コンサートセッション
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/28 02:50 UTC 版)
「サジェストペディア」の記事における「コンサートセッション」の解説
外観上きわめて特徴的なのは、集中コースで3、4日に一回、その日の最後に行われる「コンサートセッション」と呼ばれる時間である。コンサートセッションの目的は、翌日以降分の教授内容に現れる語彙とその逐語訳、文法をすべて前日までに一度学習者に披瀝して(記憶させて)、コミュニケーションを実現するための材料を学習者の周辺意識に蓄積することにある。一回のセッションで与えられる情報量は非常に多く、音読によって一度披瀝するだけでも長い時間(アクティブとパッシブ合わせておよそ90分)を費やす。現在のバージョンでは、初級第一回目のコンサートセッションでおよそ850語の新出語彙が学習者に披瀝される。 実験の初期段階では単語とその訳語のリストを学生に渡し、教師はこれを読み上げるだけだったが、現在のバージョンでは、下線を引いた新出語彙に訳語が与えられた、物語性のある会話形式のテキスト全文を読み上げる。 テキストが読まれている間、学習者を睡魔から救い、逆に精神を活発な状態に保っておくために、バックグラウンドに古典派後期からロマン派の、交響曲や協奏曲といったダイナミックなクラシック音楽を流す。教師は音楽のリズムと抑揚に身を任せたような独特のイントネーションでテキストを読み上げる。また、セッションに変化をつけるため、しばしば音楽の流れを無視して学習者に復唱をうながすこともある。このセッションを、サジェストペディアでは「アクティブセッション(動画)」と呼ぶ。アクティブセッションは通常40分から60分をかけて行う。アクティブセッションの直後には学習者の高揚した精神状態を通常レベルに戻すことを目的に、二度目のセッションを続けて行う。二度目のセッションでは音楽のダイナミズムを下げ、たとえばバロック期の合奏協奏曲などをバックグラウンドにして、普通のイントネーションとスピードでテキストを読み上げる。これをサジェストペディアでは「パッシブセッション(動画)」と呼ぶ。パッシブセッションは通常30分程度をかけてアクティブセッションで読んだものと同じものを読む。どちらのセッションにおいても催眠状態を誘発する単調さに陥らないよう配慮される。 周辺意識を対象としたセッションなので、コンサートセッションの間、学習者は基本的にどのように過ごしても構わないとされる。開いたテキスト(訳語付)のページを目で追いながら教師の声に集中してもいいし、逆にバックグラウンドの音楽に聞き入ってしまっても構わない。いずれにしても、読まれたものはすべて情報として脳に入って周辺意識に記憶される。ただし、アクティブセッションの間は、音声情報、文字情報、逐語訳の情報をすべて脳にとりこむために、学習者はできるだけ教科書の読まれている文字列を目で追うようにうながされる。パッシブセッションの時には教科書を閉じたり目を閉じたりしても構わない。 ちなみに、「コンサートセッション時に学習者がリクライニングシートに横になる」という説が1980年代のロザノフ軟禁中に流布したことがあるが、実際のサジェストペディアクラスで身体を横たえることができるような椅子を使用するということはない。このような椅子では学習者が睡魔に勝てず、精神を活発に保っておくことができないからである。ただし、学習者はアクティブ、パッシブ合わせて90分近いコンサートセッションの間同じ椅子に座っていることになるため、少なくとも快適に座っていられる椅子であることは望ましいとされる。 初級語学コースのコンサートセッションに使用される音楽は、音楽リストとしてロザノフの著作(Lozanov 2009 p.154)の中で公開されている。いずれも、1)長調を基本的な調とし、2)やや長い導入部と 3)メロディー、リズム共に色彩感豊かな内容を持った 4)比較的有名な作曲家によって書かれた「クラシック音楽」という特徴を持つ。現代的な音楽はこのリストの中にはない。 サジェストペディアでは、このコンサートセッションを、教科項目の導入と定着の間に挟んで行う。集中コースでは、初日は導入とコンサートセッションだけで終わり、翌日からは、1)定着のための活動(ゲーム、歌、本読み、創作など)を3〜5日かけて行い、その後、必要に応じて、2)次課の導入、次いで、3)次の課のコンサートセッションへと続く。コンサートセッションを一日の最後に置くのは、頭を休ませるとともに、翌朝まで時間を取って情報の長期記憶化を補助するのが目的であると説明される。
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