ヒメムヨウラン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/07 10:18 UTC 版)
ヒメムヨウラン | |||||||||||||||||||||
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分類(APG IV) | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Neottia acuminata Schltr. (1924)[1] | |||||||||||||||||||||
シノニム | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
ヒメムヨウラン(姫無葉蘭)[4][5] |
ヒメムヨウラン(姫無葉蘭、学名:Neottia acuminata)は、ラン科サカネラン属の地生の多年草[4][5][6][7][8][9]。葉は退化して無い[8]。葉緑素をもたない菌従属栄養植物[4][7]。
特徴
外生菌根菌に寄生する[7]。根茎は短く、根は細く多数束生する。茎は太さ1.5-2mmと細く、高さは10-20cm、淡褐色から赤褐色になり、無毛である。葉はなく、茎に3-4個の膜質の鞘状葉がまばらにつき、鞘状葉は長さ2-3cmになり、先は鈍頭になる[4][5][6][7][8]。
花期は6-8月。花は、茎の上部に総状に10-20個をまばらにつける。花は長さ5mmほどで、淡紅褐色。花の下方の苞葉は長さ1-1.5mm、卵形で膜質、先は鋭頭であるが、花柄に密接して見えにくい。3個の萼片と2個の側花弁は卵状広披針形でほぼ同長、長さ約3mmになり、1脈あり、開出し、先端にかけて反曲する。唇弁は萼片とほぼ同長で、三角状卵形で先は鈍頭、3脈あり、先側は縁が内側にめくれている。蕊柱はごく短く、花粉塊は粉状になる[4][5][6][7][8]。花が倒立していて咲くため、通常のラン科植物と異なり、唇弁が上方に位置する[7][8][9]。
分布と生育環境
日本では、北海道、本州の中部地方以北に分布し、亜高山帯の針葉樹林の林床に生育する[4][5][6][7][8][9]。世界では、サハリン、ウスリー、カムチャツカ半島、朝鮮半島、台湾、中国大陸からヒマラヤに分布する[6][7][8]。
名前の由来
和名のヒメムヨウランは、「姫無葉蘭」の意[4][5]で、牧野富太郎 (1900) による。牧野は、植物学者の大久保三郎が1898年に日光で採集した標本をもとに、この和名をつけた[10][11]。小さくて無葉であることに由来し、ムヨウラン属 Lecanorchis とは関係はない[7]。
種小名(種形容語)acuminata は、「先が次第にとがる」の意味[12]。
種の保全状況評価
絶滅危惧II類 (VU)(環境省レッドリスト)
都道府県のレッドデータ、レッドリストの選定状況は次の通りとなっている[13]。 北海道-絶滅危惧II類(Vu)、栃木県-準絶滅危惧(Cランク)、群馬県-絶滅危惧IA類(CR)、埼玉県-絶滅危惧IA類(CR)、神奈川県-絶滅(EX)、富山県-情報不足、山梨県-絶滅危惧II類(VU)、長野県-絶滅危惧II類(VU)、静岡県-絶滅危惧II類(VU)。
ギャラリー
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花は、茎の上部に総状に10-20個をまばらにつける。
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左の拡大。⇐花が倒立していて咲くため、通常のラン科植物と異なり、唇弁が上方に位置する。
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上方に位置する唇弁は三角状卵形になり、先は鈍頭、先側は縁が内側にめくれている。
脚注
- ^ ヒメムヨウラン「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ ヒメムヨウラン(シノニム)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ ヒメムヨウラン(シノニム)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b c d e f g 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.108
- ^ a b c d e f 『新分類牧野日本植物図鑑』p.253
- ^ a b c d e 『原色日本植物図鑑 草本編III(改訂版)』pp.33-34
- ^ a b c d e f g h i 末次健司 (2015)「ヒメムヨウラン」『絶滅危惧植物図鑑 レッドデータプランツ 増補改訂新版』p.515
- ^ a b c d e f g 遊川知久 (2015)「ラン科」『改訂新版 日本の野生植物1』p.216
- ^ a b c 中島睦子 (2012)『ラン科植物図譜』pp.152, 341-342
- ^ 牧野富太郎「日本植物調査報知第二十七囘○さかねらんの新産地」『植物学雑誌 (The Botanical Magazine)』第14巻第162号、東京植物学会、1900年、184頁、doi:10.15281/jplantres1887.14.162_183。
- ^ T. Makino「Observations on the Flora of Japan. (Continued from p. 173.)」『植物学雑誌 (The Botanical Magazine)』第16巻第188号、東京植物学会、1902年、177頁、doi:10.15281/jplantres1887.16.188_175。
- ^ 『新分類牧野日本植物図鑑』p.1482
- ^ ヒメムヨウラン、日本のレッドデータ検索システム、2025年8月19日閲覧
参考文献
- 北村四郎・村田源・小山鐵夫著『原色日本植物図鑑 草本編III(改訂版)』、1984年、保育社
- 門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
- 矢原徹一他監修『絶滅危惧植物図鑑 レッドデータプランツ 増補改訂新版』、2015年、山と溪谷社
- 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 1』、2015年、平凡社
- 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- 日本のレッドデータ検索システム
- 牧野富太郎「日本植物調査報知第二十七囘○さかねらんの新産地」『植物学雑誌 (The Botanical Magazine)』第14巻第162号、東京植物学会、1900年、184頁、doi:10.15281/jplantres1887.14.162_183。
- T. Makino「Observations on the Flora of Japan. (Continued from p. 173.)」『植物学雑誌 (The Botanical Magazine)』第16巻第188号、東京植物学会、1902年、177頁、doi:10.15281/jplantres1887.16.188_175。
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