称を付けた上で通りを起点に右側に奇数、左側に偶数で10 m単位の位置番号を付す方法)を住所とともに併記する施策を実施している。 なお、地番を表す部分や住居表示を簡略化して表記する場合、「-」(ハイフン)を用いる慣習がある。例えば「7番地9」や「7番9号」は「7-9」と略されうる。
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