一人っ子政策の緩和と政策変更
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「一人っ子政策」の記事における「一人っ子政策の緩和と政策変更」の解説
以上のような内容をもっていた一人っ子政策であったが、かつての「血の川ができようとも2人目は産ませない」などといった過激な一人っ子政策のスローガンも次第に廃止されるようになり、2014年10月29日に閉幕した中国共産党の重要会議である中央委員会第5回全体会議(5中全会)により、「一人っ子」政策の廃止が決定された。同会議は、経済の中期計画である「第13次5カ年計画」案を採択し、その会議後に発表されたコミュニケ(公表文)では、「1組の夫婦が2人の子供を産む政策を全面的に実施し、人口高齢化への対策を進める」とした。中国の人口学者はここ10年来、早期の政策変更を訴えてきたが、地方政府は学校などを建設することなどの負担増から政策変更には反対していた。 2013年には「夫婦どちらかが一人っ子ならば第2子の出産を認める」との緩和に踏み切っていた。だが新制度の利用率は低迷し、2年後にさらなる変更を迫られた。2012年には、労働人口が初めて減少に向かったとされ、2020年代に至ると年間790万人のペースで労働人口が急減していくと予想されており、「一人っ子」政策が世界的にも例のない速度で少子高齢化社会を引き起こし、経済成長にも悪影響を及ぼすと意識された。先に高齢化と人口減少を迎えた隣国日本が、潜在的な経済成長率の低下に苦しむ姿を目のあたりにしているだけに、政権の危機感は強かった。 ただし、中国共産党は、計画出産そのものについては「基本政策として堅持する」として、2人までの制限は残すという姿勢を見せており、「子供を産みたい」という両親の思いを国家が一方的に制限する構図は続く。中国政府の国家衛生・計画出産委員会は、10月30日、共産党が前日に「一人っ子」政策の変更を決めたことを受けて、2030年の人口が14億5000万人に増えるとの予測を明らかにした。同委員会によると今回の政策変更で、すべての夫婦が2人目を産むことができるようになり、子供を産めるようになる夫婦は全国で約9000万組と見込まれ、少子化に歯止めがかかると期待する。現在の新生児数は年間1700万人から1800万人とみられるが、今後数年間は増加に転じ、ピーク時には年間2000万人を超えると予測した。同時にこの政策変更によって子供の数が増えても、資源の消費に影響があるが許容の範囲内であるとしている。 一方、子供向け用品などの需要が増えたり、労働人口も2050年時点で、これまでの予測より約3000万人増え、経済面のプラス効果があるとしている。国家衛生・計画出産委員会の王培安副主任は11月10日、上述の共産党による緩和策により、全ての夫婦に2人目を産むことが認められることで、労働人口の減少が緩やかになるとの予測の発表をした。将来の潜在経済成長率を0.5パーセント引き上げるとの試算を発表した。 全人代は2015年12月27日の常務委員会で、全ての夫婦が2人の子どもを持つことを認める人口・計画出産法の改正案を採択し、2016年1月1日から施行した。法改正により、同年1月1日以降に生まれた子どもは2人目であっても全員が「合法」とされて戸籍が認められることになった。同改正法にあっては、2人目を産むことを奨励するために、育児休暇を延長する方針も盛り込んだ。国務院は、2016年1月14日、一人っ子政策に違反したなどの理由で戸籍を得られないでいる人について、「無戸籍問題の全面解決」を求める意見を関係する中央・地方の政府機関に出した。戸籍が取得できないでいる子どもについては、出生証明書と父母の戸籍などを示せば、戸籍を与えるとした。 中国が少子化を食い止めることができるかは、「一人っ子政策」を終えて初めての全人代となった2016年の全人代でも発言が相次いだ。「二人っ子政策」により子供が産めるようになるとされた9000万組のうち、二人目を産もうと考えている夫婦は26パーセントにとどまるとの調査もある。2016年3月の全人代では、「2人目を産んだ夫婦には各種の減税策を設けるべきだ」等の、出生策の増加を目指した政策提言が、全人代の代表(日本の国会議員にあたる)から相次いだ。各代表には少子化が地方経済にとって重圧になるとの、危機感も強い。全人代と同時に開催されている2016年の全国政治協商会議においては、「遅くとも2017年末までには全面的に計画出産を放棄するべきである」との踏み込んだ意見も見られたという。これに対し、一人っ子政策の執行を担った国家衛生・計画出産委員会は、会期中の記者会見で、産児制限を終える時期を問われて、「計画出産の国策はこれからも長期にわたり堅持する」と答えた。 以下は、上記緩和策に対しての日本企業の反応の一例である。2014年の個人情報の漏洩問題と少子化で、国内通信教育の会員数が激減している教育大手のベネッセホールディングスは、新たな海外展開と介護事業を新たな主力事業に据えようとしている。既に中国事業は会員数83万人と、日本国内の会員数76万人を上回る。日本の幼児に絶大な人気を誇る「しまじろう」は、中国でも「巧虎(チャオフー)」として親しまれており、会員数拡大のカギにする。同社の原田泳幸社長は「一人っ子政策の見直しも追い風」と話した。
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