切手 切手と内国郵便約款

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切手

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/12 03:02 UTC 版)

切手と内国郵便約款

定義
内国郵便約款では、「切手類」を「郵便切手、料額印面の付いた郵便葉書、郵便書簡又は特定封筒」と定義し、「切手類のうち、各種行事その他を記念する等特殊の目的をもって随時発行する郵便切手及びくじ引番号付郵便葉書以外のもの」を「通常切手類」と呼ぶ(内国郵便約款第3条)。
郵便切手による料金前払(内国郵便約款第43条1項)
郵便に関する料金は内国郵便約款で定められる例外を除いて、原則として郵便切手で前払する。
郵便切手の貼付位置(内国郵便約款第43条3項)
郵便物の料金および特殊取扱の料金を郵便切手で前払いをするには、内国郵便約款で定められる例外を除いて原則として郵便切手を郵便物(荷札を含む)の表面の左上部(横に長いものにあっては右上部)に貼付することによる。封筒または郵便葉書を縦長に使用し郵便切手を左上部に貼りつける場合にはタテ70.0mm・ヨコ35.0mm、封筒または郵便葉書を横長に使用し郵便切手を右上部に貼りつける場合にはタテ35.0mm・ヨコ70.0mmの範囲内に収まるようにしなければならない(内国郵便約款別記1に図示)。ただし、その位置に郵便切手を貼りつける余白がないときは、その表面の適宜の箇所に貼りつけることができる。
郵便切手の量目(内国郵便約款第43条4項)
郵便物に貼りつけた郵便切手の量目は郵便物の重量に算入される。

切手の歴史

ローランド・ヒル

郵便料金前納のアイデアは19世紀初頭から各国で提案され、1819年にはサルデーニャ王国[注釈 6]で実施をみていたが、現在と同じ郵便切手を利用した制度が開始されたのは1840年イギリスである。この時開始された近代的郵便制度[注釈 7]において導入された制度の一つとして、初めて郵便切手が発行された。ローランド・ヒルはイギリスのおける近代郵便制度の考案者であるが、彼は切手の考案者ではない。イギリス国内ではジェームズ・チャルマーズ英語版がその提案者であり、オーストリア帝国でもスロベニア出身のロヴレンツ・コシール英語版が、同様の案を1836年に提案している。

最初の切手にはイギリスの当時の国家元首であったヴィクトリア女王の肖像が使われており、最初の1ペニー切手(2ペンスの青色の切手も発行されていた)が黒色で印刷されていたため「ペニー・ブラック」という愛称がつけられ、翌年に色が赤色のペニー・レッド英語版に変更されるまで約6,000万枚が発行された。なお、この切手にはミシン目(目打)が穿孔されていなかったため、はさみで必要な枚数を切り出す必要があった。目打つき切手の登場は1854年のことである。また、発行国名の表記はなく、額面の記載も英語のみとなっている。他方、すでに裏糊はついていた。これらの特徴、特に国名表記の欠如は、その後発行された各国の切手にも共通した[注釈 8]

のちに成立した万国郵便連合(UPU)は、国際郵便における郵便物交換を円滑に行うため、切手には発行国の国名を示すこととした[注釈 9]。ただし、イギリスに限って、世界最初の切手発行国であることに敬意を表し、イギリスの君主のシルエットを国名表記の代わりとすることを許している(“U.K. POSTAGE” の表記はない)。しかしながらサウジアラビアの切手には国名表記がなく、代わりに国章のシルエットがある[4]。また、UPUは算用数字で額面を表していない切手は国内郵便へのみに有効であるとしたが、現在ではこの規制は撤廃され、国際郵便用の無額面切手のような切手もある。

この時期にはマルレディ封筒英語版[注釈 10](日本の郵便書簡に相当)など切手以外の方法による前払いの方法もあったが、込み入った図案で宛名欄が狭く使い勝手が悪いといった官製封筒のデザインの問題もあり、切手の方がその簡便さもあって、広く受け入れられた。制度が始まったのがイギリスであったこともあり、切手発行国はヨーロッパや、イギリス植民地が中心であったが、徐々に世界各国に広まった。

日本における切手

日本切手の一例(横山大観「富嶽飛翔」)

