医薬としての利用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/08/26 16:16 UTC 版)
「サフランの取引と利用」の記事における「医薬としての利用」の解説
サフランのハーブ療法は、昔から民間医療に使われており、迷信も多く含まれている。まず、駆風剤(腸内のガスを取り、痛みを和らげる)、月経促進剤(骨盤血流を強化する)として使われた。中世ヨーロッパ人は、呼吸感染症や呼吸障害(例えば咳、風邪、猩紅熱、天然痘、癌、低酸素血、喘息)の治療に使った。また、血液疾患、不眠症、麻痺、心臓病、鼓腸、胃の不調と障害、痛風、慢性の子宮出血、生理痛、無月経(月経不順)、夜泣き、眼病などにも使われた。古代ペルシャ人、エジプト人は、サフランを媚薬、食中毒、胃炎、赤痢、麻疹の薬として使った。ヨーロッパの開業医は特徴説(Doctrine of Signatures)に基づいて、黄疸に対して同じ黄色であるサフランを治療に使っていた。 近年の研究では、サフランに含まれるクロシンなどのカロテノイドにより、抗癌性、抗変異原性、免疫調節機能を示すことが示唆された。クロシン類縁体であるジメチルクロセチンは、マウス腫瘍細胞やヒト白血病細胞に対し増殖抑制作用を示す。サフラン抽出物はマウスの腹水腫瘍、乳癌、扁平上皮癌の成長を遅らせ、軟部肉腫の発生率を低下させる。ジメチルクロセチンは、DNAがチミジンを取り込む過程で、II型DNAトポイソメラーゼに対し阻害作用を持つと推測する研究者もいる。つまりDNAの位相幾何学的な変換を抑制し、悪性細胞におけるDNAの合成や複製を抑制する作用がある。 悪性腫瘍に対するサフランの薬理学的効果は、in vitro(試験管内)およびin vivo(生体内)での研究が発表されている。その研究によると、サフランは、各種悪性腫瘍(ドルトンのリンパ腫腹水(DLA)、エールリッヒ腹水癌(EAC)、S-180肉腫)を移植したマウスの寿命を伸ばした。マウスの体重1kgあたり200mgのサフランエキスを経口で投与した場合、投与しないマウスに比べて寿命が111.0%、83.5%、112.5%となった。(これは無投与マウスと有意差があるとは言えないことに注意。)またサフランエキスは、培養されたDLA、EAC、P38B、S-180肉腫に対して細胞毒性を示す。このように、サフランは新しい癌治療薬の開発につながるシード化合物としての可能性がある。 傷の治療、制癌作用の他、酸化防止剤の役割も果たす。酸化防止剤はラジカルを中和するため、老化防止の効果も期待されている。例えば、サフランのメタノール抽出物は、高い比率でDPPHのラジカルを中和する。これは、サフランに含まれるサフラナールとクロシンが活発にプロトン供与体として作用するためである。500および1000ppmの濃度で、ラジカルの50%、65%が無効化された。なおサフラナールの作用はクロシンよりも小さかった。このような酸化防止特性により、医薬や化粧品、健康補助食品への応用が期待できる。ただし、サフランは毒性も高い。煎じ薬として与える場合、毒性の指標であるLD50は20.7g/kgである。
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