人為事故
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/06 02:41 UTC 版)
「事故による美術品の損壊」の記事における「人為事故」の解説
2006年10月、有力経営者のスティーブ・ウィンが、1932年にピカソが描いた作品「夢」の売却を認めた。この作品はウィンの芸術コレクションの要であり、ウィンが経営するラスベガスのカジノで展示されていた。予定売却価格の1億3900万ドルは、絵画の販売において当時の最高額であった。ところが価格取引の翌日、絵画をリポーターに見せていたところ、ウィンが誤って絵に肘をついてしまい、目立つ穴を開けてしまった 。9万ドルをかけて修理したが、絵画の見積もり価格は8500万ドルになった。これに対しウィンがロイズ・オブ・ロンドン保険組合を通して価格の差に抗議し、2007年3月に示談が成立した。2013年3月、ウィンは修復後の絵画を元の購入者、スティーヴン・A・コーエンに1億5500万ドルで売却した。なお絵画の価値は、物価上昇を加味した事故前の価格(2013年時点で1億6000万ドル)と比べて約500万ドル下落した。 2006年、ケンブリッジのフィッツウィリアム美術館を訪れていた男性が、緩んだ靴ひもを踏んで転倒し、中国の清王朝(17世紀)の花瓶3点を割ってしまった。男性にけがはなく、弁償もせずに済んだが、この美術館を出入禁止になった。その花瓶は特に価値のある展示品の一つであり、美術館がなんとか修復した。保護ケースに入れられた上で再び展示されている。 2010年1月22日、ニューヨークのメトロポリタン美術館を訪れていた女性が誤って転倒し、1904年にパブロ・ピカソが描いた作品「役者」に倒れ掛かった。これにより196cm×115cmの絵画の右下が、約15センチメートルにわたって裂けてしまった。この絵画はピカソの主要な作品の一つとされており、価格は1億3千万ドルといわれている。損害は3か月の作業を経て、2010年4月に修復された。修復作業では6週間にわたり絵画を平らに寝かせて、まず落下によってかかった力を相殺するために、小さな絹製サンドバッグの重りが載せられた。その後、キャンバスの裏に二軸延伸ポリエステルを当てて、表面を慎重に修正した。二軸延伸ポリエステルが選ばれた理由は透明度の高さにあった。キャンバスの裏には第二の絵が存在するため、それが隠れないよう考慮したのである。事故後、絵画にはアクリル樹脂で覆いがされている。 現代美術家のトレイシー・エミンの作品は、複数が不慮の事故で損害を受けている。「自画像:入浴」(有刺鉄線に絡まったネオン灯)は、スコットランド国立近代美術館での展示中、鑑賞者の服がワイヤーに引っかかり、約2000ドル相当の損害を受けた。同じギャラリーでは、別の来館者が後ずさりしてエミンの作品"Feeling Pregnant III"に接触してしまった。「私の叔父コリン」はスコットランド国立美術館のスタッフが誤って破損してしまったが、後に修理された。2004年5月には倉庫で火災が発生し、刺繍したテントの作品「私が今までに一緒に寝たすべての人 1963–95」を含む複数の作品が損害を受けた。 2015年、12歳の男の子が台北市の華山1914文創園区で開かれた展覧会を訪れ、つまずいた拍子にパオロ・ポルポラの作品「花」に穴を開けてしまった。絵画の価格は150万ドル(95万ポンド)だった。男の子とその保護者はいずれも罪に問われたり修復費用を請求されることはなく、保険によってカバーされた。
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