日本で最初に発行された切手は、1871年(明治4年)4月20日に発行された竜文切手であり、48、100文、200文、500文の計4種である。この当時はまだ通貨改革が行われていなかったため、江戸時代の通貨による額面表示がなされていた。翌1872年(明治5年)には「銭」の単位に変更された竜銭切手が発行された[注釈 11]。なお、前2者をあわせて竜切手という。1883年(明治16年)には「円」の単位が表記された切手が発行された。

日本切手では、戦前は「大日本帝国郵便」と表記されるとともに菊花紋章が入っていた[注釈 12]が、戦後は「日本郵便」と表記されるようになった。また1966年1月以降に発行された切手では、ローマ字による国名表記を求めるUPUの決定に従って「"NIPPON"」と表記されている[注釈 13][5]

日本でこれまでに発行された切手は、『さくら日本切手カタログ2018』に掲載された分だけで約8,100種類に達し、その後も増え続けている。日本郵便株式会社の切手・葉書室には7人の切手デザイナーがおり、新たな切手を毎年発行している[6]。形も長方形だけでなく、中には円形やハート型、キャラクターをかたどったもの[注釈 14]など多種多様である。下記は日本で発行された、主な切手の種類である。分類は、発行目的によって区分した。

普通切手

普通切手は、郵便料金の納付を主目的に発行される切手で、通常切手とも呼ばれる。1円から500円[注釈 15]まで用意されている。切手は郵便局の窓口、コンビニエンスストアなど日本郵便から委託を受けた郵便切手類販売所で購入することができる。

グリーティング切手

の季節ごとに発行されるシールタイプの切手で、それぞれの時期に合わせたデザインである。販売期間が限られている点が普通切手とは異なる。

ドラえもん』をモチーフとしたものもある。また、2012年秋以降春・秋のグリーティング切手には、日本郵便オリジナルのキャラクターであるぽすくまが登場する。

写真付き切手・フレーム切手

切手に付随した箇所に写真やイラストなど任意のデザインを入れることができる切手である。任意のデザイン部分は切り離しでき、切手としての効力は持たない。

記念・特殊切手

記念特殊切手は、国内外の行事の記念、宣伝キャンペーン文化財の紹介などの意図をもって発行される切手である。年賀切手国際文通週間切手のように毎年同時期に発行されるものや、シリーズとして発行されるものもあり、これらを収集家は恒例切手と呼ぶ場合もある。使用目的は普通切手と同様であるため、諸外国では通常切手と区別したカタログ番号を与えていない場合も多い。なお、日本の最初の記念・特殊切手は 、1894年(明治27年)3月9日に発行された明治銀婚記念(2銭と5銭の2種)である。

ふるさと切手

ふるさと切手は、ふるさと振興の意図で地域の風物や行事をテーマにして発行される切手である。

寄付金付切手

寄附金付切手は、公共的な目的への寄付分を切手の額面に付加して販売される切手である。切手の販売金額の一部が寄付に活用され、寄付金を除く金額部分だけが郵便に使用できる。一般に、切手額面のほかに寄付金額を示す数字を「+」の記号で示し、切手には「80+10」などと表示される。日本最初の寄付金付切手は、1937年発行の愛国切手であり、飛行場建設を目的としていた。年賀切手では1991年以降、寄付金つきが毎年発行されている。

例:阪神・淡路大震災寄付金つき切手趣味週間(1995年)、長野オリンピック冬季大会募金(1997年)

電子郵便切手

1981年からサービスの始まったファクシミリを使い郵便物を送付するレタックス電子郵便)専用の切手。1984年および1985年に額面500円の専用切手[注釈 16]が発売されたが、前者については後者が発売された時点で販売打ち切りになったため、流通量が少ない。昭和時代晩期から平成時代初期にかけて、大学などの受験生への合否通知(合格者の受験番号表)に多く使われた[7]が、インターネットなど他のメディアが発達したため、サービス自体使われることが少なくなった。そのため、その後は消費税導入など料金改定が行われても、そのときの料金に対応した電子郵便切手の発行は行われなかった。

在外国局切手

日本の郵便局が1876年以降に朝鮮および中国の各地に開設されていた。これらの在外国局で当初は日本切手がそのまま販売されていたが、為替相場の差益目当てに在外国郵便局で購入し内地で売却する投機が行われたため、それを防止する目的で、1900年から販売地域を加刷した。

