メリマックからの改装
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/07 23:03 UTC 版)
「バージニア (装甲艦)」の記事における「メリマックからの改装」の解説
バージニア州が1861年に合衆国から脱退し連合国側に参加したため、当時脅かされた合衆国側の重要な軍事施設の一つにゴスポート造船所(現在のノーフォーク海軍造船所)があった。同造船所は連合国の手に落ちるのを防ぐため破壊が命じられた。合衆国にとって不運なことに、その命令は達成されなかった。蒸気フリゲートのメリマック(英語版) (USS Merrimack) は完全に燃え尽きる前に浅瀬に沈没した。南部連合軍が造船所を管理下に置くと、ゴスポート造船所の司令官となったフレンチ・フォレスト大佐は、沈没したメリマックの引き上げを5月18日に着手した。引き上げは5月30日に完了し、造船所の乾ドックに曳航され、焼けた構造物が取り除かれた。 調査の結果、船殻下部とエンジンは無事であることが判明した。メリマックはチェサピーク湾付近において使用可能な南軍の最大の蒸気船であったため、連合国海軍長官であったスティーヴン・マロリーは、メリマックを装甲艦に改造することを決定した。ジョン・ブルック大尉およびジョン・ポーター大尉が改造案のラフスケッチを提出したが、どちらも砲郭型の船を提案した。ブルックの概案は、艦首と艦尾を半潜水形式とするもので、この案が採用された。詳細な設計は艦艇設計技師としての訓練を受けていたポーターが行った。ポーターが改造全体に責任を持ち、ブルックが装甲部分と大砲を、南部海軍のチーフ・エンジニアであったウィリアム・ウィリアムソンが機関部の責任者となった。 燃えた木製船殻は、2枚羽根のスクリューが有効に働くぎりぎりの喫水になる位置で切断された。新たな船尾楼甲板および主甲板上に鉄で装甲された砲郭が取り付けられ、艦首には砲郭とつながるV型の水切りが装備された。前後の主甲板および船尾楼甲板は、半潜水状態となるよう設計され、2層からなる4インチ(10cm)の鉄板で覆われた。砲郭部は数層からなる合計24インチ(61cm)の樫材および松材を基部として、それを2インチ(51mm)の鉄板2層で覆った(1層は縦向き、もう1層は横向きに鉄板を装着した)。また、砲郭には敵の砲弾を滑らせるように36度の角度がつけられた。さらに、バージニアの設計者は北部の新聞情報から合衆国軍が装甲艦を建造していたことを耳にしており、通常の砲ではそのような装甲艦に損傷を与えることができないと考え、19世紀の艦艇としては時代錯誤と思われる衝角を装備した。機関部の状態は、もともとメリマックの蒸気機関は正常に動作しない状態であったうえ、塩分の多いエリザベス川の水に沈んでいたために悪化していた。しかも鉄製装甲およびバラスト追加による船体重量増のために、機関の負担は大きくなり、機動性は低下した。完成時、バージニアの旋回半径は1マイル(1.6km)におよび、1旋回するのに45分を要した。これは後により俊敏な北軍のモニターと対鉄した際に大きなハンディキャップとなった。 鉄製の砲郭には14箇所の砲門があり、その内訳は前部3箇所、後部3箇所、左右舷側に4箇所ずつであった。前部および後部の砲門は、中央のものが艦の軸線方向に向いており、左右の砲門は45度の方向を向いていた。これら前後6箇所の砲門には外側に鉄製のシャッターが取り付けられていた。舷側の砲門にはシャッターは取り付けられていなかった。バージニアの兵装は、4門のブルック砲(前装式ライフル砲)、およびメリマックから引き上げた6門の9インチ(229mm)ダールグレン砲(滑腔砲)であった。ブルック砲の内2門は、艦前後の旋回台に載せられており、口径7インチ(178mm)、重量14,500ポンド(6,600kg)、砲弾重量104ポンド(47kg)であった。残り2門は口径6.4インチ(163mm)砲、重量およそ9,100ポンド(4,100kg)で、左右舷側にそれぞれ1門ずつ装備されていた。9インチダールグレン砲は左右舷側にそれぞれ3門ずつ装備されており、重量は約9,200ポンド(4,200kg)、重量72.5ポンド(32.9kg)の砲弾を、仰角15度で3.357ヤード(3,070m)飛ばすことができた。船体中央部のボイラーの釜近くの2門のダールグレン砲は加熱した砲弾を使用できた。砲郭甲板には、敵の接舷攻撃を阻止するために、2門の12ポンド榴弾砲が装備されていた。 バージニアの艦長に任命されたフランクリン・ブキャナンは、最初の出動のわずか数日前に着任した。それまでの艤装員長はケイツビー・アプ・ロジャー・ジョーンズ大尉が勤めた。
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