信太の森の段(前半を童子問答の段あるいは童子物語の段、後半を二人奴の段ともいう)
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「芦屋道満大内鑑」の記事における「信太の森の段(前半を童子問答の段あるいは童子物語の段、後半を二人奴の段ともいう)」の解説
保名たちの元に芦屋道満が駕籠に乗って現れる。葛の葉は刀を手に「姉の仇」と声をかけるが、道満は「落ち着くように」と言いながら悠然と駕籠から出てくる。僧形の道満を見た保名は、それが罪を逃れるための偽装だと思い「僧籍に入ったとはいえ、仇は仇」と勝負を挑む。しかし道満は、剃髪したのは自分の父将監の菩提を弔うためであること、榊が自らの命を絶つことになったのは後室と岩倉治部の企みであったこと、『金烏玉兎集』を奪い取ったという保名の疑いはもっともだが事実とは異なることを告げる。そして、難儀な目に会った兄弟弟子のことはこれまでも気をかけており、後継者としてふさわしい保名に『金烏玉兎集』を譲るため、故郷の芦屋の庄へ赴く途中に立ち寄ったのだと言う。そして『金烏玉兎集』を取り出し、「この書で陰陽の道を拓き、都へ帰ってきなさい」と言うのだった。これを聞いた保名は平伏し道満への邪推を詫びた後、「もはや出世の見込みがない自分にではなく、跡を継がせる息子に『金烏玉兎集』を譲って欲しい」と頼み込む。道満はこころよく『金烏玉兎集』を童子に手渡す。 受け取った童子は表紙の「金烏玉兎」の文字を見て、「金烏は太陽の中の3本足の烏、玉兎は月で餅をつく兎。よってこの本を読めば、天地の間のすべてが明らかになる」と言う。道満はこれを聞き、保名の教育を褒め称えるが、保名は何も教えていないという。そして、この子の生みの母は長い年月を生きてきた白狐であり、この子はその才を受け継いだのだろうと言う。道満は、中国にも妖狐と人の間にできた子供が成長して高官にまで昇りつめた例があるので、保名の子を試してみることにした。道満の出す質問の数々に、童子は姿を隠した母狐の力を借りて次々と正答していく。童子の才に感じ入った道満は、童子の烏帽子親となるので「晴明」と名乗るように言う。道満は、保名との再会も果たしたことでもあるし、信太社を参拝したいと申し出る。保名は自分も同行しようと言って、葛の葉は晴明とともにここで待つように言い残して去る。 (ここから後半)そこに石川悪右衛門が葛の葉を奪取しようと手下を引き連れて現れる。葛の葉を見つけた悪右衛門は親子を拉致しようとするが、突然与勘平が現れ、孤軍奮闘して悪右衛門らを阻止し、逃げる一味を追撃した。と、そこへまた状箱(書状を収めるための箱)を携えた与勘平が現れる。葛の葉は先程の奮戦を労うが、与勘平は自分は保名の用事で都へ使いに出た帰りで、戦いなど身に覚えがないという。与勘平と葛の葉が噛み合わない話を続けていると、悪右衛門一味が戻ってきて、後から現れた与勘平と争いになる。これを撃退し追撃する与勘平に「深い追いするな」と叫ぶ葛の葉だが、悪右衛門の家来に捕まる。そこにまた与勘平が現れ、応戦する。前後を敵に囲まれ駕籠に逃げ込んだ葛の葉親子だが、その駕籠を二人の与勘平が担いで逃走する。晴明が駕籠から顔を出して「与勘平が二人いる」とうれしそうに葛の葉に報告すると、駕籠を担いでいた与勘平本人もその事実にようやく気づき、自分が本物だと言い争いを始める。見かねた葛の葉が与勘平の生い立ちなどを尋ねて本物の与勘平を明らかにする。すると一方の与勘平が、自分は白狐の仲間の野干平で、助太刀に来たと明かす。そして悪右衛門一味の相手は自分(野干平)に任せて、本物の与勘平は葛の葉親子を連れて草むらに隠れていろと指図する。悪右衛門一味は妖狐の通力に翻弄され、命からがら逃げ帰った。 信太社から戻った保名と道満は一部始終を聞き、これも信太明神の加護と信太社に向かい遥拝する。そして「帰り道に伏兵が残っているかもしれない」と与勘平に提灯を持たせようとしたところ、あたり一帯が狐火の光に満ち溢れるのだった。
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