在朝鮮日本郵便局では「朝鮮」の文字を加刷したが、1900年1月1日から1901年3月31日までしか使用されなかった。そのうえ1905年に当時の大韓帝国の行っていた郵政事業および電信事業を「日韓通信業務合同」の名の下に日本政府が接収したため、1910年日韓併合を待たずして日本切手がそのまま使用されることになった。

中国(清朝および中華民国)では「支那」の文字を加刷した。在中国の日本郵便局は長期間活動したため、用紙の違いなども含め49種類の切手が発行された。最終的に1922年12月31日に在中国局が廃止されるまで使用されていた。

軍事切手

軍事切手とは軍人が郵便物を差し立てる際、差出通数の管理などを目的に貼り付けさせる切手である。日本を含め、この制度の対象とされたのは下士官兵である場合が多く、将校については通数を問わず有料とされた。日本の場合、20世紀初頭に中国,台湾朝鮮半島関東州南洋諸島に駐留していた大日本帝国陸海軍の下士官兵士に、月2枚支給されていた。封書で使用されるのが原則であり、重量便は取り扱わないことになっていたが、実際にはそのような使用例も存在する。切手自体は、当時の普通切手に「軍事」の文字を加刷したものである。 1910年から 1944年まで使用され、収集家は台切手と加刷された文字の形式をもとに6種に分類している。

これ以外に、1921年に中華民国青島市で、正規の軍事切手の配給が間に合わず、現地郵便局[注釈 17]が手持ちの「支那」切手へ逓信省に無断で加刷し製造した「青島軍事切手」がある。

航空切手

航空切手は、航空郵便に使用する目的で発行された切手である。世界各国で発行されており飛行機や鳥といったデザインが使われることが多く、額面も総じて高額である。日本においては 1929年に発行されたが、国内における航空郵便制度が速達郵便制度に統合された1953年以降は国際郵便用も含めて専用の切手は発行されていない。日本では航空切手は普通切手と同じくさまざまな料金の納付に使用できたが、一般に諸外国で発行された航空切手は航空郵便料金の納付のみに有効である場合が多い。

その他の切手

その他、以下のような切手がかつて日本では発行された。

郵便貯金切手

郵便貯金切手とは、1941年7月1日、切手による郵便貯金預入れの再開を受け、これを奨励するために発行された、切手を刷り込んだ台紙である。

この切手にはあらかじめ10銭切手(二宮尊徳を図案とする)が印刷されており、これに10銭切手4枚を貼り足し50銭とすることで預入れることができた。1943年7月9日限りで廃止されたが、すでに販売されたものは半年に限り預け入れを認めた。

選挙切手

選挙切手とは、1949年1月23日の第24回衆議院議員総選挙にあたり、候補者一人につき1,000枚ずつ交付された切手である。

この切手は当時使用されていた農婦を描く2円切手に「選挙事務」という文言を縦に加刷したもので、使用する場合は、開封郵便物に貼りつけるか、郵便局で同数の官製はがきと交換することとされた。

現在は、選挙事務所から直接発送される葉書に限り、「選挙事務」と表記された茶色の前納印が捺される。

電信切手

電信切手とは、1885年5月7日、電信料金の納付のために発行された切手である。

これは、当時電信が工部省の管轄とされていたことによるところが大きく、電信が逓信省に移管されてしばらくすると、事務の煩雑さを解消するため、電信料金は郵便切手で納付することになり、電信切手は1888年に廃止、1890年には使用禁止となった。

飛信逓送切手

飛信逓送切手とは、明治初期の公用無料軍事郵便に用いるため発行された切手である。

明治初期においては反政府活動が大々的に行われ、電信にかわる事前の通信手段が求められ、本制度が導入された。陸軍用・海軍用・中央官庁用・府県庁用の4つに大別され(東京都が成立したのは昭和初期の1943年)、西南戦争で多用されたが以降は激減、1917年に廃止された。

村送り切手

村送り切手とは、1875年ころまで高知県で行われていた「村送り」という通信制度に用いるため発行された切手である。村送り自体は江戸時代から土佐で行われた藩営通信制度で、公文書逓送が主であった。1872年6月1日より、この制度を民間に開放、同日、県内だけで有効な村送り切手を発行した。1872年7月に高知県内でも郵便が開業したが、その後もしばらくは並存したといわれる。

