ユートピアとの相違とは? わかりやすく解説

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ユートピアとの相違

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/16 03:52 UTC 版)

桃源郷」の記事における「ユートピアとの相違」の解説

陶淵明研究者伊藤直哉は以下の通り述べている。トマス・モア思想書ユートピア』に由来するユートピア思想根底にあるのは、理想社会を実現しようとする主体的意志である。この本ではユートピア滞在した経験がある人物が、モア現地様子紹介する設定になっているユートピア遠く離れた島国とされているが、全く到達不可能な夢幻としてではなく地理社会制度の意味において十分到達可能なものとして描かれており、その上でユートピア人の風俗法律などの成立根拠合理性疑問投げかけている。モアユートピアは「夢想ではなく普通の人々努力して築き上げた社会主義国家」なのである陶淵明生きていた時代異民族征服王朝次々と現れ中国北部支配し漢族異民族征服され時代であった労役から南に逃げた漢族たちは東晋という国を建国したが東晋異民族侵略苦しんでいた。異民族征服からもう逃げる場所がない漢族心理から陶淵明桃源郷という作品作られるようになった陶淵明ユートピアだけを夢見た芸術家ではなかった。彼が住んでいた乱世でこの山の奥のユートピアはとても現実的なイメージ持っていた。 一方で桃源郷は、「理想社会の実現諦める」という理念示している。中国史稀に見る混乱期の中、人々苦悩悲劇満ちた現実から逃避しようとし、文壇では遊仙詩神仙郷に遊ぶ詩)が現れた。しかし陶淵明作品は、題材遊仙詩似ているが、思想本質的に異なとされる陶淵明は、神仙郷実在決し信じ否定しており、日常生活尊重していた。同時に書物通じて神話世界自由に飛翔し神仙境地至っていた。 孟夏 草木長じ 屋を遶りて扶疏たり 衆託する有る欣びも亦吾が廬を愛す既に耕しては亦た已に種ゑ 時に還り我が書を讀む 窮巷は深轍を隔て 頗る故人の車を迴らす 歡言しては春酒を酌み 我が園中の蔬を摘む 微雨東より來り 汎覽す周王傳 流觀す山海の圖 俯仰して宇宙を終せば 樂しからずして復た何如 (初夏になって草木伸び 我が家周りには樹木生茂る たちは巣作り喜び励み 私も自分の家気に入っている 野良仕事精を出し 家に帰る読書を楽しむ 狭い道には車も入って来れぬから 煩わしい付き合いをしなくて済む 近隣の人たちと歓談しては酒を酌み交わし 肴に庭の野草を食う 小雨が東の方から降ってくると それに伴って気持ちのよい風も吹く 周王の傳を精読し それに添えられた絵に目をやる 寝ながらにして宇宙のことが分かるのだから こんなに楽しいことはない) —陶淵明、讀山海經其一 西洋ユートピア思想悲惨な管理社会生み出し潰え去った。また東洋二千年以上前に、韓非子思想支えられ現れ秦帝国専制支配とその崩壊によって、同様の道を辿った反面、『桃花源記』の描写は「老子」を踏まえつつも、ユートピア末路象徴している。つまり、地上ユートピア作ろうとする熱意生む惨劇表現している。だが、災厄から逃れた先祖は、彷徨果て辿り着いた地があった。つまり、ユートピア崩壊後姿を現すものが桃源郷である。対照的な両者もたらす結果逆になっている。すなわち、主体的積極的なユートピア思想は、その目標とは全く裏腹大きな災禍生じる。消極的な桃源郷は、現実には何の力も持ち得ないが、人間精神大きな慰め与え得る。伊藤直哉は、映画千と千尋の神隠し主題歌歌詞海の彼方にもう探さない 輝くものは いつもここに わたしのなかに みつけられたから」を、『桃花源記』の良い注釈として引用している。

※この「ユートピアとの相違」の解説は、「桃源郷」の解説の一部です。
「ユートピアとの相違」を含む「桃源郷」の記事については、「桃源郷」の概要を参照ください。

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