作品規模の拡大・制作コストの上昇
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 18:47 UTC 版)
「アダルトゲーム」の記事における「作品規模の拡大・制作コストの上昇」の解説
アダルトゲームの販売規模・開発組織はその大半においてコンシューマ機向けのゲームよりも小規模である。だが、その一方でハードウェア技術が発展しカセットテープ・フロッピーディスクからCD-ROM、DVD-ROMと記録メディアの大容量化が進み普及するに連れて、業界の全体の流れとしてデータ量・情報量は増大化傾向の一途を辿っている。攻略対象ヒロインの多数化によるシナリオ分岐・マルチエンディングの普遍化や、ビジュアルノベルの手法の発展によりシナリオのテキスト量でもコンシューマ機の大作ソフトやライトノベルの小規模な連作シリーズ作品などにも遜色ないスケールを持つ作品や、パソコン性能の進展に伴い一般的なものになった3D・トゥーンレンダリングなどの最新技術を投入した作品も数多く制作されるようになった。 また、コンシューマ機向けのゲームソフトと同様に、 声優によるセリフの同期 動画(宣伝用デモムービー、オープニングアニメ、エンディングアニメ、作中の動画パートなど) 主題歌・イメージソング 体験版バージョンの制作・配布 特典グッズが付属した限定パッケージによる販売促進 サブカルチャー関係のイベント に参加しての広報・宣伝イベント限定グッズの会場内販売・通信販売 などといった要素が一般的になり、これらは複合的に重なってパッケージ規模の増大やトータルコストの上昇を引き起こした。広報宣伝やグッズなどゲーム本体以外の付随的な企画に要するコストや労力もメーカーにとっては無視できない負担増加の要因となっており、特にほとんどのグッズや宣伝用部材の素材制作に必要不可欠の原画担当者にかかる負担は本編の制作以外にも大きなものがある。 また、2000年代に入ってからは、特に動画・音楽・音声・主題歌といった専門的な技術が要求される要素が普遍的なものになり、特に動画は宣伝用やゲーム内のデモムービーとして規模の大小の差こそあれほとんどのタイトルで制作されている。だが、本格的な動画については専門技術を持つスタッフを擁し内製が可能なメーカーは少数派である一方で、業界の界隈では各種素材を利用して動画を制作するプロ・セミプロのプロダクションや個人事業主が多数活動していることから、大半のブランドがこれら外注に依存しており、その上、宣伝用デモムービーが当たり前のものとなるに連れて販売店やプレイヤーからはテレビアニメのオープニングアニメにも近いクオリティのものが要求されるようになった。また、特に発売開始前に配布する宣伝用デモムービーは、たとえ低価格路線のソフトでも広報宣伝に不可欠であるため、安易にはカットできない うえ、その出来不出来は販売店の売場での放映量の多寡や作品自体へのプッシュの強弱にも直結し、売り上げ本数にまで直接の影響を及ぼすことから一定水準のものを制作する必要があり、そうなるとやはり相応の専門の技術・知識を用いた“作品”が求められるため、安易にコストカットの鉈を振るうことができない一面があり、外注費の増加要因の1つとなっている。 これらの要因や後述する工程管理の狂いが重なりトータルで見た製作コストが膨張した結果として採算ラインの上昇を招き、販売本数的に成功と言われるタイトルであっても製作費を最初のアダルトゲームソフト単体では到底回収しきれないものすら散見されるようになり、現在では多くのブランドがファンディスクなど関連作品の制作やコンシューマ機への移植、キャラクターグッズ販売といった版権を利用した各種ビジネスを展開し、収益構造の安定化を図っている。だが、それでもトータルでの製作規模・制作費の増大が経理面から経営に重くのしかかり、また景気低迷や企画・開発の難航など様々な組織内外の事情も重なって、ついには新規タイトルの開発を断念・休止したり公式ウェブサイトの更新が途切れてしまい事実上の活動終了となる、そこまではいかなくとも長期間にわたり新作の発表が途絶えてしまうなどといった状況が、一般的な規模のブランドはもとより、業界内で中堅・大手・古参などと見なされているブランドでも時折見られているようになっている。
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