このほか、台湾地方切手サザーランド切手板東収容所切手などがある。


注釈

  1. ^ 以外に大豆生蝋黒砂糖小麦などもあった。
  2. ^ 商品切手→商品券など、例外的に小切手がある。
  3. ^ 時には別の素材が用いられる。
  4. ^ 日本においては、日本郵政グループの日本郵便株式会社
  5. ^ 独立国家のそれである必要はなく、植民地のものであっても加盟できる。
  6. ^ 現在のイタリア北部およびフランス南東部。
  7. ^ 料金の前納、重量制の導入、全国均一料金制、など。
  8. ^ ブラジルの「牛の目切手」など多数。
  9. ^ 1966年以降はローマ字での表記が義務付けられた。
  10. ^ 官製封筒の一種。デザイナーの名にちなむ
  11. ^ ちなみに同切手は日本初の目打付切手である。
  12. ^ 一部に例外あり。
  13. ^ 「NIPPON」と表記された最初の切手は1966年1月31日発行の魚介シリーズ・イセエビであり、また「NIPPON」が表記されていない日本切手で最後まで発行されていたものは1963年5月15日から2002年9月30日まで発行されていた「4円普通切手」(ベニオキナエビス)だった。ただし明治時代に発行された日本切手には英語による国名表記(「JAPAN」)がなされていた。
  14. ^ 主に後述するグリーティング切手に数多く見られる。
  15. ^ 2019年以前は1000円まで用意されていた。
  16. ^ 実際には普通切手扱いで書留など他の郵便物にも使用できた。
  17. ^ 当時日本をはじめとする列強は、中国国内に郵便局を権益として保有していた。
  18. ^ 日本郵便株式会社と原著作権者との間に著作物の利用について別途の契約がある場合は、その内容によってはこの限りではないが、そのような契約の存否は明らかでない。

出典

  1. ^ 江後迪子『隠居大名の江戸暮らし』吉川弘文館、1999年、156頁。ISBN 4-642-05474-X 
  2. ^ 「JPタワー(旧東京中央郵便局敷地再整備計画)」内 商業施設名称は「KITTE」(キッテ)に決定』(PDF)(プレスリリース)日本郵政、2012年10月23日http://jptower.jp/pdf/121023.pdf 
  3. ^ 新デザインの普通切手・通常郵便葉書の発行”. お知らせ. 日本郵便. 2017年5月25日閲覧。
  4. ^ 切手の豆知識 第17回「国名表記」”. 切手の博物館. 2011年4月24日閲覧。
  5. ^ NIPPON字入り切手40年”. 郵便学者・内藤陽介のブログ (2006年11月5日). 2015年8月31日閲覧。
  6. ^ “(文化の扉)奥深い、切手収集 印刷の差や消印の種類、楽しむ”. 朝日新聞. (2017年5月21日). オリジナルの2017年5月21日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170521071223/http://www.asahi.com/articles/DA3S12948282.html 
  7. ^ “電子郵便合格通知採用10倍増”. 朝日新聞東京本社朝刊. (1987年2月2日) 
  8. ^ Thornton Lewes & Edward Pemberton, Forged Stamps: How to Detect Them , Edinburgh, 1863 (1979 republication in Early Forged Stamps Detector, New York), pp. 7-8.
  9. ^ a b 真贋のはざま”. umdb.um.u-tokyo.ac.jp. 東京大学. 2023年7月22日閲覧。
  10. ^ スコットカタログ
  11. ^ 郵便切手類模造等取締法(昭和四十七年六月一日法律第五十号)”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局. 2009年3月5日閲覧。
  12. ^ 郵便切手類模造等の許可に関する省令(昭和四十七年郵政省令第三十一号)”. e-Gov法令検索. 総務省行政管理局. 2009年10月11日閲覧。
  13. ^ 郵便切手類模造等の許可の申請”. 電子政府の総合窓口(e-Gov). 総務省行政管理局. 2014年4月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年3月5日閲覧。
  14. ^ タンタンの切手類 - 資料:郵便切手類の模造に関する法令”. 2009年3月5日閲覧。






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