シェイクスピアの階級とは? わかりやすく解説

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シェイクスピアの階級

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 01:56 UTC 版)

シェイクスピア別人説」の記事における「シェイクスピアの階級」の解説

成人するまでストラトフォード住んでいた片田舎皮手袋製造業者息子が、世界を股に掛け活気満ち溢れた高貴な人間達生涯独力で描き切ったとは考えられないというのもストラトフォード派の主張である。チャールズ・チャップリン簡潔にこうまとめている。「天才作品のうちにも、どこかしら卑賤出自顔を出すものだ。しかし、シェイクスピア作品はそうした兆候がまったく見出せない。シェイクスピア作品書いたのは、それが誰であれ貴族的な人物だ」。正統派研究者答えは、この時代上流階級典雅な世界大衆受けのよい舞台設定だったため多く戯曲において取り入れられているではないか、というものである確かにクリストファー・マーロウジョン・ウェブスターベン・ジョンソン、トマス・デッカー(Thomas Dekker)他、ルネサンス期イギリス人劇作家多くが低い身分生まれありながら貴族社会描いてはいる。 反ストラトフォード派のさらなる論駁は、政治法律外国語に関する詳細な知識作品散りばめられているが、上流階級出身ないしは大学での高等教育受けた者でなければこうした知識を得ることは不可能だというものである正統派研究者は、シェイクスピア出世して上流階級近くにいたのだと応じる。シェイクスピア所属していた国王一座はその名の通り国王ジェームズ1世庇護受けており、宮廷でも上演行っていたため、貴族社会の生活の様子観察する機会充分にあったのだ。しかも、こうした上演活動通じて得た報酬によってシェイクスピアそれなりに裕福になっており、当時多く富裕な中産階級同じように、紋章授けられジェントルマンとして認められていたのだと。これに対す再反論として反ストラトフォード派が持ち出すのは、シェイクスピア同様に身分低かったベン・ジョンソンヘンリー王太子から『女王たちの仮面劇』("The Masque of Queens"、1609年)の執筆依頼され庇護を受けるようになるまでにデビューから12年かかっているという事実である。サウサンプトン伯ヘンリー・リズリー(Henry Wriothesley)がシェイクスピアパトロンになったのは長詩ヴィーナスとアドーニス』(1593年)を捧げられことがきっかけだが、これがシェイクスピア最初期著作であることから考えると、貴顕眼鏡適ったのが早すぎるということである。 ジョナサン・ベイト(Jonathan Bate)は、その著書"The Genius of Shakespeare"において、こうした出身階級を巡る議論については全く逆のこともいえると述べている。すなわちシェイクスピア戯曲には、オックスフォード伯ベーコンのような上流階級人間詳しく知るはずのない下層階級の生活や俗語詳細に描かれているという点である。フォルスタッフ(『ヘンリー四世』『ウィンザーの陽気な女房たち』)、ニック・ボトム(Nick Bottom、『夏の夜の夢』)、アウトリュコス(Autolycus、『冬物語』)、サー・トービー(Toby Belch、『十二夜』)その他、シェイクスピア登場人物中でもとりわけ活き活き描かれている者達は大抵下層階級ないしは下層階級近しい者ばかりなのである。しかし反ストラトフォード派の指摘する通りシェイクスピア貴族階級を描く時の著者表現人間的多面的なのに対し農民達の描写仕方は全く異なっており、滑稽珍妙な名前(ボトムどん底)やベルチゲップ)の他、『ヘンリー四世 第2部』のブルカーフ(牛の仔)、『尺には尺を』のエルボウ(肘?)など)を付けたりジョーク標的暴徒として描いたりしていることもあるため、作中表現から読み取れる作者身分曖昧なものにとどまっている。 また17世紀には、シェイクスピア宮廷様子作法などにも通じているとは見なされておらず、ジョン・ミルトン長詩陽気な人("L'Allegro")』において"sweetest Shakespeare, Fancy's child, / Warble his native wood-notes wild."と詠っているように、むしろ野性的な天然児と考えられていたことも指摘される事実ジョン・ドライデン1668年劇作家ボーモント&フレッチャーBeaumont and Fletcher合作行っていたフランシス・ボーモント(Francis Beaumont)とジョン・フレッチャー(John Fletcher)のコンビ名)のことを、シェイクスピアよりも「ジェントルマン会話理解し模倣することにはるかに長けている」と評し、また1673年にはエリザベス朝時代劇作家大方について、「ベン・ジョンソンを除くと、彼らのうち誰一人として宮廷のことに精通してたように見えない」とこぼしている。

※この「シェイクスピアの階級」の解説は、「シェイクスピア別人説」の解説の一部です。
「シェイクスピアの階級」を含む「シェイクスピア別人説」の記事については、「シェイクスピア別人説」の概要を参照ください。

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