イスラム主義と女性、身体、欲望
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/25 01:45 UTC 版)
「カメル・ダウド」の記事における「イスラム主義と女性、身体、欲望」の解説
2014年のガザ侵攻における「パレスチナとの連帯」の呼びかけに対して、「イスラムとユダヤ人に対する憎しみのための宗教的・民族主義的操作による選択的連帯」には反対する、「イスラエルのガザ侵攻は忌まわしい犯罪だが、連帯もまたパレスチナ人の寝首を掻く行為」である、なぜならば、「パレスチナをアラブ・イスラムのために利用し、欺いているからである」と主張した。2014年12月、アルジェリア内戦時代にイスラム救済軍(フランス語版)(イスラム救済戦線(フランス語版)の軍隊)の指導者であり、現在、非合法政党「イスラム主義サフワ(覚醒)戦線」の党首であるサラフィー主義の指導者(イマーム)アブドルファッターフ・ハーマダシュが、ダウドは「コーランとイスラム教を疑い、イスラム教徒を傷つけ、西欧とシオニストを称え、アラビア語を貶めた」、「神とその預言者、その書、イスラム教徒およびその国に対する戦争」を仕掛けたとし、アルジェリア政権に死刑判決を求めた。原因は、ダウドがフランス2の番組で「いわゆるアラブ世界における神の問題に決着を付けなければ、人間の復権はあり得ない。先に進むことができない」と発言したことである。2016年3月8日、オラン軽罪裁判所(フランス語版)はハーマダシュに対し、死の脅迫を理由に、禁錮6か月(うち実刑3か月)および罰金5千ディナール(450ユーロ)の判決を言い渡した。 2015年の大晦日から新年にかけてケルンで発生した暴行事件(ケルン大晦日集団性暴行事件)では、「北アフリカやアラブ諸国では、公共交通機関の中などで、男性が女性の身体を触る性犯罪は、日常茶飯事だ。ケルンで起きたのは、アラブ世界で毎日起きていることが、場所を変えて起きたにすぎない」などの指摘があり、これまで「イスラム教徒に対して反感を抱いている」(イスラムフォビア)と左派勢力から批判されることを恐れていた人々からもあらためて「文明の衝突」を指摘する声があがった。ダウドはこれまで、「欧州に保護を求める人々(難民・移民)は、欧州の価値観を高く評価するようになる可能性が大きい」と示唆していたが、この事件について『ル・モンド』紙上で、アラブ・イスラム世界における「女性、身体、欲望との病んだ関係」を指摘し、一部の左派の知識人からイスラムフォビアであるとの激しい批判にさらされることになった。彼はこれに対して『ル・ポワン』、『ニューヨーク・タイムズ』、『コティディアン・ドラン』などの紙上で反論し、「カメル・ダウド事件」と呼ばれる論争に発展した。同じアルジェリア人作家のブアレム・サンサルは、この事件が「あらゆるテロリストの過激化に歯止めをかける」ことになることを期待するとして、「自由、正義、真実」のためにダウドを全面的に支持し、パルカル・ブリュックネールは『ル・モンド』紙に「イスラム世界出身の自由思想家を知識人のファトワーから守ろう」と題する記事を掲載した。セネガルの若手作家モハメド・ムブーガル・サールは、ダウドを猛攻撃する「大学人の傲慢さ」を指摘し、政治学者・随筆家のローラン・ブーヴェ(フランス語版)は、ダウドに対する「イスラムフォビア容疑の裁判」は「スターリン時代を想起させる」と「イスラム主義に媚びる」左派の知識人を非難した。ダウドは、実際、この件に限らず、アラブ・イスラム世界における「女性、身体、欲望」の抑圧について繰り返し語り、この原因は、イスラム主義者が「生」を否定することにあるとしている。 2018年刊行の『女をむさぼり食う画家』は、パリのピカソ美術館を訪れたのを機に、東洋と西洋がそれぞれ女性の身体をどのように支配したかについて考察した、独自の美術評論である。 なお、アルジェリアの若者の性については、『ル・モンド・ディプロマティーク』日本語版の「アルジェリアの悲しき若者たち ― セックスと嘘とインシャッラー」に詳しい。
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