ゼロ金利政策・量的緩和・インフレ目標
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 04:19 UTC 版)
「岩田規久男」の記事における「ゼロ金利政策・量的緩和・インフレ目標」の解説
岩田は著書『デフレの経済学』において、これまでの経済学があまり想定してこなかったデフレーションという現象を一般大衆に分かりやすく説き、かような状況から日本経済を救う為には、日銀による長期国債の買い切りオペや、人々の期待に働きかけるべくインフレターゲットを設定する必要があるということを主張した[要ページ番号]。 岩田の「期待を変化させる金融政策」について、小宮隆太郎は「期待の変化が波及するルートが不明である」と指摘している。岩田の恩師であり、かつて日銀理論を鋭く批判した小宮は、『金融政策論議の争点-日銀批判とその反論』で「日銀への嫌がらせ」などとインフレターゲットや量的緩和の効果を否定しており、岩田が編著者となった『金融政策の論点―検証・ゼロ金利政策』に収録された「百鬼夜行の為替・金融政策議論を正す」の中で「私は、現在の金融政策はほぼ100点だと思う」(p.15)と述べた上、「見当はずれの日銀バッシング」の中では「不況脱出に必要なことは(中略)構造改革・規制緩和を積極的に進めること」(p.62)と主張しており、岩田の主張には批判的であり、岩田自身も小宮同様「構造改革・規制緩和を積極的に進めること」は必要であるがまずはデフレをとめることが先決と解釈している。また、小宮門下で日本銀行の審議委員を務める須田美矢子も、ヘリコプター・マネー政策はハイパーインフレーションを招き、国民は「極端な場合には物々交換をするような状態になることすらあり得ないことではありません」と述べて岩田に批判的なスタンスをとっている。 確かに、「いくら金融を緩和しても需要がないから物価は上がらずデフレ対策にはならない」といいつつ、同時に「金融を緩和するとハイパーインフレを招く」とする日本銀行の矛盾した姿勢には、日本銀行に好意的な研究者からも疑問の声が上がった。だが、岩田らの求めた非伝統的な金融緩和策に対しても疑問の声はある。その1つは、原理的には正しいとしても政策として使えるのかという点である。もし、日本銀行がいうように、日本銀行がいくら金融を緩和しても物価が上がらないとするなら、日本銀行はお札をどんどん刷ることによって世界中のありとあらゆる資産を買い漁ることができるはずだ。しかし、そんなことはあり得ない。いつかは必ずお札の価値は下落する。つまり、物価が上がるわけである。論理的に考えれば、この推論に間違いはない。だが、問題は「いつか物価が上がる」といっても、一体いつなのか、どれぐらい金融を緩和すればよいのか見通しが立たないことである。例えば、翁は、岩田ら経済学者の提案は、原理原則としては正しいとしても政策としては使えないだろうと批判している。ただしそうしたインフレを抑えるためにインフレターゲット政策がNZを始め他の国では導入されているため当該指摘について岩田自身は反論と解釈していない。また、物価が上がらないうちは日本銀行と政府を併せた広義政府部門が、通貨発行益をインフレというペナルティ無しで享受できるわけであり、財政支出を通貨発行益で賄えば将来の金利負担の恐れなく財政健全化が達成できることになり、いずれにせよ国民の利益となる政策であるから反対する理由とはならないとの再反論がなされている。実際には、通貨発行益を用いた広義政府部門の支出による超過需要がまさに物価を上昇させる経路となるため、速やかに物価が上がると予測される。 その後、安倍首相による日銀執行部の人事の大幅な入れ替えが行われ、日銀の旧体制派の理論を支持する執行部は一掃された。白川方明、日本銀行の金融政策への批判など参照。また、黒田東彦総裁による大胆な量的緩和が実行され、2013年度末にはインフレは1.3%にも達し、日銀の旧体制派の理論はほぼ否定された。海外の主要国のほとんども量的緩和を積極的に実行し、デフレを注意深く阻止しており、日銀の旧体制派の理論は国際的に見てもすでに強く否定されている。量的金融緩和政策など参照。
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