医薬として
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 06:52 UTC 版)
殺菌消毒用アルコールとして外科用の外傷処置や手術時、生体に対する挿管等での感染症防止のための清拭に幅広く使用される。細菌のほか真菌、ウイルスに対しても効果がある。内服薬としてはメタノールやエチレングリコールを誤飲した場合の解毒剤として用いられる。ただし解毒とは言っても、エタノールが直接メタノールなどの毒性を減弱させるのではなく、体内でメタノールなどから非常に有害な物質が一気に生成して、生体に大きな打撃を与えるのを防いでいるに過ぎない。以下、メタノールを例にとって説明する。 メタノールの代謝産物(酸化産物)であるホルムアルデヒドやギ酸は、共にヒトにとっては非常に有害で、血中において高濃度になると、失明の原因となる。この時体内にエタノールを共存させると、ヒトの体内では代謝酵素との親和性の関係で、メタノールよりもエタノールの方が酸化されやすいため、エタノールからアセトアルデヒド(有毒)や酢酸(事実上無害)ができやすい状態になり、他方でメタノールの酸化反応は速度が落ちる。これによって、ホルムアルデヒドやギ酸の体内での濃度を上がりにくい状態に保ちながら、ホルムアルデヒドやギ酸や代謝されなかったメタノール自体が体外へと排泄されたり、少しずつ生成するホルムアルデヒドやギ酸が処理されるのを待っているに過ぎない。 したがって、メタノールの摂取量にもよるものの、メタノールとその代謝産物の排泄が終わるまでエタノールを一定量ずつ摂取し続ける必要が出てくる。逆に、エタノールを一気に単回摂取しても効果は限られるし、エタノールの量が過ぎれば、今度はエタノールとその代謝産物による害が出かねないことは留意する必要がある。ただそれでも、家庭においてメタノールを誤飲した場合は、エタノール(酒として市販されている品で構わない)を飲みながら病院を受診するという手は、メタノールとその代謝産物による害を、最小にする応急処置として有用と言える。
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