サウサンプトン大学における開発と飛行
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「SUMPAC」の記事における「サウサンプトン大学における開発と飛行」の解説
SUMPACのプロジェクトチームはアンネ・マースデン(Anne Marsden)、アラン・ラッシャー(Alan Lassiere)、デイビッド・ウィリアムズ(David Williams)を中心としたサウサンプトン大学の学生で構成されており、大部分が航空宇宙工学専攻の大学院生であった。1960年春に後にSUMPACとなる人力飛行機開発が着想された。設計は1960年7月に開始され、同年9月末までにはプロジェクト設計を完了、クレーマー賞の管理団体であるイギリス王立航空協会(英語版)(Royal Aeronautical Society/RAeS)への報告を実施し、プロジェクトへの経済的援助に応募した。また、同時期に専攻長であったE. J. リチャードの協力と承認を得ることに成功し、より詳細な設計と計画が開始された。もっともリチャード自身にはこのプロジェクトが成功するという確信はなかった。 設計は、まずパイロットが供給可能な出力についての調査から始まった。最終的に自転車と同様にペダルを漕ぐことで力を発生させ、コクピットには背もたれ付きの椅子に半ば寝そべって漕ぐリカンベント型の構造が採用された。これはパイロットに求められる動力の供給と操縦に必要な両手の自由を両立するためであった。開発中にはリチャードの協力により主翼、プロペラ、機体の模型に対して風洞実験が行われ、性能確認が行われた。 製作は1961年1月からサウサンプトン大学のジョージ・エドワーズ卿構造振動研究所で開始された。1961年3月16日には、RAeSの審査を通過した2チームのうちの1チームとして補助金1500ポンドが提供された。この資金援助がなければ進捗の遅延は免れなかったとされる。SUMPACは1961年9月初頭に完成した。 機体完成後の1961年9月初旬から、ラシャム飛行場でSUMPACの試験が開始された。ラシャム飛行場での試験では同飛行場を拠点とするラシャム・グライダーセンターがこのプロジェクトに協力した。その一環としてグライダーのチーフフライトインストラクターであったデレク・ピジョットがSUMPACのテストパイロットを務めることとなった。 その後の2ヶ月間で地上試験と機体の改良が行われた。1961年11月9日、ピジョットの搭乗でパイロットの力のみによる離陸が試みられた。2度目の挑戦で高さ3フィート(約91.5cm)程度のジャンプに成功し、続く3回目の挑戦で飛距離46m、高さ5フィート(約1.5m)の飛行に成功した。 ピジョットによる試験飛行により、SUMPACの飛行特性が明らかになった。SUMPACはパイロットが制御できない激しい揺れの後に接地し、グラウンドループを頻発した。グライダー教官であったピジョットを以ってしてもSUMPACの着陸は「まったく手に負えない("quite a handful")」代物だった。一方で、離陸時に必要な出力を供給することについては、元々トレーニングをしておらず、アスリートでなかったピジョットであっても容易だった。プロジェクトチームはクレーマー賞に向けたパイロットとして、オリンピックへの出場経験を持つ長距離走者のマーティン・ハイマン(Martin Hyman)を採用し、グライダーによる訓練を始めていたが、特に初期の試験飛行においては体力や筋力よりも飛行技術や飛行経験がはるかに重要であることが示された。ハイマンによる飛行は1962年の夏以降に予定されることとなった。 また、この時期には既に垂直尾翼の面積不足、車輪のパンク、高出力時の動力伝達ベルトの滑り、プロペラの推力不足といった多くの問題が明らかとなっていた。SUMPACは改良のために再製作され、並行してピジョットもトレーニングを積み、体力の増強に努めた。その結果、1961年11月25日には滞空時間30秒(902フィート(約275m)相当)を記録した。 その後もSUMPACには考えられる限りの改良が施された。ピジョットもトレーニングによって体力を増強し、平均的な肉体を鍛えている健康な男性と同程度まで出力を向上させた。1962年下旬には飛距離2,040フィート(約622m)、高さ12フィート(約3.65m)の飛行に成功した。 SUMPACは初飛行からの1年間で計40回の試験飛行に供された。テストパイロットは主にピジョットが担当したが、設計担当のウィリアムズもテストパイロットとして何度かの試験飛行を行った。また終盤には補助動力を用いた飛行が行われ、80°の旋回にも成功した。
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