キヌラン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/12 07:29 UTC 版)
キヌラン | ||||||||||||||||||||||||
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チクシキヌランの花
(2025年3月 沖縄県石垣市 バンナ公園) |
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保全状況評価 | ||||||||||||||||||||||||
LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) |
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分類(APG IV) | ||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||
Zeuxine strateumatica (L.) Schltr. | ||||||||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||||||||
キヌラン、ホソバラン | ||||||||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||||||||
lawn orchid, soldier orchid | ||||||||||||||||||||||||
品種 | ||||||||||||||||||||||||
キヌラン(絹蘭、学名:Zeuxine strateumatica[1])はラン科キヌラン属の小型の多年生草本。IUCNカテゴリーLC[2]。狭義のキヌランとして沖縄県絶滅危惧IA類(CR)[3]、宮崎県絶滅危惧IB類[4]。
特徴
開花期の高さは5–15 cmほど。茎と葉は紅紫色を帯びる。葉は線形で長さ約5 cm。花期は3–4月。花は長さ5 mmほどで、背がく弁と側花弁は重なり合って兜状になる。唇弁の基部が球形に膨れる。唇弁は黄色を帯び、上面の基部に少数の突起がある。唇弁の先端は倒卵形で、わずかに2裂する[5][6][7][8]。
ラン科植物には腐生性の種も散見されるが、本種は自ら光合成を行うことが確認されている。ただしその能力は低い[4]。
分類
唇弁の先端が2裂しないものを品種チクシキヌランZ. strateumatica f. rupicolaとして分ける[7][8]が、中間的な形態の個体もあり、さらなる検討が必要とされる[7]。インド北部チャンディーガル産のキヌランの染色体数については二倍体~十倍体の倍数性複合体や様々な異数体が知られているが[9]、日本産キヌランとチクシキヌランの染色体数については未解明[3]。キヌランには形態的にも遺伝的にも多くの系統が含まれると考えられ、チクシキヌランはキヌランの種内変異のうち琉球列島などに分布する1品種として扱うとする新学名組合せが提唱された[10]。YListもこの見解をとっており[11]、本稿における分類もこれらに従う。なお、POWOではZ. strateumatica f. rupicolaなどを下位分類とせずZ. strateumaticaのシノニムとして纏めている[12]。
分布と生育環境
九州南部~南西諸島、東南アジア[4]をはじめアジア熱帯域周辺(イラン~ニューギニア)に広く分布し[7]、米国南部をはじめ世界各地の亜熱帯~熱帯で野生化[12]。日当たりの良い草地に生育する[4][7]。人為的な影響の多い場所でも見かける[6]。公園の芝生広場などに生える身近なラン。沖縄では唇弁先端が2裂しないチクシキヌランの型が多く、キヌランはまれとされる[3][8]。本種は草丈が低いことから、保全を目的とする場合は草刈時期をできるだけ遅らせ、草刈り時の刈取高を6 cmとすることが望ましいとされる[4]。
ギャラリー
脚注
- ^ “キヌラン”. YList 植物和名-学名インデックス. ylist.info. 2025年4月12日閲覧。
- ^ Richard Lansdown (Aquatic Plant Expert) (2011-07-12). “IUCN Red List of Threatened Species: Zeuxine strateumatica”. IUCN Red List of Threatened Species .
- ^ a b c (横田 2018, pp. 432–433)
- ^ a b c d e (椿 & 中尾 2009, pp. 33–36)
- ^ (横田 1997, p. 243)
- ^ a b (片野田 2019, p. 114)
- ^ a b c d e (遊川 2021, p. 178)
- ^ a b c (林 & 名嘉 2023, p. 181)
- ^ (Mehra & Vij 1972, pp. 237–251)
- ^ (橋本 1986, pp. 17–30)
- ^ “チクシキヌラン”. YList 植物和名-学名インデックス. ylist.info. 2025年4月12日閲覧。
- ^ a b “Zeuxine strateumatica (L.) Schltr.” (英語). Plants of the World Online. Kew Science. 2025年4月12日閲覧。
参考文献
- Mehra, P.N.; Vij, S.P. (1972), “Cytological Studies in the East Himalayan Orchidaceae - 1: Neottieae”, Caryologia 25 (3): 237-251, doi:10.1080/00087114.1972.10796479
- 橋本保「ラン科植物分類雑記 (2)」『筑波実験植物園研究報告』第5号、17–30頁、1986年 。
- 横田昌嗣 著「キヌラン」、岩槻邦男ら監修 編『朝日百科 植物の世界』 9巻、朝日新聞社、東京、1997年、243頁。ISBN 9784023800106。
- 椿隆幸; 中尾登志雄「宮崎大学構内に生育する県の絶滅危惧種キヌランの生理生態的特性と個体群保全」『九州森林研究』第62号、33–36頁、2009年 。
- 横田昌嗣「キヌラン(ホソバラン)(狭義) Z. strateumatica var. strateumatica」『改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物 第3版(菌類編・植物編)―レッドデータおきなわ―』沖縄県、2018年3月、432–433頁 。
- 片野田逸郎「キヌラン」『琉球弧・植物図鑑 from AMAMI』南方新社、2019年。 ISBN 9784861244056。
- 遊川知久 著「キヌラン」、大橋広好・門田裕一・木原浩・邑田仁・米倉浩司 編『フィールド版改訂新版 日本の野生植物』 1巻、平凡社、2021年、178頁。 ISBN 9784582535389。
- 林将之; 名嘉初美「キヌラン」『沖縄の身近な植物図鑑』ボーダーインク、2022年。 ISBN 9784899824350。
外部リンク
- キヌラン(絹蘭) こまつなの部屋
- チクシキヌラン(筑紫絹欄) こまつなの部屋
- キヌラン(絹蘭) 野の花賛花
- チクシキヌラン 野の花賛花
- キヌラン(絹蘭) うちなー通信
- キヌラン ふるさと種子島
- キヌラン・ナンゴクネジバナ@沖縄本島 南の島旅(ブログ)2013-02-16
- キヌランのページへのリンク