オーディオ機器のDAC
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/20 09:02 UTC 版)
「デジタル-アナログ変換回路」の記事における「オーディオ機器のDAC」の解説
CDプレーヤーやSACDプレーヤー、PC等のデジタル機器内部でDA変換を行うと、その回路自体から発生したノイズが出力音声に乗りやすいと考えてDA変換を別体のコンポーネントに担当させる場合がある。この機器をその機能からDAC、外部DACと通称する。機器からDACへの信号の転送にはUSBやS/PDIFが多く用いられる。高級機では信号のジッタ(時間軸のわずかな揺れ)の影響を排するためにIEEE 1394で接続したり、さらなる高精度を用いる場合にはS/PDIF同軸ケーブルで接続された機器同士で、クロックを同期させる機構を併用したり外部クロックジェネレータを利用する場合もある。なお、内部のDACを用いずに専らデジタルデータの送出のみに利用されるプレーヤーはトランスポートと呼ばれる。高品位な再生を目指し、オーディオシステムの技術開発はサンプリングレートを高く、ビット数を高く、アナログ段を短くするように進められている。2010年以降は1個当たりのコストが安く、消費電力が低く、マルチビット型よりも変換誤差が少ないため、普及価格帯の製品に搭載されるDACはデルタシグマ型1bitDACがほぼ全てを占めている。また、抵抗の熱雑音や不確定性原理による測定限界によりDACのS/N比の向上が限界に達している。例えば、2000年前後から民生品においても普及し始めた24bitDACの場合、量子化ビット数から計算されるアナログ信号のS/N比は144dBとなるが、現実には最上位機種であっても120dB程度である。その限界を乗り越えるために、N個のDACの出力信号を加算した場合、音声信号成分の振幅はN倍、ノイズ成分の振幅は√N倍となり、S/N比が改善される事に着目し、高級機ではマルチDACの構成を採用することがある。但し、S/N比は対数で定義されるため、DAC2個の出力の加算によるS/N比の改善は数dB程度であり、さらに加算する個数を増やしても1個毎のS/N比の改善幅は小さくなる。そのため、回路構成が複雑になり、実装面積が大きくなることを考慮すると、この手法の費用対効果は低くならざるを得ない。(そのため、高価格で販売される高級機においてのみ採用される)アナログ信号は一旦ノイズの混入や周囲へのエネルギーの放射等により減衰すると二度と復元できないため、システム中のDACの位置を後段に移しアナログ段を短くするための研究も進められている。その研究と技術開発の成果として、2010年代に入りデジタルスピーカーが実用化されている。こちらは入力されたデジタル信号をスピーカーのボイスコイルで音声に変換する。従って、デジタル信号をシステムの最終段で直接音声に変換することにより、アナログ信号が電気回路を通ることが無くなり、抵抗の熱雑音の問題を解決できる。また、スピーカーの伝達関数が判っていれば、DSPによる音声へのインパルス応答の畳み込みによりスピーカーの歪みまでもが補正可能となる。そのため、デジタルスピーカーでは入力されるデジタル信号を非常に高精度に音声に変換することができる。このシステムにおいて従来のICチップ型のDACは必要としない。
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