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ラン科

(ORCHIDACEAE から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/09/02 00:14 UTC 版)

ラン科
生息年代: 80–0 Ma 後期白亜紀 – 現世
キンラン(Cephalanthera falcata)
分類(APG III)
界 : 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 単子葉類 Monocots
目 : キジカクシ目 Asparagales
科 : ラン科 Orchidaceae
学名
Orchidaceae
Juss.[1]
タイプ属
Orchis
Tourn. ex L.
亜科
分布域

ラン科(ランか、蘭科、学名:Orchidaceae)は、単子葉植物の科のひとつで、その多くが美しく、独特の形の花を咲かせる。世界に700属以上15000種、日本に75属230種がある。鑑賞価値の高いものが多く、昔から栽培や品種改良が進められている。他方、採取のために絶滅に瀕している種も少なくない。ラン科の種はラン(蘭)と総称される[2]。

概要

ラン科は単子葉植物の中で最も種の数が多く、種はなお分化を続けているため「種の爆発の時」といわれている[3][4](なお双子葉植物で最も種が多いのはキク科である[3])。ランは樹木の樹皮や岩の上などに根を張り着生している着生種と、林の中や草原などの地面に生育する地生種に分けられる[5]。

ランは分化を続けており、その分布は植生の限界にまで広がり地生ランは世界のほぼ全域にみられるが、着生ランの分布域は赤道を中心に南緯と北緯それぞれ30~40度が限界になっている[4]。

ラン科の多様性は群を抜いており、生活域や分布の広さから、環境に適応して形態が多種多様に変化し、花形や茎、根の形状などに大きな差異がある[3]。野生ランは自生地域により、亜高山~高山種、平野部~山地種、亜熱帯地域種の三種に分けられる[6]。また野生ランは日照条件により、陰地性、半陰地性、陽地性の三種に分けられる[6]。種子は微細で胚乳がなく、発芽生長に共生菌を必要とする[7]。多くは虫媒花であり花粉を虫に運んでもらうために花の色や形も様々である[8]。また、中には進化の過程で、光合成をやめて葉が退化し(葉緑素を失い)、かわりに地中の菌類に寄生し養分を吸収して生活する菌従属栄養植物(腐生ラン)となったグループもある[9]。高山性のランや腐生ランなど栽培が著しく困難または不可能な一部の種類を除き、ほぼ専門的な栽培増殖が行われている[10]。一方でそのための採集圧から絶滅の危機が問題になっているものも多い。

名称

ランは英語で「Orchid(オーキッド)」といい、ギリシア語で睾丸を意味する「オルキス」(ορχις, orchis) が語源であるが、これはランの塊茎(バルブ)が睾丸に似ていることに由来する。

漢字の「蘭」は、本来はランではなくフジバカマを指す字だった[11]。またアララギ(イチイ)を指す場合もあった[12]。

特徴と形態

主な特徴

ラン科には以下のような特徴がある。

  1. 雄蕊(ゆうずい、おしべ)と雌蕊(しずい、めしべ)が融合した構造でずい柱を形成している[13]。
  2. 花被は、基本的に、三枚の萼片(がくへん、セパル)、二枚の側花弁(ペタル)、一枚の唇弁(しんべん、リップ)からなる[3][13]。
  3. 種子には胚乳がなく、数十個の細胞からなる未分化の胚と薄い種皮からなる[13]。
  4. 花粉塊や根被(べラーメン層)が存在する[13]。

株の形態

単茎性のランと複茎性のランに分けられる[8]。

花

ラン科の植物のほとんどが花梗(花柄)がなく、花茎の先端に子房を出してその上に花弁を付ける[3]。また、蕾は本来あるべき向きとは上下逆さまに付き、開花時に180度回転して正面を向くように咲く[3]。

