一般家庭でのパンづくり
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/29 23:07 UTC 版)
数百年前、つまり調理は薪(まき)を燃やして行われていた時代のヨーロッパでは、内部がフワフワとした発酵パン(種ありパン)を作るには、生地(en:Dough ドウ)をこねて発酵させたり延ばしたりするための結構な労力と時間がかかるうえに、薪を燃やして内部を240~250度ほど(以上)にできるオーブン(「焼き釜」) 等の調理設備(当時は「調理機器」と言うより「調理設備」)が必要で薪も相当量消費するので、一般家庭で、平日に毎日のようにパンを焼くことはかなり難しかった。パン生地づくりくらいは各家庭でもできても、大きな薪オーブンを設置することは、当時としては相当に豊かな家でないと難しかったので、地区内の比較的裕福な家の一軒が薪で熱する大きなオーブンを(オーブンづくり職人に依頼して)建造させて所有し、それを(一応自分のものではあるが)近所や地区の共用のものとしても運用し、近所の人はオーブンを利用させてもらうかわりに、薪を適量 持参するとか、地区内で決めた(かなり小額の)使用料を一回利用するたびに所有者に払うとか、あるいは(貧しい家庭では)すっかり厚意に甘えてタダで利用させてもらう、などということが広く行われていたわけである。 最初からコミュニティの建物に、明確なコミュニティ共用オーブン(コミューナル・オーブン)を設置している地域・地区では、各家庭はそこに薪を持ち寄り生地を持参しパンを焼くということも行われた。(今でも、国によっては、(少数だが)そうしたオーブンが残されていて運用されつづけている地域もある。) ガスが各家庭に供給されるようになった先進国では、各家庭のキッチンの調理台の下部にガスオーブンを設置することがかなり一般的になり、一応、各家庭内でパンやクッキーやケーキを焼くことができるようになったが、それでも生地をこねて発酵させて成形する手間と時間はかかるので、時間に余裕がある休日にパンやクッキー類を作ることは行われていたが、時間の足りない平日にパンを焼くということは一般的とは言えなかった。ガスオーブンが普及した後でも、たとえばパンが主食的な位置づけでパンの本場のフランスやドイツでも、毎朝起きると、まずは朝の軽い散歩を兼ねて近所のパン屋にパンを買いにゆく、ということが一般的であったわけであり、現在でもそれが主流で一般的なわけである。 だが1980年代末以降に日本でホームベーカリー(家庭用のパン焼き機)が販売されるようになると、それを購入した家庭では、家庭内で週に何度もパンを焼く、ということも行われるようになった。ホームベーカリーの累積販売台数はかなりの数になっている。(日本では流行の高低は何度かあったが)日本でも自宅で「焼きたてパン」を気軽に楽しむ機会も増えている。また、世界的に、冷凍のパン生地が一般スーパーやブランド店などで販売されることも増えており、それを一般家庭のオーブンで焼く、ということもできるようになっている(生地づくりの手間・時間を省ける)。もともと日本で開発されたパン焼き機が欧米でも販売されるようになり(また模倣品も製造・販売されるようになり)、それを購入した欧米の家庭では、(特に欧米では(米は基本的に食べず)パンは(第一の主食である肉に次ぐ位置づけで、やや補助的ではあるが)定番の食品であり主食的要素であるので)週に何度も家庭で焼いて食べる、ということも行われている。とはいえ、欧米でも統計的にみるとこの機械を購入した家庭はまだまだ少ないし、プロのパン職人がプロの技を尽くし大型のオーブンでしっかりと焼いたパンのほうがいくらか美味しいことは多いので、(たとえばフランスでは)家庭で消費されるパンの70%ほどは、今もベーカリーでプロのパン焼き職人が焼いたパンである(統計データについては後述)。 趣味としてのパン作りは(ケーキや菓子作りなどと同様に)世界中に愛好家がいる。テレビ番組(たとえばマーサ・スチュワートの料理教室番組など)でもパンの作り方を頻繁に教えているし、カルチャーセンター等でもパン作り講座が多く開講されている。
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