L42A1狙撃銃
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 06:20 UTC 版)
「リー・エンフィールド」の記事における「L42A1狙撃銃」の解説
L8の試作からヒントを得たイギリス陸軍は、在庫のNo.4 Mk I(T)の多くを7.62mm NATO弾仕様に改修し、新しくL42A1という名前を与え、制式狙撃銃として採用した。L42A1は1980年代中盤にL96A1と交代する形で現役を引退した。 L42A1狙撃銃は、既存のNo4 Mk1(T)狙撃銃とNo4 Mk1*(T)狙撃銃から改修された更新型として1970年に配備された。この改修はエンフィールド王立小火器製造工廠により行われた。およそ1,080丁が改修されている。 第二次大戦中に製造された既存のNo4 Mk1(T)狙撃銃とNo4 Mk1*(T)狙撃銃から改修されたため、引き金の回転軸がトリガーガード(用心鉄)で位置決めされるままだったという点で、引き金の回転軸がレシーバー(機関部)で位置決めされていた、他の第二次大戦後のNo4派生型(No4 Mk 2、Mk 1/2、Mk 1/3)とは異なっている。 いくつかの変化が取り入れられたが、当然のことながら最も顕著な変化は、.303ブリティッシュ弾から新しい7.62x51mm NATO弾への転換であった。古い.303ブリティッシュ弾はリム(縁)付きの薬莢であったのに対し、7.62x51mm NATO弾はリム無しの薬莢であったため、抽筒子(エキストラクター)が変更され、また7.62x51mm NATO弾の給弾のため、より角張った新しい10発箱型弾倉に変更された。弾倉のリップ部分の固い突起は蹴出器(エジェクター)として機能した(303ブリティッシュ弾用の蹴出器はそのまま残っていた)。 銃身は、新弾薬に対応するためだけでなく命中精度を改善する目的からも更新された。第二次大戦終了後に開発された命中精度向上のための知見のうちの一つである、フリーフローティング銃身が装備された。フリーフローティング銃身化するため、No4 Mk1(T)標準型の銃床を短縮化し、前部銃床部分が機関部前方の鉄製バンドの前までで切断された。残りの木製銃床は、後部銃床に付けられたネジ込み式の木製頬当てを含め、原型のNo4 Mk1(T)狙撃銃からほとんどそのまま残された。 選ばれた銃身は、古いNo4 Mk1(T)狙撃銃の銃身が5条左回りのライフリングであったのに対し、4条右回り(1:12インチ1回転)のライフリングを施された27.5インチ長のハンマー鍛造製ヘビーバレルであった。銃身製造のハンマー工程により、銃身の外観に蛇革のような模様が残っている。 No4 Mk1(T)狙撃銃で取り外されていた照準器(照門)は、光学照準器の緊急故障の際のバックアップとして再装備された。光学照準器の取付台座は、No4 Mk1(T)狙撃銃と同様、ライフルの左側に取り付けるネジ込み式光学照準器取付台座のままである。光学照準器は、倍率固定式4倍光学照準器である(No4 Mk1(T)狙撃銃で採用されたNo.32 Mk3を改修、照準調整用の回転目盛が.303ブリティッシュ弾に代わる7.62x51mm NATO弾の弾道特性に適合するよう調整し、L1A1と改名されたもの)。 当時の狙撃銃全てにおいて一般的であるが、二脚は装備されていない。従って伏射の際には、何らかの台(例えば砂バッグ)から、または手で支えた態勢(それによく適しているが)から射撃する必要がある。ボルト操作は円滑であり薬莢の排出は非常に良好である。薬莢は銃の近くに下方に排出され、最終射撃位置から離れる際に薬莢を捜索するのに便利である。 L42A1狙撃銃は、L96A1と交代した1985年まで英国軍で使用された。オマーンのDhofar反乱、北アイルランド紛争、フォークランド紛争において、特殊部隊(SAS)、海兵隊員と落下傘部隊により実戦使用され成功を収めている。なお未確認であるが、1991年の湾岸戦争において特殊部隊(SAS)が、退役したL42A1を再度引っ張り出し、L96A1に使用されるS&B 6x PM光学照準器を装備して使用したとの情報もあるようだ。S&B 6x PM光学照準器を装備したL42A1を使用したSAS部隊は、1,000m先の人間サイズの目標に一貫して命中させることが出来たと伝えられている。 L42A1狙撃銃は、第二次世界大戦からの伝説的な狙撃銃の直系であり、そして、最終的に20世紀の終わりに現代化された狙撃銃と取り替えられる必要が生ずるまで、戦場においてその伝統を継承したと言える。
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