マイケル・ライトによる調査
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/24 07:03 UTC 版)
「アンティキティラ島の機械」の記事における「マイケル・ライトによる調査」の解説
ロンドンのサイエンス・ミュージアムで元機械工学の学芸員を勤め、現在はインペリアル・カレッジ・ロンドンに在籍のマイケル・ライトは、オリジナルの断片について全く新たな調査研究をブロムリーと共に行った。彼らは、定年後コンサルタントをしていた放射線学者アラン・パートリッジの提案を受けて、線形X線断層影像法と呼ばれる技術を用いた。ライトはこの線形断層撮影のための装置を設計・製作して、部分的二次元X線画像の撮影を可能にした。この調査の初期の結果は1997年に発表され、プライスの復元には根本的な不備があることを示した。新たな画像の更なる研究により、ライトはいくつかの仮説を展開した。第一に、プライスが「ギリシャからの歯車」で提唱した、この機械はプラネタリウムとして使われたというアイデアを発展させた。ライトのプラネタリウムは単に太陽と月だけでなく、内惑星(水星、金星)、外惑星(火星、木星、土星)の運行も表した。ライトは太陽と月はヒッパルコスの理論に基づいて動き、五つの惑星はアポロニウスの唱えた単純な周転円説に従って動いたと提唱した。実証として、ライトはアンティキティラ島の機械に見られるレベルの技術を用いて、プラネタリウムの実用模型を作った。ライトはまた歯車の数をプライスの言う27から31に変更した。その内の一つは月相表示の一部と目されていた部分Cに属するものであった。この装置は銀めっきされた球体により月の満ち欠けを示したが、これは太陽と月の年周期の差動回転により実現されていた、とライトは提唱した。これは同種の機構の登場をこれまで知られていたよりも1,500年早めることになる。さらに正確な歯車の歯数が得られ、新たな歯車の理論展開を可能にした。この更に正確な情報により、ライトは、背面上部の表示盤は5回転で235朔望月からなるメトン周期を表す、というプライスの鋭い仮説を確認するに至った。加えてライトは、背面の二つの主表示盤は螺旋図形を表していた、という画期的なアイデアを提唱した。背面上部の表示盤は一回転が47目盛りを持った5回転の螺旋であり、235朔望月のメトン周期(約19太陽年)を視覚的に表していた。その補助表示盤は一周期19年の周期を4回を数え上げ、76年周期のカリポス周期を示すという断片的な文字列を発見した。 より不明瞭な観察結果に基づいてではあるが、背面下部の表示盤は交点月を数え、おそらく日食の予測に用いられたと結論付けた。以上の発見は全てライトの復元模型に取り入れられ、全ての機能を1つの機体に作りこめることが可能なだけでなく、動作することも証明した。線形断層影像法によりかなり改善された画像を得たにもかかわらず、ライトは既知の歯車の全てを、1つの完結した機械として組み合わせることができなかった。そのことから彼は、いくつかの機能は取り除かれたり付加されたりして改造された、という結論に至った。数々の研究成果を挙げて、最終的にライトはプライスの唱えた差動装置の存在仮説を否定した。マイケル・ライトの研究は、アンティキティラ島の機械研究プロジェクトと平行して行われている。アンティキティラ島の機械研究プロジェクトの最新の結果である、月の角速度異常を見事に再現する、歯車に付随するピンと溝の機能を盛り込むために、最近ライトは彼のモデルをわずかに改良した。2007年3月6日、ライトはアテネの国立ヘレニック研究基金(National Hellenic Research Foundation)に彼の復元模型を提供した。
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