萼片(がくへん、セパル)は蕾のときに最も外側にある三枚で、上部のものを上萼片(背萼片、ドーサルセパル)、左右のものを側萼片(ローアーセパル)という[3][14]。アツモリソウ属では側萼片が癒着しており萼片が計二枚に見える[3]。

側花弁(セパル)はずい柱の上部に位置する二枚である[15]。萼片に似るものが多いが、サギソウのように唇弁に似るものもある[15]。

唇弁(しんべん、リップ)は舌(ぜつ)ともいい、花の正面に位置しており、各属各種で独特の形状をしておりラン科植物の特徴になっている[15][16]。

先述のようにラン科の植物の特徴として、雄蕊(ゆうずい、おしべ)と雌蕊(しずい、めしべ)が合着して一本のずい柱を形成している[15]。二本のものにはたとえばヤクシマラン属とアツモリソウ属があり、それぞれヤクシマラン亜科とアツモリソウ亜科を代表する。

ヤクシマラン亜科のものは雄しべが比較的はっきり区別できて、花型も放射相称に近いなど普通の花に近く、原始的なものと考えられる。
アツモリソウ亜科のものではずい柱は平らで先端下面に柱頭が、それより根元側左右に雄しべの葯がある。
それ以外のラン科ではずい柱先端に雄しべの葯があり、その下面に柱頭がある。

葉

ラン科の植物の葉には、シュンランなどの常緑性種、サイハイランやホテイランなどの落葉性種、クモランや腐生ラン(ムヨウラン、ツチアケビ、オニノヤガラなど)の無葉性種がある[17]。

茎

フウランやムカデランのように茎が明瞭な種から、クモランのように茎が退化してしまっている種まである[18]。

多くは養分や水分を蓄えるために肥厚した偽鱗茎(偽球、バルブ)をもつ[18][8]。もっとも新しいものをリードバルブ、それ以外をバックバルブという[8]。

根

ラン科の植物の根は特徴的で、太く基部から先端までほぼ一定で、本数が少なく、ごく一部の種を除いて根は枝分かれしない[19]。

根の細胞には菌類が共生して菌根を形成しており、ラン科独特の構造からラン菌根と呼ばれる。なお、かつては一部の植物のみが菌根を作るとされてきたが、現在では陸上植物のほとんどが菌類と共生していることが知られる。ただし、そのほとんどがグロムス類であるのに対して、ラン科のものは担子菌類と共生している点が独特である[20]。

種子

ラン科植物の種子は、その内部に未分化な細胞塊があるだけで子葉を退化させている。例外的に子葉を持つものとしてシラン属、プレティア属、ナリヤラン属、ソブラリア属などが知られている。これらの属は、外形的にササやヨシに似た姿で、多くが日当たりのよい場所の地面に生える点でも共通しており、これはラン科の起源を考える上で興味深い点との指摘がある[21]。

洋ランと東洋ラン

欧米では18世紀以降、熱帯性のランが多数持ち込まれ、鑑賞用として栽培されてきた。[22]グアムなどでは、着生種がヘゴ板(木生シダ類の幹を切り出したもの)やミズゴケ類を使うなどの工夫がされた。[23]ラン科では種間だけでなく属間でもより美しいものを求めて交配種が作られ、日本ではそれらを“洋ラン”と呼んでいる。[24]

洋ランに対して“東洋ラン”は、中国や日本などの東アジアに自生する、比較的小型のシンビジューム属に属する蘭を指す。[25]野生ランの国際間移動は「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」(略称CITES、通称ワシントン条約)で規制されている。[26]ラン科の植物の減少の原因としては、森林開発の進行などで生息環境を失ったことや、人間による採集、自力で繁殖する力が弱いことなどがあげられる。[27]バニラ(Vanilla)はラン科の植物であり、香料の材料などに使用されている。[28]

分類

ラン科

様々なランの花
(エルンスト・ヘッケルによる)

以下は、Robert Louis Dresslerによる1993年の分類である。古くはヤクシマラン亜科をヤクシマラン科とすることもあった。詳細はラン科の属一覧を参照されたい。

