M-Vロケットの廃止とイプシロンロケット
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「M-Vロケット」の記事における「M-Vロケットの廃止とイプシロンロケット」の解説
「イプシロンロケット#開発経緯」も参照 JAXAは、ISASから引き継いだM-Vロケットと、NASDAから引き継いだH-IIA/H-IIBの2系統のロケットを維持・開発してきたが、M-V を廃止して新型の固体燃料ロケットを開発するという報道が2006年3月になされた 。2006年7月26日にはM-Vロケットの廃止が決定された。 この背景には、M-Vロケットの半分弱の能力を持つM-3SIIロケットを廃止したため、科学衛星をM-Vロケットの能力に合わせて開発してしまったことへの反省がある。M-VはICBMにも転用可能な性能を持っており、それに合わせた衛星は科学衛星としては大型かつ高価過ぎ、M-V自体の価格もあいまって、予算上の理由から衛星開発の間隔が延びざるを得ない。 ISASとしても、M-Vより小型で低価格のロケットを開発して、小型衛星を多数打ち上げたいという意向を持っていたため、M-Vロケットの1段目を省略して第2段からキックモータまでの3段式とし、ノーズフェアリングに集中させた電子装備を回収, 再使用する案 (M-V Lite)や、第1段へのCFRP一体型モーターケースの採用や機体構成・製造プロセス・運用システムを見直し、搭載電子機器の統合・簡素化を行う案 (M-VA)を模索していたところであった。また、8号機打ち上げ後の記者会見では森田プロジェクトマネージャーよりSRB-A流用とH-IIAとのコンポーネントの共通化によるコスト削減案を検討している旨が述べられている。 約75億円でペイロードが2t弱という M-V の打上げ費用が、当時開発中だった規模が同程度のGXロケットより高いという問題もあった。しかし後に、そのGXロケットも1機の費用がM-VはおろかH-IIAより高くなる見通しになったため、開発が中止されている。 一方、H-IIAロケットと比較した場合、M-Vの方がペイロード重量あたり単価が高いため、衛星によってはH-IIAに相乗りして打ち上げた方が安いこともあり得る。 このような事情から2007年、H-IIAのSRB-Aを改造して1段目に使用し、2・3段目にはM-Vロケットの3段目と4段目を改良して使用することで低軌道に1.2tのペイロードを投入する案が採用され、「次期固体ロケット」の仮称で開発を開始した。当初、次期固体ロケットはまず2段式を開発し、オプションとして3段目を追加できるとしていた。この案ではペイロードが500kgと、M-Vに比べてあまりに貧弱であり、また比推力が液体ロケットより低い固体ロケットを2段式で使用するためきわめて非効率なロケットになってしまうことから、次期固体ロケットへの批判とM-V存続(もしくはM-V Liteの開発)の声が巻き起こった。また、かつて同じようにSRBとMシリーズの上段を組み合わせたJ-Iロケットが事実上失敗したことも、次期固体ロケットを批判する材料になった。しかし次期固体ロケットの開発が進むにつれ、関係者が次期固体ロケットの意義を説明したこと、2段式案が消えて最初から3段式としたことなどから、批判の声は沈静化した。批判者の一人である松浦晋也は、M-Vの廃止は旧科学技術庁の官僚が、傍系の「東大ロケット」の末裔であるM-Vを嫌った結果であり、その結果文科省への不信を生んだとする見方を示している。2010年4月、JAXAは次期固体ロケットの名称を「イプシロン (Ε)」とすることを発表した。 なお、M-Vロケットの廃止に伴って内之浦宇宙空間観測所の閉所と種子島宇宙センターへの集約も検討されたが、イプシロンロケットの打ち上げを内之浦で行う方向で検討が進められ、2012年に内之浦での打ち上げが正式決定された。イプシロンロケット1号機は2013年9月14日に内之浦宇宙空間観測所から人工衛星(衛星軌道投入後に「ひさき」と命名)の打ち上げに成功した。 以下に、M-Vロケットと他のロケットとの費用比較を掲げる。 低軌道打ち上げ能力コスト低軌道1t当たりの価格射場作業日数M-Vロケット1.85t 75億円*1 約41億円*1 47日 イプシロンロケット1.2t 25 - 30億円(予定)*1 21 - 25億円(予定)*1 7日(予定) H-IIAロケット202型機体10t 85億円 8.5億円 約20日 *1 ロケットの製造と輸送・打ち上げ費用を含む つまりイプシロンはM-Vに比べ搭載能力で6割、費用で半分以下、所要日数では遥かに短縮出来る。 イプシロンロケットは開発費用に200億円を予定しているが、年間1機の打ち上げを想定した場合、イプシロンロケットはM-Vより年45 - 50億円安くなることになる。これと小型低価格の科学衛星を組み合わせることで、科学衛星1基あたりの経費を半減し、開発間隔を短縮することを狙っている。
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