「クルセーダー作戦」で追い込まれる
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「エルヴィン・ロンメル」の記事における「「クルセーダー作戦」で追い込まれる」の解説
詳細は「クルセーダー作戦」を参照 その後、ロンメルは自軍の補給状態を改善するため、英軍から物資を鹵獲しようと1941年9月14日から15日にかけて「ゾンマーナハツトラウム作戦(真夏の夜の夢作戦)」を行い、エジプト領へ侵攻したが、英空軍の空襲を受けて戦車が打撃を受けたため、作戦はすぐに中止され、物資もほとんど鹵獲できなかった。いくつかの英軍の軍事文書を入手したが、それらに攻勢に関する記述がなかったため、ロンメルは英軍は当面攻勢に出る気はないと誤認した。 イギリスはクルセーダー作戦の前にロンメルの誘拐・暗殺を計画したフリッパー作戦を実行するも失敗に終わっている。 しかし英軍は攻勢の準備を進めていた。英軍司令官オーキンレック大将は「ブレヴィティ作戦」と「バトルアクス作戦」の失敗を踏まえて地中海沿岸の狭い地域からではなく、内陸部の砂漠からキレナイカに侵攻する決意をしていた。11月18日午前に土砂降りの雨の中、英軍は「クルセーダー作戦(十字軍作戦)」を開始した。この日ロンメルはローマから司令部に戻ったばかりで午後になって初めて英軍の攻勢を知った。また攻勢を知らされても初めは本格的な攻勢ではあるまいと思っていたという。 アラン・カニンガム(en)中将率いる英軍第8軍の第30軍団(第4機甲旅団、第7機甲旅団、第22機甲旅団)が内陸部砂漠からトブルク目指して進軍を開始した。英第13軍団は囮としてエジプト国境のドイツ軍部隊と対峙した。英第4機甲旅団と英第22機甲旅団の進軍は伊アリエテ師団と独第21装甲師団が阻止したが、英第7機甲旅団は阻止する部隊が進路上に無く、19日までにトブルク包囲のため伊第21軍団や独第90軽師団が展開するシディ・レゼグまで一気に進軍されてしまった。トブルク守備隊も前進を開始し、独伊軍は挟み撃ちにあってしまった。独第15装甲師団と独第21装甲師団をこの戦域に応援に駆け付けさせたが、英第4機甲旅団と英第22機甲旅団もこの戦域に増援に駆け付け、シディ・レゼグ南方で英独の激しい戦車戦が展開された。しかし英第7機甲旅団は戦力を二つに裂くという愚を犯し、ドイツ軍の対戦車砲の格好の餌食となり、141両の戦車のうち113両を撃破されるという壊滅的打撃をこうむった。また「アリエテ師団」がシディ・レゼグに到着したことでシディ・レゼグの戦いの形勢はドイツ軍側に傾いた。 ドイツ軍の戦力は常に英軍より圧倒的に貧弱であったので、防御だけに徹していればやがてやられてしまうと判断したロンメルはここでまた敵の背後に浸透して攻勢に転じ、それによって敵に攻勢を諦めさせる方針を取ることにした。独第15装甲師団と独第21装甲師団がガブル・サレーから英第13軍団が展開するエジプト領へ突入した。しかしオーキンレックはウェーヴェルの二の舞にはならなかった。ドイツ軍のエジプト突入に恐れをなしてトブルクへの攻勢を中止すべきと提案したカニンガム中将を第8軍司令官から解任し、自らの参謀長で44歳の最年少イギリス将官であるニール・リッチー少将を第8軍司令官に任じ、攻勢の続行を命じた。 英軍が予想通りに動いてくれず、戦局はロンメルとオーキンレックの「我慢比べ」となり始めたが、補給状況や兵力配置から考えて独第21装甲師団の方が先に壊滅する可能性が高かった。ロンメルが前線視察で不在の間、ロンメルの作戦主任参謀ジークフリート・ヴェストフェル中佐(de)が独断で独第21装甲師団の撤収を命令した。はじめロンメルはこれに激怒したが、司令部に戻って再検討した結果、ヴェストフェルの判断は正しいと判断して攻勢中止を決意した。 12月4日にトブルク包囲を解き、ガザラへ撤退。さらに12月26日にはアジェダビアまで後退。さらに12月31日にはエル・アゲイラまで後退した。再びキレナイカ地方は英軍の手に落ちた。ハルファヤ峠を勇敢に死守していたヴィルヘルム・バッハ少佐以下守備隊は英軍への投降を余儀なくされた。 だが独伊軍に以前ほどの悲壮感はなかった。英軍は何の戦略もなく単に物量差で強引に押しただけであり、しかも受けた損害は両軍痛み分けという感じだった。独伊軍は戦車300両を失ったが、英軍も270両以上失っていた。また独伊軍は3万8000人の将兵を失っているが、その大部分はイタリア兵であり行方不明者だった(イタリア逃亡兵が多いと思われる)。一方英軍は1万8000人の将兵を失っているが、その大部分は戦死だった。そのため独伊軍の将兵は戦略次第で巻き返しは十分可能と考えていた。そして実際に独伊軍は今一度キレナイカ地方を奪還してエジプト領に攻め込むことになる。
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