佐川道場での大東流合気武術の修行
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「保江邦夫」の記事における「佐川道場での大東流合気武術の修行」の解説
木村達雄から紹介をうけ佐川道場に入門する。はじめて会った佐川からは優しさがにじみ出るような雰囲気があり、とても武道の達人の様相ではなかったという。その際「きみのような優しい人間は、うちに来ても強くなれないよ。それでもよかったら通っておいで」との言葉をもらう。 佐川道場での教えはすこぶる厳格なものであり、佐川いわく「武を志して入門したからには、たとえ門人となって二日目だからといって逃げるわけにはいかないのだ。また何も教わっていなくても、武門の恥とならないよう、たった二日間で見てきた全てを工夫して敵を倒す。その心構えがないようでは、そもそも入門は許されない」(「Excelで学ぶ金融市場の予測の科学」(講談社 142頁)など、保江の書籍のいたるところに佐川道場で得た佐川語録が引用されている。 一方、合気道を基礎として武道の心得があった保江は佐川道場で異様な光景を目にする。鍛えた先輩方や他武道経験者が、90歳を超える高齢の佐川にいとも簡単に投げられ潰され倒されるのである。それも単に崩れるとか、よろめく程度ではなく、数メートル吹き飛ばされるような光景も何度も目にした。そこで、人間の底力、整然と秩序だった力の妙技、合気の技の数々を知ることになる(出典:「量子の道草」(日本評論社))。しかしそれは常識ではありえない光景であった。道場の先輩である木村達雄でさえ、「自分は無意識に(佐川)先生に遠慮して倒されているのだろうか」と自問自答するくらいの技の威力であった。 理学博士である保江は、佐川が使う大東流の技を、物理学的な面、心理学的な面、そして生理学的な面を含め多数から考察した。その最終的な結論は「佐川の合気は、そのいずれも超越した存在である」というものであった。佐川の考察可能な技法については、DVD「保江教授の合気テクニカル」でその一部を紹介している。 内容は以下の通り。 筋骨格系技法弱腰 - 相手の身体骨格構造の弱点を攻める 平面骨格 - 相手を平面骨格構造に追い込む 緩い肘 - 運動量と慣性力を利用する 緩い膝 - 角運動量と重力を利用する 神経制御系技法作用点を動かす - 連続移動作用点を使う 多自由度構造 - 相手の支えにならない多自由度構造を作る 錐体路系神経支配 - 相手の身体制御機能を停止させる 皮膚・脳神経支配 - 相手の脳神経機能を混乱させる 保江は仕事の時間の都合上、昼間の稽古に出ることが多かった。そこには木村をはじめ、少数の門人の参加しかなかった。強くなりたいという欲求よりも、むしろ達人である佐川の技を見たい、そして合気の技をかけてもらうことだけで幸せを感じていた保江は、直伝講習において、ある驚愕の事実に気づく。 以下、「合気開眼」(海鳴社)95頁からの記述を転記。「僕の直伝講習を最後に、佐川先生とだけ一対一で教えていただく昔ながらの形はなくなり、他の先輩からの面前で先生が技をかけてみせて下さる形に変わったし、(中略)そして、思い出すのはその直伝で受けた合気の技のどれもが、(中略)柔らかく暖かく心地よく包み込まれたかのように自分の体がフワフワになり、(中略)こんな不思議な体験を続けていくうちに、さらに不思議なこともわかってきた。それは、先生が僕の腕をつかんで技をかけとき、確かにつかんだかのような手の形にはなっているのだが、つかまれていた僕の腕の皮膚感覚では何もつかまれていないということ。つまり、佐川先生の手の内の皮膚が僕の腕の皮膚と接触して何らかの力を伝えてきて倒されるわけでないということだ」 佐川宗範の直伝を受けたものだけが知る、にわかに信じられない事実が語られている。
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