タコ 文化

タコ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/13 15:40 UTC 版)

文化

タコが描かれた前期ミノア文明土器
クレタ島イラクリオンにて紀元前1500年の地層より出土。ギリシャ、アテネ国立考古学博物館所蔵。

日本ではその形態、生態がきわめて特徴的でユーモラスでもあり、また、茹でると真っ赤になるなどといった性質から、漫画・映画・テレビ番組などでキャラクター化されることが多い(茹でたあとの赤色で表現されることがほとんど。しばしば、胴体を頭部になぞらえ、目や突き出た口を持ち、足は極端に短く、額に当たる部分に鉢巻を巻いた姿で描かれる)。足の数である八が縁起がよいとされ、「多幸」との字を当てて縁起物としても扱われた。単純に馬鹿にする言葉としても「タコ」という呼称が使われ、転じて、馬鹿初心者、ハゲを指して「タコ」という表現もあちこちで見られる。同じ墨を吐く動物として、イカと対比されることが多い。

先述(#ヨーロッパ)のとおり、地中海沿岸諸国では古来、タコは食用であり、身近な存在であった。しかし、ヨーロッパ中北部では「悪魔の魚」とも呼ばれ、忌み嫌われてきた。タコは潜水夫を丸飲みにするともいわれる[誰によって?]。イラストに描かれる際も、足を強調してグロテスクに描かれ、紫色に塗られることが多い。

神話・伝承

滑川の大蛸(三代広重作「大日本物産図会」から)
日本
  • 蛸神社(たこじんじゃ) :明浜の蛸神社。愛媛県西予市明浜町にある。cf. 明浜町#文化
  • 衣蛸(ころもだこ) :京都府に伝わる蛸の妖怪。大蛸に変化して舟を海中に引きずり込むとして恐れられる。
  • ヤザイモン蛸(やざいもんだこ) :香川県に伝わる大蛸の。八左兵門という男が昼寝している大蛸の足を1日1本ずつ足を切って持って帰っていた。あと1本というときに、大蛸が八左兵門を海に引き込んだという[48]
  • 蛸地蔵(たこじぞう) :天性寺大阪府岸和田市にあり、岸和田城落城の危機に、大蛸に乗った地蔵の化身が城を救ったという伝説がある。又、南海本線蛸地蔵駅の由来にもなっている。
  • 蛸薬師(たこやくし) :永福寺京都市中京区に所在。僧が病の母を思って、母の好物のタコを戒律を破ってまで買ってきたところ、そのタコが池に飛び込んで光明を放ち、病がたちまち快癒したとの伝承があり、この異名で知られる。蛸薬師通の由来にもなった。
  • タコは芋が好物で、海から上がってイモ畑のイモを盗むという俗説があった。
  • アイヌの伝承にはラートシカムイと呼ばれる巨大な蛸が登場する。
日本以外

言語

故事成語
  • 土用の蛸は親にも食わすな
  • 麦わらダコ(蛸)に祭りハモ
タコのつく言葉
  • 蛸壺
  • ひっぱりだこ - 人気のある人物や物が多くの人に求められる状態を言う日本語。また、近世以前は、磔刑およびその受刑者を意味する比喩表現であった。「引っ張り蛸」とも「引っ張り」とも記すが、語源は、タコの乾物を作る際に足を四方八方に広げて干す、その形に由来しており、したがって、前者が本来の用法と言える。
  • 蛸入道(たこにゅうどう) - 【仏教関連用語、ほか】 仏教における入道者に対して、強いからかいの意を持って用いられる蔑称頭髪を剃り上げた坊主頭がタコの胴と似ていることから呼ばれる。転じて、ファッションとしてのスキンヘッドや、薄毛の人に対しても言う。これらは事実上、男性に対してのみ用いられる。また、動物のタコを愛称的含みを持ってそのように呼ぶこともある。
  • 蛸、たこ、タコ - 【土木用語・農業用語】 重さをもって地面等の基盤を突き固める道具(棍棒などといった突き棒)、すなわち、撞槌(とうつい)などの俗称的呼称。蛸木(たこぎ。たこ木、タコ木)の略称。名の由来は、大型で専用の撞槌には数本の持ち手が付いていて、形状全体が複数の足を持つタコの姿に似ていることにある。英語: rammer[50]及び: punner[51] (その一語義)と同義であり、よって、「ランマー」「ラマー」「ラム」「プンナー」とも呼ぶ。
  • すかんたこ - 【方言】 好かん蛸。京言葉で「好きではない人」「好きになれない人」の意。関西弁で言う「すかんたれ(好かん垂れ)」の異形。漫画『ドラえもん』にも「スカンタコ」というひみつ道具がある。
  • タコ部屋労働
  • タコ棒 - 【内燃機関ポペットバルブ気密を保つために研磨を行う際、持ち手として取り付ける棒。先端に吸盤があり、これでバルブを吸いつけて作業する。
  • 蛸足(たこあし)
  • 蛸足大学
  • 蛸配当 - 【株式用語】 自らの足を食うタコになぞらえて、経営状況の悪化を取り繕いごまかすことを目的とした「株主への自殺的な配当行為」を言う。
  • タコ麻雀 - 漫画『ぎゅわんぶらあ自己中心派』で挙げられていた奇怪な打ち筋、言動など。
  • タコ - 【野球用語】 安打が打てないことを指す言葉として使われる。例えば、4打席4打数無安打の場合は「4タコ」と言う。

