CRMスキル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/12 04:22 UTC 版)
「クルー・リソース・マネジメント」の記事における「CRMスキル」の解説
CRMスキルとは、実運航で具体的にCRMを実践する能力を意味する。CRMが提唱された当初は、CRMスキルは「タスクの配分と責任分担のスキル」、「リーダーシップスキル」などと定義され、抽象度の高いものであった。その後、CRMの考え方や方法論の発達と合わせて、実運航などで実践できるようCRMスキルの表現が具体化されてきた。 各種研究や航空会社によって、CRMスキルの具体化および体系化の取り組みがなされているが、それぞれの間でスキルの分類方法や構成要素、表現は異なっている。相違が現れる理由として、スキル分類の際に重視する点が異なることが挙げられる。 一例としてICAOでは次のスキルをあげている: Communication/interpersonal skills(コミュニケーション/対人スキル) Situation awareness(状況認識) Problem-solving/decision-making/judgement(問題解決/意思決定/判断) Leadership/followership(リーダーシップ/フォロワーシップ) Stress management(ストレスマネジメント) Critique(クリティーク:分析と計画、行動と決定のレビュー) CRMスキル(ノンテクニカル・スキル)は、大きく2つの要素に分類される場合があり、一方は認知スキル、もう一方は対人スキルまたはソーシャルスキルと呼ばれる。認知スキルの要素としては、意思決定、状況認識、ストレスマネジメント、ワークロード(作業負荷)管理などがあげられる。一方でソーシャルスキルは、コミュニケーションそのものやリーダーシップやチームワークに関するスキルである。他分野においてもこれらのスキルは一致していることが多い。さらに、これは複数のクルーが携わる機体・機器の運用に限らず、一人で運用する機体・機器であっても、任務を成功させるために他の機体・機器や支援機関とやりとりする必要のある場合を含む。 CRMの主な目標は、状況認識・自己認識・リーダーシップ・自己主張・意思決定・柔軟性・適応性・出来事の分析・任務の分析・コミュニケーションなどを高めることである。特に、権威者に対し敬意をもって意見することができる風潮・文化を育成することがCRMの目指す所である。そこでは、現在起きていることと本来あるべきこととの不一致が発生していれば、それが間違いが起ころうとしていることの第一の発現であると理解されなければならないが、これは多くの組織、特に伝統的なヒエラルキーをもつ組織においては慎重さを要する事柄でもある。そこで、権威に対する疑問は恐れるべきものでないことを上位者が理解し、下位者は正しい意見の仕方を身につけるよう、適切なコミュニケーション技術を両者に指導しなければならない。 様々な航空事故のボイスレコーダーから、副操縦士や航空機関士が危機的情報を非効果的なかたちで機長に伝え、機長がそれらを理解したときには既に手遅れになっていたというケースが明らかになっている。CRMの専門家トッド・ビショップは、次のような自己主張の5つのステップを提唱している。 より注意を引く:その人に呼びかける。「チーフ」「スミス機長」あるいは「ボブ」のように肩書でも名前でも良いので呼びかけることで注意を引く。 気がかりを言う:状況分析と感情を率直に言う。例えば「この嵐を迂回する燃料があるか心配です」「屋根が崩れ落ちないか不安です」など。 問題点を言う:「あと40分の燃料しか表示されていません」「この建物は軽量鉄骨のトラス屋根で、火が屋根に回っているかもしれません」など。 対策を言う:「別の空港に降りて給油しましょう」「隊員を入れる前に、壁に穴を開けて赤外線カメラで中を調べましょう」など。 同意(あるいは許可)をもらう:「良いでしょうか機長(隊長)?」など。 個人習慣や人間関係、組織文化によって対応の仕方は大きく異なることがあるため、こういったスキルを一概に習得することはできない。
※この「CRMスキル」の解説は、「クルー・リソース・マネジメント」の解説の一部です。
「CRMスキル」を含む「クルー・リソース・マネジメント」の記事については、「クルー・リソース・マネジメント」の概要を参照ください。
- CRMスキルのページへのリンク