ガラパゴス化の傾向
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/28 09:42 UTC 版)
十分に大きく単独で成立する、特異性の強い市場の存在が前提となる。この市場内で成功する戦略として、ローカルなニーズに基づいた独自進化の推進が考えられ、特化した高水準の製品やサービスが誕生する。一方でこれとは逆に、より多くの市場のニーズを同時に必要十分満たすという戦略も成り立つ。世界的に無視できないシェアを得れば、事実上の標準となる可能性が出てくる。 このとき、高水準の少数派は低水準の多数派に対し、規格争いで不利となる。日本に限らず、各国独自のレギュレーション(法律・規格・法規など)を背景に消費者のニーズが生まれている例も多く、日本においては発泡酒や第三のビール、アルコール分(度数)が39%以下の国産オリジナルウイスキー(ハイニッカ・サントリーレッド・エクストラを除くトリスウイスキーシリース、ブラックニッカクリア等)、小型自動車(サイズL4.7xW1.7m・排気量2L以下(ガソリンのみ)のいわゆる4/5ナンバー車)、軽自動車などがある。しかし、国際規格(デジュリスタンダード)は、日本独自のニーズとは別に存在しており、規制回避に特化した技術には競争力がない。ただしその一方で、国内規格の自動車が輸出または現地生産されているように、商品そのものに競争力があれば問題はない。 全体の傾向としては、日本独自(あるいは一社だけの)の規格を採用したり、日本(人)固有(日本語や日本文化、日本の環境・レギュレーションなど)のニーズに基づいて商品を開発したりすることで日本の消費者を囲い込む。1億人強しかいない日本市場での消費者を取り込んでいるという状況にあるので、顧客一人あたりの単価を上げることが追求され、高性能・多機能・高価格化が起こる。日本国外からの参入が阻まれ、一定の利益は上がるが、同じ商品で世界市場に参入することは困難な状況に陥る。その一方で、世界市場で営業を展開するグローバル商品は、万人受けを目指した結果国内市場の独特のニーズを満たさないうえ、サポート体制が脆弱なために日本国内での競争力がない。しかし時間が経過すると日本の製品は日本市場に封じ込められ、ニッチ的な高機能・高コスト化を強いられるなか、海外製品は世界市場での切磋琢磨と生産力の増強から最終的に国内製品の機能を代替できるものとなり、グローバルモデルが(全部ではないにしても一定数の)日本人の要求も満たすようになってくる。このタイミングでグローバルモデルのサポート体制が日本国内でも整えられると「安くて高性能、日本語にも対応」の海外製のグローバルモデルが一気に流入し、それに太刀打ちできない日本独自仕様製品の敗北という結末に結びつく。 コンテンツ分野におけるガラパゴス化については、かつての浮世絵のように日本市場の中で培われた独特の表現が魅力になることもあり、その典型例が漫画、アニメ、テレビゲーム、特撮などである。こうしたものは日本人にすら理解しがたい「内輪受け」的な記号に満ちており、ある種「ガラパゴス化」の極北だが、こうした作品が世界各国に輸出されファンを得たことで、海外のオタクが生まれている。任天堂DSやWii、ニンテンドースイッチのように国際的な「デファクト」として成功しうるのであれば、国内独自規格であることが必ずしもただちに不利ではないという主張もある。ガラパゴス化という語を肯定的に使う内田樹や五木寛之のような文化人もいる。
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