アキュトロン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/22 07:11 UTC 版)
詳細は「音叉時計」、「de:Stimmgabeluhr」、および「it:Orologio_a_diapason」を参照 360Hzの音叉を時間制御に使用する音叉式の腕時計である。スイスのバーゼル出身で、1948年にビエンヌのブローバに入社したドイツ系の物理学者・発明家マックス・ヘッツェル(イタリア語版)(1921年4月5日-2004年9月12日)によって1950年から開発が進められ、1960年に市販化された。この時計以降、ブローバのロゴは音叉に変更された(2020年まで→下記参照)。 音叉に電磁石で一定サイクルの振動を発生させ、音叉そのものの振動をラッチ利用で時針の駆動に用いるシステムである。機械時計の脱進機に相当するφ2mmのインデックス車に320枚の歯を切るなど非常に精密な加工を施し、誤差2秒/日という、当時としては驚異的な高精度を実現したことで技術的に世界の時計業界をリードした。音叉に由来する独特の駆動音が特徴である。 初期型キャリバーはCal.214で、他にCal.218、Cal.219がある。 アメリカ航空宇宙局の公式腕時計の納入においてオメガのスピードマスターと争い、結果的に腕時計は採用されなかったが、当初は無重力下でゼンマイとテンプの振動に依存する従来の機械式時計がどのように動くかわからなかったため、エクスプローラー計画の搭載時計や、宇宙船のパネルクロックは全て音叉式で重力に影響されにくいブローバ製となり、また最初の月着陸を成し遂げたアポロ11号により静かの海に設置された。後にオメガのスピードマスターにもブローバのメカニズムを採用する機種「スピードソニック」が発売されている。 1971年にはレディース用も発売され、1977年製造中止されるまでに4000万個以上を販売した。 しかしながら利益を独占するため、音叉機構のパテントを積極的に公開しなかったことがセイコーなどの競合メーカーを水晶発振式時計の開発に向かせることになり、音叉時計の技術を単独で開発しなければならない状況に陥ったことで小型化、省電力化、精度向上等技術革新が進まず、このことが結果として音叉式ムーブメントの衰退を招いた。 時計修理の現場では、ブローバの音叉時計は構造が余りにも精緻に過ぎ、修理・調整が大変に難しかった事から時計修理技能士の間でも手間のかかる難物と認識され、初期のクォーツ式時計の倍以上という高額さも相まって、市場に普及はしなかったとされている。 日本国内のメーカーではシチズンが共同でブローバシチズン(現シチズン電子)を設立し、音叉式時計ハイソニックを製造、販売した。ハイソニックの内部構造はアキュトロンに酷似している。 電池はこの頃一般的であった1.35Vの水銀電池を使用しており、2010年現在標準的になっている1.55Vの酸化銀電池では正しく動作しないため、維持するには本体を改造するか、アキュセル1に代表される降圧アダプタを併用する必要がある。 2010年に音叉式ムーブメント発表50周年記念として当時のムーブメントを完全に復刻したスケルトンタイプのスペースビューが1000個限定品として発売された。 2020年、発売60周年を機にアキュトロンはブランドとして独立することとなり(音叉のロゴも継承した)、オリジナルのデザインを取り入れた「アキュトロン スペースビュー 2020」(世界300本限定)と、デザインをアップデートした「アキュトロン DNA」(共にクオーツ駆動)が発売開始された。これらは二つの静電誘導発電タービンにより腕の振動を利用して発電し、静電誘導モーターで針を動かす。精度は月差±5秒となっている。
※この「アキュトロン」の解説は、「ブローバ」の解説の一部です。
「アキュトロン」を含む「ブローバ」の記事については、「ブローバ」の概要を参照ください。
- アキュトロンのページへのリンク