噴火警報と受け手の火山防災体制
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「噴火警報」の記事における「噴火警報と受け手の火山防災体制」の解説
火山災害の軽減を図るには、火山噴火の情報発表体制の確立とともに、情報の受け手の地元自治体が中心となった住民等の避難体制を構築することが重要である。しかし、2007年11月以前の火山情報については「火山の活動状況のみで表現されていて、住民に対する避難勧告の発令など具体的な防災対応との関連が明確ではない」「火山の活動状況と避難行動の開始時期等をリンクさせた具体的な避難計画や避難に関する検討体制が整備されていない」といった指摘があった。 このため、2006年11月より内閣府等の「火山情報等に対応した火山防災対策検討会」において、気象庁の火山情報の改善や地元の自治体や機関等を中心とした火山防災体制のあり方について検討が行われ、2007年6月には、気象庁が発表する火山情報として、火山の活動状況に応じて必要な防災対応を「平常」「火口周辺規制」「入山規制」「避難準備」「避難」の5段階に区分して示した防災情報である「噴火警戒レベル」を導入するよう提言がなされた。こうした新たな考え方を踏まえ。気象庁では気象業務法を改正し、2007年12月から、全国の火山を対象に噴火警報が、噴火警報に対する入山規制や避難勧告の対象地域等が地域防災計画に定められた火山から噴火警戒レベルの提供が開始されることとなった。その後、同検討会では、2008年3月に、噴火警報の受け手の体制として、噴火時等の住民避難に関して平常時から関係機関が共同検討するための火山防災協議会(都道府県、市町村、気象台、砂防部局、火山専門家等から構成される)の設置等について記述した「噴火時等の避難に係る火山防災体制の指針」が取りまとめられ、2008年4月に中央防災会議に報告された。その後、この「指針」と2011年の「霧島山(新燃岳)に関する政府支援チームの活動」を踏まえて、同年12月27日に中央防災会議において改訂された国全体の防災基本計画において「都道府県による火山防災協議会の設置」「平常時からの火山防災協議会での検討結果に基づく噴火警報と避難勧告の実施」等が明確に定められた。 噴火警報導入後初めて死者の出る火山災害となった2014年9月27日の御嶽山噴火では、噴火警報を発表しない噴火予報(噴火警戒レベル1の「平常」)の段階で水蒸気噴火(マグマを伴わない砕屑物の噴出)と見られる噴火が発生、紅葉シーズンの土曜日の昼間で多くの登山者が山頂付近に居たことなどもあり、第二次世界大戦後の日本の火山災害では最悪となる50人以上の死者を出した。この噴火では、2週間ほど前から火山性地震の増加を観測し気象庁は「火山の状況に関する解説情報」を発表する一方で、山体の膨張や火山性微動が観測されず火山性地震もその後減少したことなどから噴火警戒レベルを引き上げず噴火警報の発表に至らなかった。毎日新聞の報道によれば、噴火の11分前に火山性微動、7分前に山体の膨張が観測されて警戒レベルを上げる準備を始めた矢先の噴火であったという。これに対して、警戒レベルの上げ方を再検証すべきという意見がメディアと火山学者双方から挙がった。 この教訓を受けて、火山噴火予知連絡会は「火山情報の提供に関する検討会」を設置し、分かりやすい火山情報のあり方や活動変化の際の情報伝達の方法の検討を行い、2015年3月に最終報告をまとめた。また気象庁は、対象火山で活動する場合に活火山であることを意識できるよう、2015年5月18日から噴火予報(噴火警戒レベル1)に充てていたキーワード「平常」を「活火山であることに留意」とする表現の変更を行った。また、2015年8月から、噴火が発生した場合に登山者などに迅速な通知を行う「噴火速報」の発表を開始する予定である。
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