no-arbitrage pricing modelとは? わかりやすく解説

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デリバティブ評価モデル

読み方でりばてぃぶひょうかもでる
【英】:no arbitrage pricing model

概要

ある公示性のある指標対し, 将来時点での支払契約明示した経済的権利デリバティブ総称する. さらに将来時点での経済的価値変動確率モデル定式化し, 合理的な資産価格付けが満足すべき性質から, その現在時点での価格理論的に導出するモデルをデリバティブ評価モデルという. 例え株式コールオプションでは, 対象とする指標株価とし, 当該株価所与満期時点で, ある一定の行使価格購入する権利現在価値評価する.

詳説

 デリバティブ評価モデル(no-arbitrage pricing model) ある公示性のある指標対し, 将来時点での支払契約明示した経済的権利デリバティブという. さらに将来時点での経済的価値変動確率モデル定式化し, 合理的な資産価格付けが満足すべき性質から, その現在時点での価格理論的に導出するモデルをデリバティブ評価モデルという. 以降では1種類安全資産1種類危険資産取引されている2証券市場モデルにおける, デリバティブ合理的な価格導出法について説明する.

 まず証券市場においては, 瞬間的な無リスク金利r\, 資産調達および運用が可能とする. すなわち時点0\, 1円からはじめた預金(もしくは借金)が, 時点t\, では\exp\{rt\}\, 円になるものとする. また1種類株式連続的に取引されており, その価格は, 次の確率微分方程式


 {\mbox{d}}S_t=\mu S_t {\mbox{d}}t +\sigma S_t {\mbox{d}}B_t\,


に従うものとする. ただし\mu\, , \sigma\, は, ある一定の係数であり, B_t\, 標準ブラウン運動を表す. このとき将来一定時点T\, において, 1単位株式価格K\, 購入できる権利(これをヨーロピアンタイプコールオプションという)の, 現在時点0\, での合理的な現在価値導出したい.

 いま仮にこのオプション時点t\, での価格C_t\, が, 時点t\, およびその時点での株価S_t\, 関数g(t, S_t)\, により与えられるとする. このとき伊藤のレンマより, C_t\, 次の確率微分方程式に従う.


{\mbox{d}}C_t=\frac{\partial g(t, S_t)}{\partial t} {\mbox{d}}t 
+\frac{\partial g(t, S_t)}{\partial s} {\mbox{d}}S_t
+\frac{1}{2} \frac{\partial^2 g(t, S_t)}{ {\partial s}^2 } 
\sigma^2 S_t^2 {\mbox{d}}t.\,


ここで各時点t\, において, オプション1\, 単位保有し, 株式\textstyle -\frac{\partial g(t, S_t)}{\partial s} \, 単位保有し, かつ安全資産\textstyle \frac{\partial g(t, S_t)}{\partial s}S_t-C_t \, 保有するポートフォリオ考える. ポートフォリオ構成法から, ポートフォリオ全体価値P_t\, 0\, 円である. さらにこのポートフォリオ価値変動は, オプションの価値変動株式価値変動相互に不確実な動き打ち消し合うことにより,


{\mbox{d}}P_t= \left( \frac{\partial g(t, S_t)}{\partial t} 
+\frac{1}{2} \frac{\partial^2 g(t, S_t)}{{\partial s}^2} \sigma^2 S_t^2 
+\left(\frac{\partial g(t, S_t)}{\partial s} S_t -C_t\right)r \right) 
{\mbox{d}}t\,


となる. すなわちこのポートフォリオ元手0\, から始めて確実に{\mbox{d}}P_t\, 価値変動もたらし, もしこの変動が0でなければ, この(もしくは逆の)ポートフォリオにより, リスクを負うことなく確実に儲けることが可能となる. したがってもし証券市場合理的ならば, このような投資機会存在しないはずである(これを無裁定条件という). この結果, 合理的なオプション評価額C_t=g(t, S_t)\, は, 以下の偏微分方程式満足する必要がある.


\frac{\partial g(t, s)}{\partial t} 
+\frac{1}{2} \frac{\partial^2 g(t, s)}{{\partial s}^2} \sigma^2 s^2 
+\frac{\partial g(t, s)}{\partial s} rs -rg(t, s) =0.\,


また満期時点T\, においては, コールオプションの定義から, 以下の境界条件要求される.


g(T, s)=\max \{ s-K,  0 \}\, .


この2つ条件式から, Black-Scholes モデル[1]におけるB-S公式導出される.

 次にB-S公式によるコールオプション評価額が, 具体的に何を意味しているのかを説明する. 伊藤のレンマ確率積分により表現すると, 以下の関係が成立する.


C_T = C_t+\int_t^T \left( \frac{\partial g(u, S_u)}{\partial u} 
+\frac{1}{2} \frac{\partial^2 g(u, S_u)}{{\partial s}^2} \sigma^2 S_u^2 
\right) {\mbox{d}}u
+\int_t^T \frac{\partial g(u, S_u)}{\partial s} {\mbox{d}}S_u\,


この確率積分表現上述偏微分方程式代入すると, 結果として次の表現得られる.


C_T = C_t+ \int_t^T \left( C_u-\frac{\partial g(t, S_u)}{\partial s} 
S_u \right) r{\mbox{d}}u +\int_t^T \frac{\partial g(u, S_u)}
{\partial s} {\mbox{d}}S_u\,


これはC_t=g(t, S_t)\, 元手とし, あらたな追加投資をせずに, 各時点u\, 株式\textstyle \frac{\partial g(u, S_u)}{\partial s}\, 単位保有し, 残りポートフォリオ価値安全資産投資しつづけることにより, 満期時点T\, でのポートフォリオ価値C_T(=\max \{ s-K,  0 \})\, 一致することを示す. すなわちオプション合理的な評価額とは, 当該オプション満期時点での価値複製必要なポートフォリオの, 現在時点での価値ほかならないのである.

 デリバティブ合理的な価格は, その将来時点での経済価値を表す指標株価以外のさまざまな経済データ(例え為替, 金利, 天候地震自然現象)であっても, その根源的リスクへの分割を可能とする証券数が取引されていれば, 同様な考え方によって演繹的に導出可能となる. これが無裁定条件によるオプション評価理論本質である[2,3].


参考文献

[1] F. Black and M. Scholes, "The Pricing of Options and Corporate Liabilities," Journal of Political Economy, 81 (1973), 637-659.

[2] J. Cox and S. A. Ross, "The Valuation of Options for Alternative Stochastic Processes," Journal of Financial Economics, 3 (1976), 145-166.

[3] J. M. Harrison and S. R. Pliska, "Martingales and Stochastic Integrals in the Theory of Continuous Trading," Stochastic Processes and Their Applications, 11 (1981), 381-408.

「OR事典」の他の用語
ファイナンス:  イールドカーブ  オプション  スワップ  デリバティブ評価モデル  ファクターモデル  ファットテイル分布  ヘッジファンド

「no arbitrage pricing model」の例文・使い方・用例・文例

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