派生した俗語

  • タコになる
大相撲隠語で、思い上がって天狗になり周囲の言うことを聞かなくなること。若いうちに関取になったり三役横綱に昇進した場合に、兄弟子や親方のいうことを聞かなくなったりする力士のことを指す。「タコ釣る」ともいう。
  • タコ殴り
日本の俗語で、袋叩きにすること、または原型をとどめないほどにボコボコに数多く殴ることを指す。「タコにする」ともいう。
  • ゆでダコのようになって怒る
顔を真っ赤にして怒っている様子から、茹でて赤くなったタコを連想してこう言われる。

因んだ名称

明石淡路フェリーの「あさしお丸」
明石港、2008年5月撮影。
生物
  • タコノキなどのタコノキ類(タコノキ目):タコが足を伸ばすように気根を伸ばして立つ姿から、「蛸の木」の意で呼ばれる。
人物
地名
  • 三重県鳥羽市畦蛸(あだこ)町:田んぼの畦道にタコが歩いていたことに由来する。
その他

注釈

  1. ^ ここで言う「半夏」は仏教用語の「半夏(はんげ)」。90日にわたる夏安居(げあんご)の中間。45日目のことを言う。

出典

  1. ^ “八帶魚”字的解释 | 汉典” (中国語). www.zdic.net. 2021年6月10日閲覧。
  2. ^ a b c d e vol8.タコ - 南三陸味わい開発室” (PDF). 海の自然史研究所. 2019年10月18日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g ナショナルジオグラフィック 2016年11月号
  4. ^ Schweid 2014, p. 18.
  5. ^ Katherine 2014, p. 79.
  6. ^ もしもタコ墨パスタを作るなら「1人前7,200円超」 アメーバニュース、2014年2月4日
  7. ^ Budelmann BU (1998). “Autophagy in octopus”. South African Journal of Marine Science 20 (1): 101-108. doi:10.2989/025776198784126502. 
  8. ^ Jane J. Lee (2014年5月16日). “タコの腕はなぜ絡まってしまわないのか”. ナショナルジオグラフィック. https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/9241/ 2014年5月17日閲覧。 
  9. ^ Schweid 2014, p. 19.
  10. ^ 奥谷 2013, p. 21.
  11. ^ Octopus farming is immoral, given everything we know about this highly intelligent and solitary animal – Philip Lymbery”. 20221125閲覧。
  12. ^ Schweid 2014, p. 44.
  13. ^ Katherine 2014, p. 134.
  14. ^ Julian K. Finn, Tom Tregenza, and Mark D. Norman (2009). “Defensive tool use in a coconut-carrying octopus”. Current Biology 19 (23): 1069-70.  doi:10.1016/j.cub.2009.10.052
  15. ^ Finn, Julian K.; Tregenza, Tom; Norman, Mark D. (2009), "Defensive tool use in a coconut-carrying octopus", Curr. Biol. 19 (23): R1069–R1070 http://www.cell.com/current-biology/fulltext/S0960-9822(09)01914-9
  16. ^ Gelineau, Kristen (2009年12月15日). “Aussie scientists find coconut-carrying octopus”. The Associated Press. https://www.google.com/hostednews/ap/article/ALeqM5jfq6qUad8oMqjmm0UKjxvMrFGaaAD9CJIGO80 2009年12月15日閲覧。 
  17. ^ Harmon, Katherine (2009年12月14日). “A tool-wielding octopus? This invertebrate builds armor from coconut halves”. Scientific American. http://www.scientificamerican.com/blog/post.cfm?id=a-tool-wielding-octopus-this-invert-2009-12-14 
