ゼロ関係代名詞
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/07 16:39 UTC 版)
日本の「学校英文法」では「目的格の関係代名詞は省略できる」と教えることが多い。一方英語学では「本来あったものが省略された」とは考えず、音声形を持たない関係代名詞―ゼロ関係代名詞―とみなすのが普通である。ゼロ関係代名詞は、古くは主格の場合に多かったが、現代英語では目的格の場合に生じることが多い。例えば次の文の that / which は read の目的語になっている。 a) The book (that / which) I read was about Italy.(私が読んだ本はイタリアについてのものだった) しかし、関係代名詞が目的格でない場合にもゼロ関係代名詞が生じることがある。以下のような構造ではゼロ関係代名詞が圧倒的に多い。 b) the man (that / who) I thought was my father.(私の父だと私が思った男)(that/who は was の主語で主格) c) I'm not half the man (that) I used to be.(僕はかつての僕の半分ですらない=僕は変わり果てた)(that は be の補語) d) This is the only thing (that) there is.(あるのはこれだけだ)(that は there is の主語) a)~d)を見ると、二つのことに気づくだろう。まず、関係代名詞の直前に先行詞がある(=関係節が外置(文末に移すこと)されたり、カンマで先行詞と隔てられたり、前に前置詞を伴ったりしていない)。次に、関係代名詞のすぐ後に関係節の主語がある(there 構文の there も、"Yes, there is." を見るとわかるように、統語的には主語[名詞句]として機能する)。 つまり、関係代名詞を「省略」できるかどうかは、関係節中での格という統語論的・意味論的概念で決まるというより、「関係代名詞のすぐあとに主語名詞句があるかどうか」という表層的な条件によると考えることができる。英語では、関係節中で主語が省略されたり S + V が倒置を起こすことはまずないので、名詞の直後に S + V が来れば、関係節の開始を知らせる関係代名詞がなくても、新たな節が始まったことがはっきりと認識できる。(これに対し、たとえばフランス語・スペイン語などのロマンス系言語の関係節では S + V が倒置されることがあり、またスペイン語などでは関係節でも主語を省略することが多いせいか、ゼロ関係代名詞は使われない。) 「関係代名詞が目的格かどうか」よりも、「関係代名詞のすぐあとに主語名詞句があるかどうか」のほうが重要であることは、次のように関係代名詞が目的格であるにもかかわらず省略できない例からもわかる。(( )はゼロ関係代名詞、*は容認不可の文を意味する) e) I met someone ( ) you probably know today. f) * I met someone ( ) probably you know today. e) でも f) でも( )に入る関係代名詞は目的格だが、その直後に主語名詞句 youがない f) ではゼロ関係詞は許されない。 以上のことから、ゼロ関係代名詞が許されるのは[先行詞 + 関係代名詞 + 関係節の主語]の3つが直接隣り合っているときということになる。 しかし、上の条件を満たしていないのにゼロ関係代名詞が生じているように見える場合がある。 g) It was you (who / that) gave me the money.(私にその金をくれたのは君だ)(who / that は gave の主語) h) There's nobody (who / that) knows I've come here.(私がここに来たのを知っている者はいない)(who / that は knows の主語) これらの文は、上の ( ) に音声形を持たない関係詞があるというよりはむしろ、共有構文(いわば二つの文の「重ね合わせ」)だと考えられる。共通の(代)名詞を接点として二つの構文が融合したものと考えることができる。 g) It was you. + You gave me the money. h) There's nobody. + Nobody knows I've come here.
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ゼロ関係代名詞
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/04/08 18:28 UTC 版)
英語で、人間でない目的語を示す関係代名詞は that または which であるが、省略しても良い。省略した場合、関係代名詞 ∅ があると見なせる。これをゼロ関係代名詞と呼ぶ。 the book that I read yesterday the book ∅ I read yesterday
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