日本産の主な属

海外産で、よく栽培されている属

ラン科以外の「ラン」がつく植物

ラン科以外の植物にも、その花や姿の美しさ等から名称に「らん」と付くものがある。下記にその例を記載する。

保護上の位置づけ

ラン科の種のうち、下記の種はワシントン条約の附属書I類に、その他の全種は附属書II類に指定されている。

ギャラリー

出典

  1. ↑ Angiosperm Phylogeny Group (2009). “An update of the Angiosperm Phylogeny Group classification for the orders and families of flowering plants: APG III”. Botanical Journal of the Linnean Society 161 (2): 105–121. doi:10.1111/j.1095-8339.2009.00996.x. hdl:10654/18083.
  2. ↑ 小林義雄 著、相賀徹夫 編『万有百科大事典 19 植物』1972年。
  3. 1 2 3 4 5 6 7 8 沖田好弘 1982, p. 104.
  4. 1 2 富山昌克 1992, p. 8.
  5. ↑ 大場良一 2011, p. 9-10.
  6. 1 2 沖田好弘 1982, p. 116.
  7. ↑ 大和 政秀・谷亀 高広 2009 ラン科植物と菌類の共生. 日本菌学会会報 50: 21-42
  8. 1 2 3 4 5 6 大場良一 2011, p. 8.
  9. ↑ 沖田好弘 1982, p. 110.
  10. ↑ 沖田好弘 1982, p. 103.
  11. ↑ 寺井泰明『植物の和名・漢名と伝統文化』日本評論社、2016年、542頁。 ISBN 9784535587014。(牧野富太郎による「蘭は本来はフジバカマだった」説の紹介) / 牧野富太郎 1943年 『植物記』:新字新仮名 - 青空文庫
  12. ↑ 精選版 日本国語大辞典『蘭』 - コトバンク
  13. 1 2 3 4 富山昌克 1992, p. 12.
  14. 1 2 富山昌克 1992, p. 10.
  15. 1 2 3 4 沖田好弘 1982, p. 105.
  16. ↑ 大場良一 2011, p. 9.
  17. ↑ 沖田好弘 1982, p. 108-109.
  18. 1 2 沖田好弘 1982, p. 112.
  19. ↑ 沖田好弘 1982, p. 113.
  20. ↑ Yukawa et al.(2009)
  21. ↑ 西村(1997)
  22. ↑ Orchid Horticulturejournal.usamv 2026年8月6日閲覧
  23. ↑ Orchids in Guam Uog.edu 2026年8月6日閲覧
  24. ↑ 洋ラン 洋蘭農協 2026年8月6日閲覧
  25. ↑ 東洋蘭 日本東洋蘭協会 2026年9月1日閲覧
  26. ↑ ワシントン条約 洋蘭農協 2026年9月1日閲覧
  27. ↑ 蘭 jstage 2026年9月1日閲覧
  28. ↑ Vanilla conservatory.ucdavis.edu 2026年9月2日閲覧

関連項目

参考文献

  • 沖田好弘『野生らん』保育社、1982年。 ISBN 9784586505852。 
  • 富山昌克『洋ラン I 室内・屋外管理』保育社、1992年。 ISBN 9784586508372。 
  • 大場良一『失敗しない洋ラン入門』主婦の友社、2011年。 ISBN 9784072751510。 
  • 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他『日本の野生植物 草本I 単子葉植物』,(1982),平凡社
  • Tomohisa Yukawa, Yuki Ogura-Tsujita, Rchard P. Shefferson, & Jun Yokoyama, 2009, Mycorrhyzal diversity in Apostasia(Orchidaceae) indicates the Origin and evolution of chid Mycorrhiza. American Journal of Botany 96(11),pp.1997-2009.
  • 西村悟郎、1997b、「シラン」:『植物の世界9』〈朝日百科〉、1997年、p.178-180

外部リンク





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