ベネズエラ危機をめぐる活動
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「セイコウ・イシカワ」の記事における「ベネズエラ危機をめぐる活動」の解説
2005年、イシカワが駐日大使を拝命した頃のベネズエラは、原油高による豊富な石油収入を原資として、大統領ウゴ・チャベスの主導する社会主義政策が一定の成功を収めていた。2013年3月にチャベスが逝去すると副大統領ニコラス・マドゥロが暫定大統領を務め、同月14日、憲法の規定に則った大統領選挙において得票率49.1%のエンリケ・カプリレスに対して得票率50.7%を勝ち取り、辛勝ながらも大統領選を制して正式な大統領に就任した。しかし、2015年12月の国民議会選挙で反マドゥロ政権の野党が三分の二を占めたことをきっかけにマドゥロ政権は、国民議会排除と与党が議席を独占する制憲議会(スペイン語版)設置を強行し、マドゥロ派と反マドゥロ派の対立が深まった。2018年5月21日の大統領選挙(スペイン語版)も事前に有力な野党政治家の選挙権がはく奪され、それに反発した主要野党がボイコットしている状況下で行われた。マドゥロは国民の投票を監視し、自分に投票しない国民の食糧配給を止めるなどなりふり構わない選挙戦を行った。そのためアメリカ、欧州連合、日本などは選挙の結果を承認しなかった。経済的にも2014年の原油価格下落をきっかけにベネズエラ経済は低迷して、急激なインフレに見舞われ、2018年には通貨を10万分の1に切り下げるデノミを実施する混乱状態に陥った。2019年6月7日の国連難民高等弁務官事務所の発表によればベネズエラを逃れる難民数は400万人を超えたという。 こうしたベネズエラの状況のため、近年のイシカワはベネズエラ情勢をマドゥロ政権の立場から釈明を行うことが多い。2017年5月25日、親マドゥロ政権ベネズエラの駐日キューバ大使、駐日ニカラグア大使、駐日ボリビア臨時代理大使が臨席する日本記者クラブの会見において、国民の8割以上がデモに否定的だとする調査結果や米国による野党勢力への資金援助などを例に挙げてマドゥロ政権の立場を説明し、「真摯に真実を追求してほしい」と求めた。 また、2019年2月1日、日本記者クラブにおいてイシカワは通訳を除けば単独となる記者会見に臨み、国民議会議長フアン・グアイドが暫定大統領への就任を宣言したことについて、「憲法違反であり、政権転覆を企てたクーデターだ。正統性はない」と糾弾し、「グアイド氏は野党間の輪番で国会議長になったにすぎず、全く無名の存在だった。それが彗星のごとく躍り出たのは、米政府が後押ししてクーデターを仕組んだからだ」「暫定大統領就任宣言の前日に、ペンス米副大統領がグアイド氏に電話で宣言を促した」として米国を批判した。イシカワは、マドゥロ支持およびグアイド不支持を前提にした上で、事態収拾の解決策として建設的な対話を求めた。しかし、同年2月19日、外務大臣河野太郎が外務省会見室における記者会見で「我が国としてグアイド暫定大統領を明確に支持することを表明いたします」と公式に表明した。これを受けて翌20日、イシカワは駐日ベネズエラ大使館で記者会見を開き、「ベネズエラ国民は平和的解決を目指しており、グアイド氏への支持表明は対話に向けた努力に水を差す」と指摘した上で「日本は対話を支持してほしい」と訴えた。 2019年2月22日、日本共産党副委員長緒方靖夫がマドゥロ政権を批判した同党声明「弾圧やめ人権と民主主義の回復を ベネズエラ危機について」をイシカワに提出。イシカワは「非常に残念だ。ベネズエラの情勢については何度も説明してきたが、それが宙に浮いてしまったようで心が痛む。ただ、わが国のことを心配していただいていることには感謝している」「現在の事態は米国による介入によって引き起こされたもの」と応じた。これに対して緒方は「米国の金融制裁が始まったのは2017年8月からで、危機はその数年前から起きている」と指摘。貧困化・弾圧などの人権侵害と法の支配の崩壊についての国連文書を引用しつつ、「現在の危機の主要な原因は政権による失政」と反論した。 2019年4月30日にグアイドが離反兵士らに自宅軟禁から救出されたレオポルド・ロペスとともにビデオメッセージを出し、軍に決起を呼び掛けた。これにより反マドゥロ派の軍人たちがマドゥロ政権側と衝突した。その後ベネズエラ各地で衝突が発生した。カラカスや多くの都市でマドゥロ政府軍が10時間にわたり催涙ガスなどを使用してデモを鎮圧した。マドゥロ政権側はこれをクーデターであると非難し、「クーデターは失敗に終わった」と主張している。イシカワも同年5月10日に日本記者クラブで3ヶ月ぶりとなる記者会見を開いて「民主主義を標ぼうしてきた人物が、実際は武器を取ってうそやだましで軍隊に働きかけた」「米国はベネズエラへの介入度合いを強めているが、その最後の道具であったグアイド氏は勢いを失った」とグアイドを非難した。一方アメリカ政府は「アメリカはグアイド氏を暫定大統領だと考えており、明らかにクーデターではない。グアイド氏側による勇敢な行動だ」としてグアイドの行動を支持表明した。
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