司法審査関与について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/01 23:29 UTC 版)
「児童相談所一時保護所」の記事における「司法審査関与について」の解説
一時保護は児童福祉法第33条に基づいた行政処分であるに関わらず、「誘拐」と保護者から批判されることには、事前予告なく一時保護の後に告知がなされることにより、児相の勝手な判断で不当な連れ去りが行われたとの思いを生むのではないかとの現場での指摘がある。権利擁護の観点からも、子どもには父母の意に反して父母から分離されない権利があり、子どもの最善の利益のために分離を要するときには司法審査を経なければならないと子供の権利条約第9条第1項で規定があることへの懸念もある。また、保護者等から子どもを引き離し、児相の保護下に置くため、親権者の親権及びそのほかの権利、または子どもにも居住権の制限を生むため、手続きの適正化のために司法審査を導入すべきとの声(いわゆる「ブレーキ論」)もある。一方で、児相の行政権行使に司法権が関与することで、行政権行使の適正化が公に認められるという意義(アクセル論)も司法手続きを支持している。 海外ではカリフォルニア州で子どもの保護から48時間以内に裁判所に公聴会申し立てが行われ、その24時間以内にそれを開催し、一時保護継続の要否判断が行われる。 平成28年4月1日から7月末までの4ヶ月間に一時保護が終了したケース10099件では、保護者は一時保護に最初から同意7920件、職権保護(保護者は不同意のまま)1013件などとなっている。厚生労働省の児相への調査では「児童相談所が行う一時保護について、保護者が提起する行政訴訟の他に司法審査の手続きを強化することが必要だと思うか」の問いに、必要である35%、必要ないが36%、その他28%と回答している。司法による事前の審査は20%、事後の審査は33%が支持している。しかしながら、司法審査の手続きを強化する場合は、児童相談所の体制と会わせて、受ける司法側も迅速かつ円滑な対応ができる体制を整える必要があるとの意見もある。 現在では、2か月を超えて一時保護を行おうとするときは2か月ごとに都道府県の児童福祉審議会の意見を聞かなければならないと定められているが、平成28年4月1日から7月末までの4ヶ月間に意見聴取を実施したケースでは、同意しなかった事例がなく、また仮に不同意の場合でも、同審議会の意見を考慮して最終的には児相の判断に委ねられているような規定になってないため、形骸化しており、一時保護継続可否も司法ですべきとの指摘もある。 2021年11月、厚労省子どもの養育や虐待対策の在り方を議論する社会保障審議会専門委員会において、虐待を受けた子どもを親と分離する一時保護の際に「一時保護状(仮称)」を取る司法審査を設けることが審議されている。 なお、父母の意に反して一時保護が行われた判例では、子どもの権利条約及び憲法上での権利に照らし合わせて一時保護について適法との見解が示されている。 児童虐待により逮捕された保護者等は、「しつけのつもりだった」と語る。しかし日本政府は、平成25年の国連人権理事会(普遍的・定期的審査)において、民法第822条で許される「懲戒」は「体罰」とは異なる概念である(「This provision does not allow for corporal punishment.」)と報告し、学校及び家庭内の体罰は禁止されていると発表しており、全ての状況における体罰を明示的に禁止することという勧告をフォローアップすることに同意している。また、2006年国連事務総長の子どもに対する暴力に関する報告書においてパウロ・ピネイロ氏は条約国に優先勧告として、あらゆる形の暴力を早急に禁じ、あらゆる体罰がこの範疇に含まれることを明示した。日本政府は2008年と2012年に人権理事会の普遍的定期審査(UPR)の調査で、体罰を禁じる勧告を受け入れている。国連の動きを受け、2013年8月には「子ども虐待の手引き」が改正され、「叩く」行為も身体的虐待に追加されている。 神奈川県大和市で2018年、7歳児の男子が母親から殺害された。きょうだい3人が相次いで死亡した経緯により、児童相談所が支援対象として該当男子を2回一時保護した。しかし児相が2回目の保護後に引き続きの施設への入所手続きを取ったが家裁に認められず、帰宅させて死亡に至った事件も起こっている。
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