劇作家と小説家とは? わかりやすく解説

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劇作家と小説家

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 04:28 UTC 版)

三島由紀夫」の記事における「劇作家と小説家」の解説

三島劇作家でもあるが、その演劇作品また、二項対立緊張による「劇」的展開を得意とした。三島は、戯曲小説よりも〈本能的なところ〉、〈より小児遊びに近いところ〉にあるとし、〈告白の順番〉は、〈詩が一番、次が戯曲で、小説告白向かない、嘘だから〉と述べるなど、日常的な現実空間リアルに書く従来私小説作家常識とは異な考え持っていたことが看取され、22歳時に林房雄宛てた手紙中でも、〈あらゆる種類仮面のなかで、「素顔」といふ仮面を僕はいちばん信用いたしません〉と、当時日本文壇の〈レアリズム的〉な懺悔告白のようなものや啓蒙的な小説批判している。 しかしながら三島自分自身を〈小説家〉と規定し、〈肉づき仮面〉だけが告白できると言っていたことなどから、青海健は「三島由紀夫とは、小説の〈仮面〉を被った劇作家として小説家」だとして三島にとり、「戯曲が〈本能的な素面であるなら、小説はその素面にまで喰い入ってしまった肉づき仮面」だと解説している。 三島にとっては小説よりも戯曲の方が〈はるかに大胆素直に告白でき〉、それが〈詩作代用〉をなすと自ら語るように、「のしっかりきめられた」形式の方が、「ポエジー(詩)」=「告白」できるという傾向がみられ、三島小説が、金閣寺放火事件など実際の事件題材にしているものが多いのも、その「ノンフィクション」を「仮面」とすることにより、大胆な「告白」を可能せしめるという方法論とっているからである。 三島は、〈戯曲法則強引に小説法則導入〉して、フーゴ・フォン・ホーフマンスタールの言う「自然で自明な形式感」を再確認することが〈小説家〉として重要だという持論元に、『春の雪』や『奔馬のようなドラマ性の高い小説書いているが、その「物語」を見る本多邦繁へと主題移行している『暁の寺』と『天人五衰においては、すでに「劇」は不在となり、「自己言及主題」が生の形で描かれる小説的」な「小説ノヴェル)」となっている。 この三島的な劇の形式感を放棄している小説は、ほかに『禁色』や『鏡子の家』などがあるが、戯曲においてこの「“作品書き手”の告白」の問題露わに示されているのが、『船の挨拶』『薔薇と海賊』『源氏供養』『サド侯爵夫人』『癩王のテラス』である。青海は、三島にとって戯曲とは「認識者である〈作者〉が〈作品〉と化する告白の夢」であるとし、それが顕著なのが童話作家阿里子(アリスとも読める)と、空想世界生きている帝一が結婚する薔薇と海賊』だとしている。 すなわち、『薔薇と海賊』では「書き手その作品世界との幸福な合体の夢」が暗喩的に描かれており、自決直前上演されたこの舞台見て三島泣いていたというエピソードからも、その「合体の夢」に託された「告白の意味重み」が了解される。この「作品」対「作者」といった構図の「合体の夢」は、『禁色『鏡子の家』豊饒の海』などの小説では、分裂悲劇へと向かう様相呈し三島が自ら廃曲にした戯曲源氏供養でも、作者作品世界の「分裂の不幸」という小説テーマ扱われ、〈小説家〉である三島はこの「分裂の不幸」を「小説という〈仮面〉」によって語り続けたと、青海考察している。

※この「劇作家と小説家」の解説は、「三島由紀夫」の解説の一部です。
「劇作家と小説家」を含む「三島由紀夫」の記事については、「三島由紀夫」の概要を参照ください。

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