戦域
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/31 03:52 UTC 版)
戦域(せんいき、英語: theater / theatre)とは、重要な軍事的事象が発生したり、進行したりしている領域のことである[1][2]。戦域には、戦争作戦に関与している、または関与する可能性のある空域・陸地・海域全体を含みうる[3]。
戦時における戦域
カール・フォン・クラウゼヴィッツは、著書『戦争論』において、Kriegstheaterという用語(17世紀の古いラテン語のtheatrum belliを翻訳したもの)を次のように定義している。
戦争が展開する空間のうち、その境界線が防護されており、一種の独立性を有する区域を言い表したものである。この防護は、要塞であることもあれば、天然の要害であることもあり、或いはその戦争に属する他の戦場から遠く隔っているという状態自体の場合もある。単なる全体の一部ではなくて、それ自体ひとつの小さな全体なのである。その結果、他の戦場で生じた変化は、直接的な影響を与えることはなく、間接的な程度のものとなる。その概念を適当に述べようとすると、彼我の一方の軍は前進して他方は後退する、また一方は攻勢に出て他方は守勢を取る、というように仮定される。しかし、このように明確に定義された概念は、普遍的な適用ができないので、ここでは単に区別線を示すために使用されている[4]。
作戦領域
作戦領域(英語: Theater of operations、TO)[5]とは、戦域の下位区分である。 作戦領域の境界は、戦域内の戦闘活動を調整・サポートする司令官によって定められる。
作戦領域は、戦時であるか平時であるかに応じて、戦略的指揮や軍管区などに区分される。米軍は、特定の軍事作戦領域に割り当てられた統合軍(地域)に分割され、戦略的指揮に基づいてタスクフォース・野戦部隊・戦闘群が組織される。
一般的に戦略的な指揮または指示は、多くの戦術的な軍事編成または作戦指揮を組み合わせてなされる。現代の軍隊では、戦略軍(英語: strategic command)は、戦闘団(英語: group)の組み合わせなどである戦闘部隊(英語: combat command)としてより知られている。
ソビエトとロシアの軍隊
ソビエト軍とロシア軍は、大陸の地理的領域とその境界の海域、島、隣接する海岸[6] 、空域など、大きな地理的区画を戦域として分類している。「戦域」を表すロシア語は、театр военных действий (ТВД )である。
大陸・海洋地域の分割は、戦略軍団の作戦計画立案にあたっての境界を定め、第二次世界大戦における第1ウクライナ戦線や北部戦線のように、特定の重要な"戦略的方向"、すなわち従来戦場に応じて命名された"戦線"(фронт、方面軍)の軍事行動を可能にするのである。
戦略的指揮の緊急性が低下した平時において、"戦線"は割り当てられた作戦セクションを担当する軍管区に改められた。
アメリカ合衆国
「作戦領域」という用語は、アメリカ陸軍野戦教本では、軍事作戦に付随する行政活動に必要な領域を含む、侵略または防御される陸海域として定義されていた(チャート12)。第一次世界大戦の経験を踏まえて、継続的な作戦が行われる大規模な陸地と考えられており、主に2つの区域、すなわち戦闘ゾーン(戦闘が活発に行われる区域)と連絡ゾーン(戦域の管理に必要な区域)に分割されていた。軍隊が前進するにつれて、これらの区域も新たな支配地域に進出していく[7]。
関連項目
- 戦場 en:Battlespace
- 作戦地帯
- 戦線
- 統制の所在 (軍事)
- 統合軍 (アメリカ軍)
- 戦区
- ヨーロッパ作戦戦域
- 西部戦線 (南北戦争)
- 戦域弾道ミサイル
脚注
- ^ “Definition of theatre noun (MILITARY) from Cambridge Dictionary Online: Free English Dictionary and Thesaurus”. Dictionary.cambridge.org. 2011年8月31日閲覧。
- ^ “Theater (warfare) – definition of Theater (warfare) by the Free Online Dictionary, Thesaurus and Encyclopedia”. Thefreedictionary.com. 2011年8月31日閲覧。
- ^ “theatre of war, theatres of war- WordWeb dictionary definition”. www.wordwebonline.com. 2021年2月26日閲覧。
- ^ Carl von Clausewitz (1956). On War. Jazzybee Verlag. p. 162 2020年5月16日閲覧。
- ^ 中村好寿 (2012年3月). “管轄地域(AOR)/ 戦域(TW)/作戦領域(TO)/ 作戦地域(AO)”. imidas - イミダス. 時事用語事典. 集英社. 2021年5月7日閲覧。
- ^ See: (ロシア語) Voennyj entsiklopedicheskij slovarj (BES) [Military encyclopedic dictionary]. Moscow: Военное издательство (ВИ). (1984). p. 732
- ^ “Chapter VII: Prewar Army Doctrine for Theater”. History.amedd.army.mil. 2011年8月31日閲覧。
戦域
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 14:49 UTC 版)
第二次世界大戦の戦域は、ヨーロッパ・北アフリカ・西アジアの一帯(欧州戦線)と、東アジア・東南アジアと太平洋・北アメリカ・オセアニア・インド洋・東南アフリカ全域の一帯(太平洋戦線)に大別される。 欧州戦線ではドイツ、イタリアなどを中心にイギリス、フランス、ソ連、アメリカなどとの戦いが、太平洋戦線では日本などを中心にイギリス、アメリカ、中華民国、オランダ、オーストラリア、ニュージーランドなどとの戦いが繰り広げられた。 欧州戦線はドイツやイタリアを中心とした枢軸国とイギリス、フランス、オランダ、ベルギー、カナダ、アメリカ、ブラジルなどが戦った西部戦線および北アフリカ戦線と、同じくドイツやイタリアを中心とした枢軸国とソ連が戦った東部戦線(独ソ戦)に分けられる。 太平洋戦線は連合国により太平洋戦争と呼称され(日本側の呼称は「大東亜戦争」)、日本とイギリス、オーストラリア、アメリカ、ニュージーランドなどが太平洋の島々とアラスカやハワイを含むアメリカやその領土のフィリピン、カナダなどで戦った太平洋戦域、オランダ領東インドやイギリス領マラヤ、フランス領インドシナなどで日本とオランダ、イギリス、アメリカ、フランスなどが戦った南西太平洋戦域(英語版)、イギリス領ビルマやイギリス領インド帝国、イギリス領セイロンやフランス領東アフリカで日本がイギリスやオーストラリア、ニュージーランドなどと戦った東南アジア戦域(英語版)、そして中国大陸などで日本や満州国が中華民国とアメリカ、イギリスなどと戦った日中戦争に分けられる。 しかし、これら以外に中東や南米、中米、カリブ海、アリューシャン列島、アラスカなどでも枢軸国と連合軍の戦闘が行われ、文字通り世界的規模の戦争であった。戦争は完全な総力戦となり、主要参戦国では戦争遂行のため人的、物的資源の全面的な動員、投入が行われた。当時の独立国のほとんどである世界61か国が参戦し、総計で約1億1000万人が軍隊に動員され、主要参戦国の戦費は総額1兆ドルを超える膨大な額に達した。
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