  18. ^ Review of the Evidence of Sentience in Cephalopod Molluscs and Decapod Crustaceans” (PDF). 20211227閲覧。
  19. ^ a b The world's first octopus farm - should it go ahead?”. 20211227閲覧。
  20. ^ World's first octopus farm proposals alarm scientists”. 20230326閲覧。
  21. ^ Octopus Farming Ban Introduced in California”. 20240223閲覧。
  22. ^ a b c Nature Video (2023年6月30日). “First glimpses inside octopus’s sleeping brains reveals human-like patterns”. 2023年7月2日閲覧。
  23. ^ a b c Okinawa Institute of Science and Technology (OIST) Graduate University (2023年6月28日). “Octopus sleep is surprisingly similar to humans and contains a wake-like stage”. 2023年7月2日閲覧。
  24. ^ a b c Elizabeth Gibney (2023年6月28日). “Do octopuses dream? Neural activity resembles human sleep patterns”. 2023年7月2日閲覧。
  25. ^ サメを喰らうミズダコ | ナショジオ」(YouTube)、2020年4月17日。2023年11月29日閲覧
  26. ^ ナショナル ジオグラフィック TV [@natgeotv_jp]「サメを襲うタコ」2019年8月8日。X(旧Twitter)より2023年11月29日閲覧
  27. ^ Katherine 2014, p. 72.
  28. ^ Schweid 2014, p. 179.
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  30. ^ Octopoda in WoRMS”. 2014年1月12日閲覧。
  31. ^ 奥谷 2013, p. 179.
  32. ^ a b かがくナビ科学技術振興機構ブログ)
  33. ^ 大阪湾の生き物カタログ マダコ”. 大阪府立環境農林水産総合研究所. 2014年1月12日閲覧。
  34. ^ 秘密のケンミンSHOW』の2015年2月5日放送分より。[信頼性要検証]
  35. ^ 蛸(たこ)のゆで方”. 伯方塩業. 2017年1月6日閲覧。
  36. ^ 魚種別にみる水産資源の現状と問題/タコ WWFジャパン
  37. ^ a b モーリタニア産、および、アフリカ産の割合については、TBS情報7days ニュースキャスター』 2009年12月26日放送回に基づく。[信頼性要検証]
  38. ^ 前野ウルド浩太郎『バッタを倒しにアフリカへ』光文社、2017年、246頁。ISBN 978-4-334-03989-9 
  39. ^ 北海道の漁業図鑑 たこ漁業 (たこ箱)”. 2014年1月12日閲覧。
  40. ^ (やなぎだこ空釣り縄))”. 2014年1月12日閲覧。
  41. ^ Schweid 2014, p. 103.
  42. ^ Katherine 2014, p. 257.
  43. ^ Katherine 2014, p. 85.
  44. ^ First Octopus Farms Get Growing”. 2015年6月16日閲覧。
  45. ^ マダコの完全養殖の技術構築に成功
  46. ^ 日本水産 マダコの完全養殖成功 事業化目指す
  47. ^ 日本水産、世界で類を見ない「マダコの完全養殖」に成功
  48. ^ 北條令子「海と山の妖怪話」『香川の民俗』通巻44号、香川民俗学会、1985年、4頁。 
  49. ^ Dixon, Roland Burrage (1916). The Mythology of All Races. 9. Marshall Jones. p. 15 
  50. ^ "ram". 新英和大辞典 (4 ed.). 研究社. 1960. p. 1472.
  51. ^ "punner". 新英和大辞典 (4 ed.). 研究社. 1960. p. 1442.
  52. ^ 初めまして!工藤由愛 - Juice=Juiceオフィシャルブログ(サイバーエージェント) 2019年7月12日


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